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オミクロン株の遺伝子解析 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
オミクロン株の構造.jpg
これはまだ未発表の論文のサーバーに掲載されていたものですが、
オミクロン株の遺伝子の特徴を、
他の変異株との比較において検証した内容です。

デルタ株の猛威が日本では収束に向かいつつある中、
世界では新しい変異株であるオミクロン株(B.1.1.529)が、
その強い感染力でデルタ株に切り替わっています。

どうやらその重症化率は、
デルタ株よりかなり低そうなのですが、
感染力が高いことは間違いがなく、
その性質は不明の点が多いのが実際です。

それでは、オミクロン株の遺伝子解析から、
何か分かることはあるのでしょうか?

こちらをご覧下さい。
オミクロン株の構造の図1.jpg
これは新型コロナウイルスの主要な変異株のうち、
アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、
そしてオミクロン株の5種の変異株の持つ、
スパイク部の遺伝子変異の部位と種類を表示したものです。

変異の多くには共通性があるのですが、
オミクロン株はこれまでの変異株より多い、
26箇所のアミノ酸の変異を有していて、
そのうちの23カ所は塩基の置換によるもので、
2カ所は欠失によるものですが、
残りの1カ所は、
別の塩基が挿入されたins214EPE変異で、
これについては、
これまでの変異株に見られない、
オミクロン株のみの特徴です。

実はこの挿入による変異は、
元々別個の感冒の原因ウイルスである。
HCoV-229Eというコロナウイルスが、
身体の細胞に同時に感染することで、
行なった可能性があるのです。

こちらをご覧下さい。
オミクロン株の構造の図2.jpg
これはオミクロン株になる前段階のウイルスと、
通常の感冒の原因となるコロナウイルスが、
人間の細胞に同時に感染した状態を仮定したものです。
細胞内で感冒のウイルス遺伝子の一部が、
新型コロナウイルスの遺伝子に挿入され同一化することにより、
オミクロン株が生まれたのではないか、
というメカニズムが提示されています。

本当にこの通りのことが起こったかどうかは推測でしかないのですが、
弱毒性の通常の感冒ウイルス遺伝子の一部が、
一体化することによってオミクロン株が生まれ、
その感染力を増した一方、
性質としては弱毒化して、
通常感冒に近づいているのではないか、
という推測は非常に興味深く、
今後の臨床的な検証を注視したいと思います。

SF的には、
強毒性のウイルス流行時に、
そのウイルスに弱毒性の感冒ウイルス遺伝子を、
意図的に組み込むことにより、
弱毒化して収束される、
というようなアイデアも面白そうですし、
何より遺伝子の変異自体は常に生じているのに、
何故特定の変異株のみが、
増殖してその勢力を拡大し、
感染の主体を占めるに至るのか、
その構造にその秘密があるのかどうか、
というような点など、
現実として考えるとゲンナリですが、
フィクションとして考えれば、
興味は尽きないところです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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