SSブログ

人差し指薬指比率(2D:4D)と幸運との関係(BMJクリスマス論文) [ゆるい論文]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2と4指の比率.jpg
British Medical Journal誌に、
2021年12月15日ウェブ掲載された、
肉体的な特徴と幸運との関連を検証した論文です。

これはこの医学誌恒例のクリスマス特集の一環で、
その検証方法は充分科学的なものではあるのですが、
内容的には通常の時期には決して掲載はされないような、
ユーモラスな部分とギャグすれすれの部分を持った内容です。

意外な男女の肉体的な違いとして、
人差し指と薬指の長さというものがあります。

男性は女性より、
短い人差し指と長い薬指を持っている、
と言うのです。

ざっくりで言うと、
女性では人差し指と薬指の長さはほぼ同じなのに対して、
男性では薬指の方が僅かに長いとされています。
これを分かり易く示すための指標が、
人差し指薬指比率(2D:4D)で、
人差し指の長さを薬指の長さで割り算した数値ですが、
これが女性ではほぼ1になり、
男性では1未満になる、
というのがこれまでのデータです。

こんなものが科学なのか、とは素朴に思いますし、
こうした肉体的性差の概念は、
今の世の中では排斥されがちなものですが、
実は2000年代にも結構多くの論文が、
このテーマで研究され発表されていて、
それによると胎児期に体内で分泌された男性ホルモンが、
2D:4Dの低下の原因であるとされています。

概ね2D:4Dが低いほど、
体力がある、幸運な人生を送るなど、
ポジティブな予後と関連がある、
という論文が過去には多く発表されていて、
これは男性優位社会の価値観を、
反映しているもののようにも思われます。
最近では逆にゲーム中毒では2D:4Dが低いなど、
男性ホルモンの高値がむしろ予後の悪さに結び付くという結果も多く、
社会の価値観の変化を感じさせます。

今回のクリスマス論文では、
過去に報告のある、
2D:4Dと人生における「幸運」との関連を検証する目的で、
幸運の指標として、
無作為に5枚のトランプを引いて、
よりポーカーで強い手を引き当てる確率と、
2D:4Dとの関係を検証しています。

その結果、
2D:4Dがより低いほど、
つまり胎児期の男性ホルモン曝露量が多いほど、
トランプで強い手札を引く確率が有意に高いことが、
データとして示されました。

これは「男性はより幸運だ」ということなのでしょうか?

勿論そうではありません。

論文の結論も、
単純に相関関係のみに着目して、
比較するのに適さないものを比較すると、
非現実的な結論に結び付く典型的な事例である、
というような趣旨の内容となっています。

少し前まで性別の優位性について、
至って真面目にこのような議論が、
科学的にもされていたのですが、
今後はこうした研究は、
クリスマスの面白論文程度の意味しか、
持たないものになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(3)  コメント(0)