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新型コロナワクチン接種後感染事例の特徴と対策 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ワクチン接種後感染事例の検証.jpg
Lancet Infectious Diseases誌に、
2021年9月1日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスワクチン接種後の、
感染事例の特徴を解析した論文です。

新型コロナウイルスワクチンのうち、
ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社による、
2種類のmRNAワクチンの短期の有効性が、
有症状感染予防効果で95%以上と、
非常に高いことは間違いがありません。

ただ、それでも少ないながら、
ワクチン接種者の感染事例も存在しています。

問題はワクチン接種後の感染事例に、
一定の特徴があるのではないか、ということです。

そうした感染事例に特徴があるのであれば、
そこに重点的な対策を講じる、
という方法が有効と考えられるからです。

今回の検証はイギリスにおいて、
ワクチン接種後の感染事例の特徴を解析しているものです。

使用されているワクチンは、
アストラゼネカ社とファイザー・ビオンテック社製ワクチンは主体で、
少数ですがモデルナ社ワクチンの接種者が含まれています。

その結果、
60歳以上の年齢層においてはフレイル(体力低下)が、
ワクチン1回接種後の感染リスクを、
1.93倍(95%CI:1.50から2.48)有意に増加させていました。
また、貧困地域の居住者も、
ワクチン1回接種後の感染リスクを、
1.11倍(95%CI:1.01から1.23)有意に増加させていました。

BMI30未満は、BMI30以上の肥満と比較して、
ワクチン1回接種後の感染リスクが、
16%(95%CI:0.75から0.94)有意に低下していました。

ワクチン接種後の感染事例では、
感染症状は軽く、無症状も多い傾向が認められました。

このように今回の検証では、
体力の低下した高齢者、肥満、貧困地域の居住者で、
ワクチン接種後の感染リスクが高いという結果が得られ、
そうした状況の住民には、
優先して追加接種を検討すると共に、
ワクチン接種後であっても、
感染対策により心を配る必要があると考えられました。

これはただ文化や環境の違いもありそうですから、
こうした傾向はあるにしても、
日本でも同様のことが言えるかどうかは分かりません。

日本においても同様の解析は必要であると思いますし、
「ワクチン接種後の感染で死亡!」というような、
扇情的な取り上げ方ではなく、
もっと科学的な検証が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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甲状腺癌にはどの程度の性差があるのか?(2021年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
甲状腺癌の性差.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年8月30日ウェブ掲載された、
甲状腺癌の性差についての論文です。

甲状腺癌は男性より女性に多い癌として知られています。

ただ、その罹患率については報告によりかなりの差があり、
その性差の原因もあまり明確ではありません。

今回の研究はアメリカの疫学データの詳細な解析と、
解剖所見で偶発的に発見される甲状腺癌の頻度のメタ解析を併せて、
この問題の多角的な検証を行なっているものです。

その結果、
確かに甲状腺癌の診断が急増した2013年には、
女性の罹患率が人口10万人当たり22.4件であったのに対して、
男性の罹患率は7.8件で、
これは明確な性差が存在しています。

ただ、2013年から2017年の間において、
明確な性差があるのは大きさが2センチ以下の乳頭癌のみで、
4.39対1で女性に多くなっていました。

その一方で死亡リスクの高い甲状腺癌には明確な性差がなく、
甲状腺癌の死亡率も、
1.02対1と殆ど性差なく1992年から2017年までほぼ一定していました。

更には解剖所見で発見された、
臨床的には診断されなかった甲状腺乳頭癌の罹患率には、
明確な性差が認められませんでした。

このように、
甲状腺癌が女性で多く発見され診断されるのは、
女性に多く発症するためではなく、
小さい甲状腺癌を超音波検査で発見する機会が、
男性より女性で多いためと想定されます。

バセドウ病や橋本病などの甲状腺の病気は、
こちらは間違いなく女性に多いので、
甲状腺の検査をする機会も多く、
それが甲状腺癌の性差に、
繋がっているのではないでしょうか?

性差のある病気は多くありますが、
その中には性ホルモンのバランスなど、
明確な原因があって生じるものもある一方、
実際には罹患率には性差はないのに、
他の要因で一見性差があるように、
見えているものもあるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「フリー・ガイ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
終日レセプト作業の予定です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
フリー・ガイ.jpg
「ナイトミュージアム」のショーン・レビ監督の新作が、
今ロードショー公開されています。

ゲームのモブキャラ(背景キャラ)が主人公で、
予告編ではそのゲームのプレイヤーも出て来るので、
これ「シベリア少女鉄道」のお芝居みたいな話なのかしら、
と思ったのですが、
実際にはゲームのアルゴリズムに過ぎないキャラクターが、
自我を持ってゲームの世界を改革する、
というお話でした。

これはアイデアが斬新で相当面白くて、
特に前半は非常に感心しました。

物語が多層的で非常に緻密に練り上げられていますし、
現代の世界の捉え方としてもセンス抜群です。

細田守監督の「竜とそばかすの姫」も、
細田監督としては好きな映画でしたが、
これを観てしまうと、
100倍くらい見事かつ深く、
現実と虚構の世界のバランス、
という同種のテーマを追求しているので、
お話しにならないな、と思ってしまいました。

ただ、これはティーンエイジ映画なんですよね。
ティーンエイジャーくらいの観客を想定した映画で、
ラストになると、
単純なボーイミーツガール映画に、
綺麗に着地してしまうのです。
現実世界の恋愛が結局は優位に機能していて、
「愛が世界を救う」という感じになってしまいます。
演出もそうした部分はかなりしつこくてクドいんですよね。
途中でそのことが分かるので、
それからは少し醒めてしまって、
最後も「なるほどね」とは思うのですが、
スレた大人としては、
ちょっと脱力はしてしまいました。

ただ、こうした映画だからこそ興行的には成功するし、
世界中の観客の心には届くのだと思うので、
これはもう好き嫌いとセンスの問題なのだと思います。

発想はともかく凄いんですよ。

今の映画の99%のテーマはね、
「世界を変えよう!」ということでしょ。

ちょっと乱暴だけれど、
まあそうした言い方が出来ますよね。

この映画ではその変えるべき世界として、
ゲームの世界を置いているんですね。

そのゲームではプレイヤーが、
現実では出来ないような、
ヒーローになって悪党をやっつけたり、
銀行強盗をしたり、
羽目を外して大暴れをしたりするのですね。

そこでやっつけられるのが、
ただのアルゴリスムに過ぎないモブキャラなのですが、
そのモブキャラがAI化して、
その世界の理不尽な階層性、
すなわちゲームのキャラがプレイヤーの下層に位置していて、
プレイヤーのストレスのはけ口になるだけの存在であることに対して、
反逆するようになるのです。

今の世の中では、
物語やゲームの世界にも倫理観や平等意識が要求されるでしょ。
その風潮を上手く利用しているんですね。

それだけでもとてもユニークな発想ですが、
自我を持ったモブキャラの男性が、
プレイヤーの女性に恋をして、
現実世界ではその女性に片思いのプログラマーの男性がいて、
という格好で、
恋愛の引力で現実世界とゲームの世界を結び付け、
最終的には反転させるという仕掛けも、
とてもクレヴァ―だと思います。

しかもそのゲーム自体が、
悪徳社長によって盗作されたもので、
それを取り戻そうとする人間達の努力が、
ゲームの中のアルゴリズムの社会変革の活動と、
見事に一致するという辺りも、
実に上手く考えたな、という感じがします。

それをまた、多くの娯楽映画のパターンを、
組み合わせながら構成しているんですね。
オープニングは同じ1日を繰り返している主人公が、
その生活に疑問を持つという展開で、
これは異世界物の常道ですよね。
それから途中で一旦初期化された主人公が、
ヒロインのキスで復活するというのも、
ベタですがおとぎ話の定番の趣向を入れているんですね。
相当に頭を絞って1つの結晶体のように物語を紡いでいます。

CGもまずまずですが、
こういう複雑なものになると、
どうしても細部は粗くなりますね。
ゲーム画面とゲームの世界では、
その質感は変えているのですが、
変えきれていないという感じもあります。

そんな訳で不満もあるのですが、
ティーンエイジ映画と割り切れば、
そのクオリティは非常に高く、
アイデアとその展開も素晴らしいので、
今を代表する映画の1本として、
是非にお勧めしたいと思います。

予想を超えて面白いですよ。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「孤狼の血 LEVEL2」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
虎狼の血2.jpg
白石和彌監督が、
「仁義なき戦い」をリニューアルしたようなヤクザ映画、
「虎狼の血」の続編が、
今ロードショー公開されています。

これは前作は原作もあって、
ほぼほぼ「仁義なき戦い」をベースにしつつ、
「アウトレイジ」なども意識した内容になっていました。

今回のパート2は前作の続編でお話しは続いていますが、
オリジナルの脚本で、
特に後半はかなりリアルさからは離れた、
遊びの要素も多い作品となっています。

タランティーノみたいな感じもありますし、
石井輝男のおバカアクション映画みたいな感じもあります。

要するにかなりおバカ映画になっているので、
それを受け入れるかどうかで、
評価は分かれるという気がします。

だって、主人公が逮捕されて、
手錠を掛けられたまま警察署の窓を突き破って脱出、
パトカーを奪って逃走するんですよ。
滅茶苦茶でしょ。

白石和彌監督は、
原作物の方が出来が良くて、
オリジナルは駄目なことが多いんですよね。

今回はそれでも原作ありのパート2なので、
羽目を外したところもありますが、
トータルには何とか踏ん張った、
という感じでした。
徹底して映像で語るというスタイルで、
細かい辻褄はあまり気にしていないのですね。

その辺も評価は分かれるところだと思います。
キャストは鈴木亮平さんと村上虹郎さんが抜群で、
この2人を見るだけでも元は取れる、
という感じの映画になっています。

そんな訳で前作の好きな方は、
ちょっと脱力する感じになるかも知れませんが、
現代的にリニューアルされた、
おバカヤクザ映画として、
これはもう頭を空にして楽しむ種類の娯楽映画だと思います。

お好きな方は是非。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症情報(2021年9月3日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

今日はいつものクリニック周辺の感染症情報です。

先月(8月)は141件のRT-PCR検査を行ない、
そのうちの58件が陽性でした。
陽性率(41.1%)も検体数もこれまでで最も多くなりました。

前回の感染症情報で、
全てデルタ株という説明をしましたが、
その後8月26日に1件のみ、
アルファ株が検出されました。
そのため58件中57件がデルタ株、
ということになります。

保育園の感染が増えているのも今の特徴で、
多くは家族内感染からの持ち込みです。

ある事例では父親がまず感染して、
それから母親と2歳の子供が検査で陽性となったのですが、
検査結果が伝えられて以降も、
母親は保育園には言わずに子供を通わせ続け、
そこから2歳児のクラスに感染が広がって大騒ぎとなりました。

こんな有様ですから感染は簡単には収束しません。

8月中旬まで、
発生届は伏字でファックスをして、
それから保健所に電話をして、
伏字の部分などを補足説明していたのですが、
ある時に保健所の方から、
「対応し切れないので、伏字なしでファックスを送って、
もう電話はしなくて結構です」
と言われました。

きちんと患者さんのニュアンスを説明するのは、
主治医としての義務であると感じていたので、
釈然とはしなかったのですが、
再三そう言われたので、
それ以降はファックスのみを流すようにしました。

それが8月23日に届け出をした患者さんが、
8月30日になっても保健所から連絡がない、
という連絡がクリニックに入り、
驚いて保健所に確認したのですが、
「そんな報告は届いていないので再度送って下さい」
とまるでこちらが悪いような応対です。

ただ、僕とスタッフでダブルチェックしていて、
ファックス送信の確認もしたのですが、
間違いなく23日にその患者さんのファックスは、
保健所には送られていました。

しかし、それを言っても、
責任のなすり合いになるだけなので、
グッとこらえました。

それ以降は、
まず患者さんに説明する時に、
「保健所から2日以内に連絡がない場合は、
手違いがあるといけないので、
必ずクリニックに連絡をして下さい」
という文言を入れるようにしました。
また、ファックスは伏字なしで送りますが、
その後に保健所にも電話はして、
「大変お忙しいところ恐縮ですが、
○○さんのファックスが届いているかどうかだけ、
確認をして頂けないでしょうか?」
と丁重に確認はするようにしています。

何かあると結局は、
全て医療機関のせいにされてしまうので、
嫌な話ですが、
自分の身は自分で守るしか仕方がありません。

最近は症状があっても、すぐには医療機関を受診せず、
1週間以上してから受診をされる方が多くて、
その点も頭を悩ませることが多いのです。

10日前からだるさと微熱があって、
5日前からは味覚障害があって、
3日前から咳が出ている、
というような方が陽性になると、
何処を発病とするかでとても悩みます。

10日前というような話になると、
もう体調が良ければ療養期間終了、
というようなことになってしまうのですが、
その判断が正しいのかどうかは、
極めて疑問です。

つい最近の事例では、
本人の申告では10日前からの発症で、
症状は軽いもののだるさが続いていて、
ホテル療養となり療養期間は終了したのですが、
その後の受診時にはレントゲンで軽度でしたが肺炎像があり、
発熱もあって、
とても療養期間が終わっているとは言えない状態でした。

結局本人の申告で発病を決めると、
現状はこうしたことが起こってしまうのだと思います。
この辺についても、
もう少し柔軟で実用的な基準が欲しいと思います。

9月に入り、
クリニック周辺でも検査の陽性率は、
明らかに低下はしています。

ただ、感染が収束するような行動を、
多くの方が取っているとはとても思えない状況なので、
素直に喜ぶような状況とは思えません。

何処までこうした状況が続くのか分かりませんが、
やれることを可能な範囲で、
継続はし続けたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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高齢者へのコロナバックワクチンの有効性(ブラジルの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナバックワクチンの有効性.jpg
British Medical JOurnal誌に、
2021年8月20日ウェブ掲載された、
中国製の新型コロナウイルス不活化ワクチンの、
ブラジルでの臨床データについての論文です。

新型コロナウイルスワクチンとして、
最もその有効性が確立されているのは、
ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社による、
mRNAワクチンであることは間違いがありません。
次にデータが豊富であるのは、
アストラゼネカ社のアデノウイルスベクターワクチンで、
それ以外に途上国を中心として、
ワクチン外交的な戦略もあって、
広く使用されているのが中国製の不活化ワクチンです。

中国の不活化ワクチンは幾つかの種類がありますが、
代表的なものの1つが、
シノバック・バイオテックス社による、
コロナバックと命名されたワクチンです。

このワクチンの第3相臨床試験は、
ブラジル、チリ、インドネシア、トルコで行なわれていますが、
その結果はまだ部分的にしか公表されていません。
その結果も有症状感染への有効率が、
51から84%とかなりのばらつきがあります。

今回のデータはブラジルにおいて、
ガンマ株が主体の流行時期の高齢者への有効性を解析したものです。
ガンマ株というのはブラジルで流行が報告されているもので、
矢張り従来株と比較して感染力は強いと想定されています。

ブラジルにおいて2021年1月17日から4月29日の間に、
RT-PCR検査を施行した70歳以上の43774名を解析しています。
そのうち26433名が有症状の新型コロナウイルス感染症と診断され、
それをコロナバックワクチンの接種歴と比較して、
ワクチンの有効性を検証しています。

その結果、
70歳以上の年齢層における、
コロナバックワクチンの、
有症状新型コロナウイルス感染症に対する有効率は、
2回接種後0から13日以内では24.7%(95%CI:14.7から33.4)、
14日以降では46.4%(95%CI:38.7から53.8)と算出されました。
2回接種後14日以降の入院予防効果は、
55.5%(95%CI:46.5から62.9)、
死亡の予防効果は61.2%(95%CI:48.9から70.5)と算出されました。
この予防効果は70から74歳と比較して、
75歳以上では低くなっていました。

このようにコロナバックワクチンの有効性は、
ファイザー・ビオンテック社やモデルナ社のmRNAワクチンより、
かなり落ちる可能性が高いのですが、
直接比較的な検証は行なわれていない上に、
対象者や流行状況などの条件もかなり異なっているので、
厳密な検証は困難であるのが実際です。

今後のデータの蓄積を待ちたいところですが、
諸事情からそれもあまり期待は出来ないかな、
というようにも思います。

ワクチンは医療の範囲を離れ、
政治の道具として使用されているような実態もあり、
そのデータの読み方は、
その出所や査読の有無なども含めて、
慎重に行う必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症デルタ株の特徴(イギリスの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後はレセプト作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
デルタ株の重症化率.jpg
Lancet Infectious Diseases誌に、
2021年8月27日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスデルタ株の、
アルファ株と比較した重症化率を検証した、
イギリスの疫学データの論文です。

アルファ株は当初英国型と呼ばれ、
英国発で猛威を振るったのですが、
2020年末にインドで初めて報告されたデルタ株は、
その感染力の強さからたちまち世界的に猛威を振るい、
日本においてもかつてない規模の感染拡大に至っていることは、
皆さんもよくご存じの通りです。

クリニックでも毎日RT-PCR検査を行なっていますが、
8月に入ってからの陽性事例は、
その全例がデルタ株(もしくはその類縁)となっています。

このデルタ株が感染力が強く重症化率も高いことは、
その流行の当初から指摘されています。
ただ、その全例でゲノム解析により、
その遺伝子型の判別が行われているという訳ではなく、
日本においてもゲノム解析が広く行われるようになったのは最近で、
それまでは一部の点遺伝子変異のみを検出して、
評価がされていたのが実際でした。

今回の疫学データはイギリスにおいて、
全ゲノム解析によりデルタ株(B.1.617.2)を同定し、
アルファ株(B.1.1.7)と比較しているもので、
そうした方法を取った研究としては、
これまでで最も大規模なものです。

2021年3月29日から5月23日の間に、
新型コロナウイルス感染症と診断された43338名が登録され、
その内訳は8682名がデルタ株で、
34656名がアルファ株です。

陽性となった検査の時点から14日以内に、
デルタ株の患者のうち2.3%に当たる196名が入院し、
アルファ株の患者のうち2.2%に当たる764名が入院しています。
これを年齢、性別などの因子を考慮して補正すると、
デルタ株の患者はアルファ株に比較して、
入院のリスクが2.26倍(95%CI:1.32から3.89)有意に増加していました。

また、検査の時点から14日以内に、
入院もしくは救急治療を要するリスクも、
デルタ株の患者はアルファ株に対して、
1.45倍(95%CI:1.08から1.95)有意に増加していました。

この結果はやや微妙なもので、
確かにアルファ株よりデルタ株の方が、
重症化リスクは高くなっていますが、
実数としてその比率が、
それほど高いものとは言えません。

年齢分布も確かにデルタ株が低い傾向はあるのですが、
今回のイギリスのデータでは、
アルファ株も高齢者の感染は少ないという傾向は同じで、
おそらくワクチン接種が高齢者では進行しているためと、
推測されますが、
それほどの違いは見られていません。

デルタ株の流行拡大の原因とその特徴については、
まだまだ不明の点が多いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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