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学童期に感染する新型コロナウイルス感染症の特徴(イギリスの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

クリニックは年末年始の休診期間に入っています。

今日は落ち葉拾い的に今年発表された論文をご紹介します。

今日はこちら。
イギリス小児の新型コロナ感染.jpg
Lancet Child Adolesc Health 誌に、
2021年9月3日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の学童期の感染の特徴をまとめた、
イギリスの疫学データの論文です。

新型コロナウイルス感染症は小児においては、
比較的軽症もしくは無症状に終わることが多いと報告されています。

しかし、その一方で、
体調不良が1ヶ月以上というような長期に渡り、
持続するようなケースも報告されています。

ただ、成人の場合と比較して、
そうした症状が持続するようなケースが、
どのくらいの頻度で生じているのかについては、
あまりまとまったデータがありませんでした。

そこで今回の研究では、
イギリスの住民データを活用して、
イギリスにおける学童期(5から17歳)の新型コロナウイルス感染症の事例の、
症状と持続期間を集計しています。
同年代の258790名が登録され、
そのうちの75529名が、
感染を疑わせる症状で新型コロナウイルスの検査を受け、
(検査はRT-PCRもしくは迅速抗原検査)
そのうちの1734名(5から11歳の588名と12から17歳の1146名)が陽性となっています。

最も陽性者で多かった症状は頭痛で、
62.2%で報告されています。
続いて全身倦怠感が55.0%で報告されています。

症状の持続期間は、
検査陽性者の中間値が6日で、
陰性者の中間値は3日と短くなっていました。
また症状の持続期間は年齢が高いほど長くなっていました。

症状が28日を超えて持続していた事例は、
陽性者の4.4%に当たる77名で認められ、
高い年齢層でより多くなっていました。

このように長期持続していた事例の症状は、
全身倦怠感が84.4%、頭痛が77.9%、嗅覚異常が77.9%と多くなっていました。
ただ、こうした長期持続事例においても、
28日目を超えると症状の訴えやその数は減少し、
56日を超えて残存していた事例は1.8%に当たる25例のみでした。

新型コロナウイルスの検査が陰性の感冒症状でも、
28日を超えて症状の持続している事例は認められましたが、
その数は0.9%に当たる15名と少なく、
症状の数自体は多いという傾向が認められました。

このように、
学童期においても新型コロナウイルス感染症の症状が、
長期間持続する事例はあるのですが、
その頻度は成人に比べると少なく、
その多くは2ヶ月以内には消失していました。
新型コロナウイルス感染症以外の感冒症状においても、
こうした持続症状は認められていて、
その頻度は少ない一方、症状の多彩さはむしろ、
通常の感冒において多い傾向が認められました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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