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高齢者へのコロナバックワクチンの有効性(ブラジルの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナバックワクチンの有効性.jpg
British Medical JOurnal誌に、
2021年8月20日ウェブ掲載された、
中国製の新型コロナウイルス不活化ワクチンの、
ブラジルでの臨床データについての論文です。

新型コロナウイルスワクチンとして、
最もその有効性が確立されているのは、
ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社による、
mRNAワクチンであることは間違いがありません。
次にデータが豊富であるのは、
アストラゼネカ社のアデノウイルスベクターワクチンで、
それ以外に途上国を中心として、
ワクチン外交的な戦略もあって、
広く使用されているのが中国製の不活化ワクチンです。

中国の不活化ワクチンは幾つかの種類がありますが、
代表的なものの1つが、
シノバック・バイオテックス社による、
コロナバックと命名されたワクチンです。

このワクチンの第3相臨床試験は、
ブラジル、チリ、インドネシア、トルコで行なわれていますが、
その結果はまだ部分的にしか公表されていません。
その結果も有症状感染への有効率が、
51から84%とかなりのばらつきがあります。

今回のデータはブラジルにおいて、
ガンマ株が主体の流行時期の高齢者への有効性を解析したものです。
ガンマ株というのはブラジルで流行が報告されているもので、
矢張り従来株と比較して感染力は強いと想定されています。

ブラジルにおいて2021年1月17日から4月29日の間に、
RT-PCR検査を施行した70歳以上の43774名を解析しています。
そのうち26433名が有症状の新型コロナウイルス感染症と診断され、
それをコロナバックワクチンの接種歴と比較して、
ワクチンの有効性を検証しています。

その結果、
70歳以上の年齢層における、
コロナバックワクチンの、
有症状新型コロナウイルス感染症に対する有効率は、
2回接種後0から13日以内では24.7%(95%CI:14.7から33.4)、
14日以降では46.4%(95%CI:38.7から53.8)と算出されました。
2回接種後14日以降の入院予防効果は、
55.5%(95%CI:46.5から62.9)、
死亡の予防効果は61.2%(95%CI:48.9から70.5)と算出されました。
この予防効果は70から74歳と比較して、
75歳以上では低くなっていました。

このようにコロナバックワクチンの有効性は、
ファイザー・ビオンテック社やモデルナ社のmRNAワクチンより、
かなり落ちる可能性が高いのですが、
直接比較的な検証は行なわれていない上に、
対象者や流行状況などの条件もかなり異なっているので、
厳密な検証は困難であるのが実際です。

今後のデータの蓄積を待ちたいところですが、
諸事情からそれもあまり期待は出来ないかな、
というようにも思います。

ワクチンは医療の範囲を離れ、
政治の道具として使用されているような実態もあり、
そのデータの読み方は、
その出所や査読の有無なども含めて、
慎重に行う必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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