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新型コロナウイルス感染症デルタ株の特徴(イギリスの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後はレセプト作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
デルタ株の重症化率.jpg
Lancet Infectious Diseases誌に、
2021年8月27日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスデルタ株の、
アルファ株と比較した重症化率を検証した、
イギリスの疫学データの論文です。

アルファ株は当初英国型と呼ばれ、
英国発で猛威を振るったのですが、
2020年末にインドで初めて報告されたデルタ株は、
その感染力の強さからたちまち世界的に猛威を振るい、
日本においてもかつてない規模の感染拡大に至っていることは、
皆さんもよくご存じの通りです。

クリニックでも毎日RT-PCR検査を行なっていますが、
8月に入ってからの陽性事例は、
その全例がデルタ株(もしくはその類縁)となっています。

このデルタ株が感染力が強く重症化率も高いことは、
その流行の当初から指摘されています。
ただ、その全例でゲノム解析により、
その遺伝子型の判別が行われているという訳ではなく、
日本においてもゲノム解析が広く行われるようになったのは最近で、
それまでは一部の点遺伝子変異のみを検出して、
評価がされていたのが実際でした。

今回の疫学データはイギリスにおいて、
全ゲノム解析によりデルタ株(B.1.617.2)を同定し、
アルファ株(B.1.1.7)と比較しているもので、
そうした方法を取った研究としては、
これまでで最も大規模なものです。

2021年3月29日から5月23日の間に、
新型コロナウイルス感染症と診断された43338名が登録され、
その内訳は8682名がデルタ株で、
34656名がアルファ株です。

陽性となった検査の時点から14日以内に、
デルタ株の患者のうち2.3%に当たる196名が入院し、
アルファ株の患者のうち2.2%に当たる764名が入院しています。
これを年齢、性別などの因子を考慮して補正すると、
デルタ株の患者はアルファ株に比較して、
入院のリスクが2.26倍(95%CI:1.32から3.89)有意に増加していました。

また、検査の時点から14日以内に、
入院もしくは救急治療を要するリスクも、
デルタ株の患者はアルファ株に対して、
1.45倍(95%CI:1.08から1.95)有意に増加していました。

この結果はやや微妙なもので、
確かにアルファ株よりデルタ株の方が、
重症化リスクは高くなっていますが、
実数としてその比率が、
それほど高いものとは言えません。

年齢分布も確かにデルタ株が低い傾向はあるのですが、
今回のイギリスのデータでは、
アルファ株も高齢者の感染は少ないという傾向は同じで、
おそらくワクチン接種が高齢者では進行しているためと、
推測されますが、
それほどの違いは見られていません。

デルタ株の流行拡大の原因とその特徴については、
まだまだ不明の点が多いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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