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高齢者の降圧剤減量の安全性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
80歳以上の高齢者の降圧剤減量.jpg
2020年5月26日のJAMA誌に掲載された、
高齢者の降圧剤の減量についての論文です。

高血圧のコントロールは、
若年層においてはなるべく厳密に、
正常血圧に近づけることが原則ですが、
80歳以上のような高齢者においては、
150/90を上回らない程度に、
緩やかにコントロールすることが推奨されています。

これは高齢者の血圧コントロールの目的は、
将来の心血管疾患の進行を予防することではなく、
その時点での急激な血圧上昇による、
予期せぬ事態の予防に力点があるので、
そのためには目標となる血圧が異なるのです。
更には80歳以上の高齢者では、
降圧剤の有害事象や副作用が起こりやすくなりますし、
低血圧は認知機能低下や転倒骨折などの原因にもなります。

そうした点を総合的に考えると、
高血圧の患者さんが降圧治療を継続したまま高齢になった時点で、
降圧剤の減量を図ることが妥当であると考えられます。

しかし、安定している状態の患者さんの場合、
減量により却って血圧が急上昇したり、
体調不良の原因となることはないのでしょうか?

実はこうした臨床上の重要な問題に対して、
精度の高い臨床研究はあまり存在していませんでした。

今回の研究では、
イギリスの69カ所のプライマリケアのクリニックにおいて、
2剤以上の降圧剤を使用継続していて、
収縮期血圧が150mmHg未満である、
80歳以上の患者トータル569名をくじ引きで2つに分けると、
一方はそれまでの治療を継続し、
もう一方は特定のアルゴリズムに基づき、
1種類の降圧剤を中止して、
その後12週間の経過観察を行っています。

その結果、
観察期間終了時に収縮期血圧が150未満であった比率は、
減量群とコントロール群との間で有意な差はなく、
有害事象においても差は認められませんでした。
その一方で減量により血圧値は平均で3.4mmHgは上昇しており、
この点は減量は慎重に行うべきであることを、
示しているように思われました。

臨床においては、
慎重に降圧剤の種類を減らして様子を見ることは、
通常に行われていることですが、
その根拠が明確に示されたことは意義のあることで、
今後より詳細な検証が、
積み重ねられることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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