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新型コロナウイルス感染症に対する吸入ステロイド(シクレソニド)の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
シクレソニド吸入の有効性.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年11月22日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症に対する、
吸入ステロイド剤シクレソニドの有効性についての論文です。

この話題についてはこれまでにも何度か記事にしています。

全身的なステロイド投与が、
重症化した新型コロナウイルス感染症において、
その予後改善に有効であることは、
多くの精度の高い臨床データで実証された事実です。

そのことから考えると、
より軽症や初期の状態において、
吸入のステロイド剤を使用して、
気道の炎症を抑えることにも、
一定の有効性がある可能性が示唆されます。

シクレソニド(商品名オルベスコなど)は、
吸入ステロイド剤として使用されている薬の1つですが、
一部の研究データにおいて、
新型コロナウイルスの抗ウイルス作用を持つ、
という報告もあり、
新型コロナウイルス感染症における、
軽症例での使用の選択肢として、
注目をされているのです。

そもそもシクレソニドの使用は、
日本において始まったのですが、
当初の期待から一転、
批判的な文脈が目立つようになり、
いつの間にか立ち消えのような感じになってしまいました。

今回の研究はアメリカの10カ所の専門施設で行なわれた、
第三相臨床試験で、
入院の適応ではない有症状の新型コロナウイルス感染症患者、
トータル413名を、
患者にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はシクレソニドを1日640μg吸入し、
もう一方は偽薬を使用して、
30日の経過観察を行なっています。

その結果、症状改善までの期間に、
実薬群と偽薬群とで有意な差は認められませんでした。
登録後30日の時点での症状にも、
有意な差は認められませんでした。
その一方で患者が入院したり救急受診するリスクは、
実薬吸入群で82%(95%CI:0.04から0.85)有意に低下していました。

このように、
シクレソニドの吸入に、
明確な症状の改善効果は認められませんでしたが、
一定の重症化予防効果はあるという可能性はあり、
今後対象者を絞るなど、
より詳細な検証が必要と考えられました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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