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抗菌剤の適正使用のための炎症反応と超音波検査の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
プロカルシトニンとエコーによる抗菌剤減量.png
British Medical Journal誌に、
2021年9月21日ウェブ掲載された、
抗菌剤の適正使用のための検査についての論文です。

抗菌剤の濫用が問題となり、
その適正使用が世界的に求められています。

不必要な抗菌剤は効果がないばかりか、
副作用や有害事象のみをもたらす点で有害であり、
抗菌剤の耐性菌を増やす結果にもなるからです。

抗菌剤の使用機会として多い病態の1つが、
咳や呼吸困難、発熱などの、
下気道感染症状です。

こうした症状は気管支炎や肺炎が疑われ、
抗菌剤の処方が行われることが多いのですが、
上記文献の記載によると、
そうした患者のうち抗菌剤の必要な肺炎患者は、
5から12%に過ぎないという報告もあるようです。

問題は症状と簡単な検査で肺炎患者を選択し、
そうした患者のみに必要な抗菌薬を使用するには、
どのようにすれば良いのか、
という点にあります。

ここで1つの考え方は、
一般のクリニックの外来においても、
簡単に使用可能な検査を行ない、
そこでふるいに掛けることによって、
適正な抗菌剤の使用に結び付けよう、
というものです。

今回の検証においては、
その簡便な検査として、
プロカルシトニンという血液の炎症反応と、
超音波検査が活用されています。

プロカルシトニンは敗血症など重症感染症で陽性になることが多い、
血液の炎症反応の一種です。
超音波検査は以前は肺炎など肺疾患の診断には、
不向きであると考えられていましたが、
最近では熟練した医師や技師が施行すれば、
レントゲン検査に匹敵する診断能があると報告されています。

スイスの60カ所のプライマリケアの医療機関において、
急性の咳症状の患者さん、
トータル469名をくじ引きで3つの群に分けると、
最初の群はプロカルシトニンの迅速検査と超音波検査を併用、
次の群はプロカルシトニンの検査のみを施行、
最後の群は通常の診察により医師の判断で抗菌剤を使用して、
その後の経過と抗菌剤の適正使用の有無を比較検証しています。

その結果、
登録後28日の時点で抗菌剤が処方されているリスクは、
プロカルシトニンのみ使用群で40%に対して、
通常治療群では70%で、
統計的にはプロカルシトニンの使用により、
抗菌剤の処方は26%(95%CI:-0.41から-0.10)
有意に抑制されていました。
一方で14日後までにADLが制限された日数は、
プロカルシトニン使用群で3日に対して、
通常治療群では4日で、
その差は統計的に有意ではありませんでした。
そして、プロカルシトニンと超音波を併用しても、
プロカルトニン単独と比較して、
有意な抗菌剤の処方には結び付いていませんでした。

このようにプロカルシトニンを臨床に使用することにより、
抗菌剤の処方を4分の1程度減らす効果が確認されました。
その全ての処方が不適切なもの、
というように断定は出来ないと思いますが、
少なくとも症状経過には大きな影響は与えていないと推測されます。
超音波検査をそこに併用しても、
明確な上乗せ効果は確認されませんでした。

今後こうした検証が多角的に行なわれることにより、
抗菌剤の適正使用に結び付くことを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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