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新型コロナウイルス感染症に対するレムデシビルの有効性(無作為介入試験) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスに対するレムデシビルの有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2020年5月22日ウェブ掲載された、
抗ウイルス剤レムデシビルの、
大規模な介入試験の結果をまとめた論文です。

NIHからプレスリリースのようなものだけが発表されていた結果の、
待望の論文化ということになります。

レムデシビルはDNAの原料となる核酸の誘導体で、
ウイルスが細胞内で核酸(RNA)の合成を行う、
RNAポリメラーゼの阻害剤です。

これはアビガン(ファビピラビル)と同様のメカニズムです。

この薬はアメリカの製薬会社ギリアドサイエンシズ社の開発品で、
現行はまだ世界的に未承認薬、治験薬の扱いです。
エボラ出血熱に対しては研究的使用が行われ、
一定の有効性が確認されています。
SARSやMERSなどのコロナウイルスに関しても、
基礎実験では一定の有効性が確認されています。

新型コロナウイルス感染症に対するレムデシビルへの期待は、
この薬の新型コロナウイルスに対するEC50という、
ウイルスの感染細胞での増殖を50%抑制する濃度が、
0.77μMという低さであることが影響しています。

実験的にはここまで効果の高い薬は他にないからです。

その実際の有効性はどうなのでしょうか?

先日同じNew England…誌のレムデシビルについての論文をご紹介しましたが、
それはこれまでに試験的に投与された61例を解析したもので、
コントロール群が設定された、
厳密な臨床試験ではありませんでした。

それから中国において行われた、
無作為介入試験の結果がLancet誌に掲載されました。
対象は湖北省で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した、
年齢は18歳以上でCTで肺炎像が認められ、
酸素飽和度が94%以下の237名の患者で、
登録は症状出現後12日以内に行われ、
PCR検査での陽性も条件となっています。

登録者を本人にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2対1に分けると、
多い群はレムデシビルを10日間注射し、
少ない群は偽薬の注射を施行して、
その予後を比較検証しています。

その結果、
症状が改善するまでに期間には、
レムデシビル群と偽薬群との間で、
明確な差は認められませんでした。
その予後にも明確な差は認められていません。
ちなみに試験開始28日後の時点で、
レムデシビル群の15%、
偽薬群の13%が死亡されています。

つまり、あまり明確な有効性が確認されなかったのです。

今回の大規模介入試験は、
中国以外の世界各地で行われており、
日本も1施設で参加しています。
国立国際医療研究センター病院であるようです。
施設はアメリカが多く、
イギリス、デンマーク、ドイツ、韓国、
メキシコ、スぺイン、シンガポールが参加しています。

最初に中国国内で介入試験が行われて駄目で、
今度は中国抜きの介入試験がより大規模に施行された、
という流れです。

登録された新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の患者は、
トータル1063名で、
本人にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はレムデシビルを初日は200ミリグラム、
2日目以降は100ミリグラムの静注を10日目まで継続し、
もう一方は偽の注射を行います。

そして、
効果判定は治癒にて退院か、
もしくは病状は治癒し、
感染予防目的のみでの入院と判断されるまでの期間を、
両群で比較しています。

ただ、中間解析において、
レムデシビル群での入院期間の短縮が明確となったので、
その時点で盲検試験としては終了となり、
偽薬かレムデシビルかは開示されています。

今回のデータはその時点までの解析結果です。

レムデシビル群の回復までの期間の中間値は11日に対して、
偽薬群のそれは15日で、
偽薬群ではレムデシビル群と比較して、
回復までの期間が1.32倍(95%CI: 1.12から1.55)、
有意に延長していました。
推計の死亡リスクも、
レムデシビル群で30%(95%CI: 0.47から1.04)、
有意ではないものの低下する傾向を示しました。

今回の結果は色々と制限や限界のある中では、
かなり画期的なもので、
入院を要するような新型コロナウイルス感染症の治療においては、
現時点ではレムデシビルが、
最も有効性を期待出来る薬剤、
と言って良いように思います。

ただ、その効果は決して満足のゆくレベルのものではなく、
このウイルス感染症の克服のためには、
より有効な治療薬が必要であることは、
また間違いのないことなのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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