SSブログ

「3-4x10月」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
3-4X10月.jpg
北野武監督の第2作で、
北野監督の作品としては、
個人的には一番好きな映画です。

高校生の時には「タモリのオールナイトニッポン」が愉しみで、
確か高校卒業前くらいに始まったのが、
「ビートたけしのオールナイトニッポン」でした。

毎週番組を生で聴くか、
テープに撮って次の日に聴くのが、
暗い学生時代の唯一と言っても良い愉しみで、
「フライデー襲撃事件」の時などは、
本当にショックを受けました。
あの時は高田文夫さんだけで、
どうにか数ヶ月繋いだんですよね。

それから映画の話になって、
「戦場のメリークリスマス」の裏話も、
楽しかったですし、
「その男、凶暴につき」の時や、
「あの夏、いちばん静かな海」の時は、
撮影のアイデアなどを、
喜々として話してくれるのが嬉しくて、
どんな映画になっているんだろう、
ととても愉しみにして映画館に出掛けました。

たけしさんにとっても、僕にとっても、
とても楽しい平和な時間でした。

ただ、この「3-4x10月」(3対4エックス10月)の時には、
あまりラジオでの話はなかったように記憶しています。
そのせいもあって、この映画はロードショーでは観ませんでした。
「あの夏、いちばん静かな海」を、
松本の縄手通りにあった今はもうない映画館で観て、
とても感動して驚いて、
たけしさんの才能が見事に開花していることが、
素直に嬉しかったことを覚えています。

それで、
そう言えば観ていなかったな、
と思って、
ビデオで「3-4x10月」を観たのです。

柳ユーレイさんが主役でしょ。
正直最初は手抜きじゃん、と思ったのですが、
いやいやそんなことはなくて、
この無為で透明なような若者を狂言回しにして、
ちょっとゴダールを思わせるように、
即興的な物語が予測不能の展開を見せてゆきます。

たけしさん、凄いじゃん。

素直にそう思いました。

テーマは「暴力」なんですね。
これは結局その後の多くの北野武作品において、
一貫したテーマでもあるのですが、
それを身近なレベルからプロの暴力集団のレベルまで、
縦横無尽に繰り出しながら、
その本質についての哲学的な考察を行っています。

かつて、人間にとって身近な「暴力」というものが、
ここまで緻密かつ深いレベルで考察されたことがあったでしょうか?
映画では勿論のこと、
文学など他のジャンルを併せて考えても、
ここまで深い暴力の考察はなかったように思います。

謎めいた題名は、
野球の9回裏の逆転劇の意味で、
オープニングからラストまで、
その才知が冴えに冴え渡った、
北野武監督の大傑作です。

その後焼き直しのような映画を、
北野監督は沢山作っているので、
今改めて観るとその新味を感じにくいのが少し残念ですが、
この作品が正真正銘のオリジナルで、
当時の最先端の映画であったのです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
nice!(6)  コメント(0)