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「あなたの番です 劇場版」(ネタばれ注意) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
あなたの番です.jpg
オリジナルのミステリードラマとして、
好評を博した「あなたの番です」の映画版が、
今ロードショー公開されています。

ミステリーは大好きで、
小学校からクリスティー、カー、クイーン、クロフツと、
創元推理文庫を読みあさっていたので、
結構年期は入っているのです。

ミステリーは小説と映像では、
かなりテクニック的に違いがあるので、
本来は小説の原作物ではなくて、
映像は映像のオリジナルが望ましいのですが、
高度な技巧が必要とされるので、
優れた映像オリジナルのミステリー作品というのは、
本当に少ししか存在していません。

その点「あなたの番です」のドラマは、
かなり頑張っていて、
最初に殺したい人のメモが交換されるのですが、
その内容が常に議論されながら、
最後の最後になって、
完全にクリアになるように出来ています。
映像でなかなかここまでやった作品は、
あまりないように思います。
脇筋のギャグパートで、
内容が引き延ばされている感じがあるのがやや残念ですが、
構成的にも幾つかの謎が連鎖的に登場して、
連鎖的に解決され、
ショッキングな前半のラストに至る、
という構成もかなり考え抜かれています。

今回の映画版はマーベル映画でも定番の、
並行世界的構想で、
交換殺人が起こらなかった場合を想定し、
その2年後にクルーズ船で主人公2人の結婚式が行われるという設定で、
そこでの殺人事件を1本の映画にしています。

以下少しドラマと映画の内容についてのネタバレがあります。

まだ鑑賞予定の方は鑑賞後にお読みください。

よろしいでしょうか?

それでは続けます。

これ、完全に西野七瀬さんのための映画なんですね。
まあ存在するだけで周りの人達を翻弄し、かき乱して、
互いに殺し合いをさせてしまうような特異な女性なんですよね。
ドラマ版の方も、結局は西野さんがテーマのドラマ、
という感じがありますし、
その存在によって歪められ暴走する世界というのが、
言ってみればその世界観の根幹なんですね。
それで映画はその変奏曲として始まるのですが、
彼女の存在をどう葬るのか、というのが一貫したテーマで、
それが曲りなりにも彼女の死によって、
1つの結末を迎えて終わるのです。

その意味ではドラマがA面とすれば映画はB面で、
これでこの世界は完結した、
という言い方は出来るのです。

ただ、映画としては失敗していますよね。

まず並行世界にした意味が、
あまりないですよね。
せっかく世界を変えるのですから、
もっとそのための力学が欲しいし、
変えたことによる展開の意外性が欲しいですよね。
ミステリーとしても、
閉じ込められた船内という典型的な密室劇ですし、
もっと結晶体のような濃縮された世界が欲しかったのですが、
内容的には元のドラマの殺人劇を、
ただ、舞台を船内に移して展開させた、
という点がつまらないと思いました。

犯人もまあ、引き算的に言うとそのくらいしかないのですが、
ドラマ版から推定されるキャラのまま着地するので、
かなりガッカリではありました。

僕はオリジナル脚本のミステリー映画というだけで、
かなり喜んでしまう方なので、
観て損とは思いませんでしたが、
一般の映画ファンにとっては、
おそらく失望以外の感想はなかったかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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