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「フリー・ガイ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
終日レセプト作業の予定です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
フリー・ガイ.jpg
「ナイトミュージアム」のショーン・レビ監督の新作が、
今ロードショー公開されています。

ゲームのモブキャラ(背景キャラ)が主人公で、
予告編ではそのゲームのプレイヤーも出て来るので、
これ「シベリア少女鉄道」のお芝居みたいな話なのかしら、
と思ったのですが、
実際にはゲームのアルゴリズムに過ぎないキャラクターが、
自我を持ってゲームの世界を改革する、
というお話でした。

これはアイデアが斬新で相当面白くて、
特に前半は非常に感心しました。

物語が多層的で非常に緻密に練り上げられていますし、
現代の世界の捉え方としてもセンス抜群です。

細田守監督の「竜とそばかすの姫」も、
細田監督としては好きな映画でしたが、
これを観てしまうと、
100倍くらい見事かつ深く、
現実と虚構の世界のバランス、
という同種のテーマを追求しているので、
お話しにならないな、と思ってしまいました。

ただ、これはティーンエイジ映画なんですよね。
ティーンエイジャーくらいの観客を想定した映画で、
ラストになると、
単純なボーイミーツガール映画に、
綺麗に着地してしまうのです。
現実世界の恋愛が結局は優位に機能していて、
「愛が世界を救う」という感じになってしまいます。
演出もそうした部分はかなりしつこくてクドいんですよね。
途中でそのことが分かるので、
それからは少し醒めてしまって、
最後も「なるほどね」とは思うのですが、
スレた大人としては、
ちょっと脱力はしてしまいました。

ただ、こうした映画だからこそ興行的には成功するし、
世界中の観客の心には届くのだと思うので、
これはもう好き嫌いとセンスの問題なのだと思います。

発想はともかく凄いんですよ。

今の映画の99%のテーマはね、
「世界を変えよう!」ということでしょ。

ちょっと乱暴だけれど、
まあそうした言い方が出来ますよね。

この映画ではその変えるべき世界として、
ゲームの世界を置いているんですね。

そのゲームではプレイヤーが、
現実では出来ないような、
ヒーローになって悪党をやっつけたり、
銀行強盗をしたり、
羽目を外して大暴れをしたりするのですね。

そこでやっつけられるのが、
ただのアルゴリスムに過ぎないモブキャラなのですが、
そのモブキャラがAI化して、
その世界の理不尽な階層性、
すなわちゲームのキャラがプレイヤーの下層に位置していて、
プレイヤーのストレスのはけ口になるだけの存在であることに対して、
反逆するようになるのです。

今の世の中では、
物語やゲームの世界にも倫理観や平等意識が要求されるでしょ。
その風潮を上手く利用しているんですね。

それだけでもとてもユニークな発想ですが、
自我を持ったモブキャラの男性が、
プレイヤーの女性に恋をして、
現実世界ではその女性に片思いのプログラマーの男性がいて、
という格好で、
恋愛の引力で現実世界とゲームの世界を結び付け、
最終的には反転させるという仕掛けも、
とてもクレヴァ―だと思います。

しかもそのゲーム自体が、
悪徳社長によって盗作されたもので、
それを取り戻そうとする人間達の努力が、
ゲームの中のアルゴリズムの社会変革の活動と、
見事に一致するという辺りも、
実に上手く考えたな、という感じがします。

それをまた、多くの娯楽映画のパターンを、
組み合わせながら構成しているんですね。
オープニングは同じ1日を繰り返している主人公が、
その生活に疑問を持つという展開で、
これは異世界物の常道ですよね。
それから途中で一旦初期化された主人公が、
ヒロインのキスで復活するというのも、
ベタですがおとぎ話の定番の趣向を入れているんですね。
相当に頭を絞って1つの結晶体のように物語を紡いでいます。

CGもまずまずですが、
こういう複雑なものになると、
どうしても細部は粗くなりますね。
ゲーム画面とゲームの世界では、
その質感は変えているのですが、
変えきれていないという感じもあります。

そんな訳で不満もあるのですが、
ティーンエイジ映画と割り切れば、
そのクオリティは非常に高く、
アイデアとその展開も素晴らしいので、
今を代表する映画の1本として、
是非にお勧めしたいと思います。

予想を超えて面白いですよ。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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