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新型コロナウイルス感染に対する外来抗凝固療法の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには向かう予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
新型コロナウイルス感染に対する抗凝固療法の効果.jpg
JAMA誌に2021年10月11日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症に対する、
外来での抗凝固療法の有効性についての論文です。

新型コロナウイルス感染症の重症事例においては、
動脈系、静脈系双方の血栓症が合併し、
肺炎の重症化などにも関連していると考えられています。

そのため、血栓リスクの高いことが想定されるような、
重症の事例においては、
抗凝固療法の施行が検討されます。

その有効性についてもまだ議論のあるところですが、
より不明の点が多いのは、
軽症から中等症で外来にての経過観察が行なわれる事例において、
経口薬による抗凝固療法を施行することで、
その予後に良い影響があるのだろうか、
ということです。

ウイルス感染に伴う凝固線容系の亢進が、
病状の重症化に結び付いているものだとすれば、
重症化予防に有効という可能性もある一方、
抗凝固療法は出血のリスクを高めますから、
そうした合併症の発症により、
むしろ予後に悪影響を与えるという可能性も否定出来ません。

今回の検証はアメリカの52箇所の医療施設において、
有症状の新型コロナウイルス感染症で、
外来での経過観察の適応となり、
血小板数は10万を超え、
腎機能の指標である推計糸球体濾過量が、
30mL/min/1.73㎡を超えている対象者を、
くじ引きで4群に分けると、
抗凝固療法として、
アスピリン1日81mg、
アピキサバンの低用量(1日5mg)、
アピキサバンの通常用量(1日10mg)、
そして偽薬に振り分けて、
45日間の経過観察を行なっているものです。

当初は7000例の登録が予定されていましたが、
血栓塞栓症の発症が予想より少なく、
明確な差がつかないことが明らかとなったため、
657例を登録した時点で終了となっています。

その結果、血栓症の発症については、
偽薬と比較して実薬群で明確な差がありませんでした。

一方で出血系の合併症の発症については、
偽薬群と比較して、アスピリン群では2.0%、
低用量のアピキサバン群では4.5%、
通常用量のアピキサバン群では6.9%、
増加する傾向を示していました。

このように、比較的軽症の新型コロナウイルス感染症患者の、
外来での経過観察においては、
アスピリンを含めて、
抗凝固療法を施行することは明確な有効性を示さず、
むしろ合併症のリスクのみを高める可能性が高いので、
現状では推奨されないと考えて良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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