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甲状腺癌にはどの程度の性差があるのか?(2021年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
甲状腺癌の性差.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年8月30日ウェブ掲載された、
甲状腺癌の性差についての論文です。

甲状腺癌は男性より女性に多い癌として知られています。

ただ、その罹患率については報告によりかなりの差があり、
その性差の原因もあまり明確ではありません。

今回の研究はアメリカの疫学データの詳細な解析と、
解剖所見で偶発的に発見される甲状腺癌の頻度のメタ解析を併せて、
この問題の多角的な検証を行なっているものです。

その結果、
確かに甲状腺癌の診断が急増した2013年には、
女性の罹患率が人口10万人当たり22.4件であったのに対して、
男性の罹患率は7.8件で、
これは明確な性差が存在しています。

ただ、2013年から2017年の間において、
明確な性差があるのは大きさが2センチ以下の乳頭癌のみで、
4.39対1で女性に多くなっていました。

その一方で死亡リスクの高い甲状腺癌には明確な性差がなく、
甲状腺癌の死亡率も、
1.02対1と殆ど性差なく1992年から2017年までほぼ一定していました。

更には解剖所見で発見された、
臨床的には診断されなかった甲状腺乳頭癌の罹患率には、
明確な性差が認められませんでした。

このように、
甲状腺癌が女性で多く発見され診断されるのは、
女性に多く発症するためではなく、
小さい甲状腺癌を超音波検査で発見する機会が、
男性より女性で多いためと想定されます。

バセドウ病や橋本病などの甲状腺の病気は、
こちらは間違いなく女性に多いので、
甲状腺の検査をする機会も多く、
それが甲状腺癌の性差に、
繋がっているのではないでしょうか?

性差のある病気は多くありますが、
その中には性ホルモンのバランスなど、
明確な原因があって生じるものもある一方、
実際には罹患率には性差はないのに、
他の要因で一見性差があるように、
見えているものもあるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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