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新型コロナウイルス無症候感染者の自然経過(ダイヤモンドプリンセス号の解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスキャリアの経過.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2020年6月12日ウェブ掲載されたレターですが、
ダイヤモンドプリンセス号に乗船していた、
新型コロナウイルスの無症候感染者の自然経過を観察した内容で、
無症候感染者の経過観察を受け入れた、
藤田医科大学の研究者らによる報告です。

もう遠い昔という感さえある、
豪華客船ダイヤモンドプリンセス号における、
新型コロナウイルスの集団感染ですが、
この時712名の乗船客もしくは乗務員が、
RT-PCR検査で陽性となり、
その58%に当たる410名は、
検査が陽性となった時点では無症状でした。

このうち、
RT-PCR検査は陽性であった、
無症状の96名の乗客乗員と、
その同室者であった、
32名の船内の検査ではRT-PCR陰性の乗員乗客は、
藤田医科大学で経過観察の対応が取られました。

96名の検査陽性者のうち、
観察期間中に発熱や肺炎などの症状が出現したのは、
11名でした。
最初のRT-PCR検査の陽性判定から、
症状出現までの中間値は4日でした。
この11名は結果としては無症候感染者ではなく、
潜伏期間中に検査が陽性となった事例でした。
年齢が高くなるほど、
この潜伏期の感染であるリスクは増加していました。

検査は陰性であった、
感染者と同室の濃厚接触者32名のうち、
8名は観察期間72時間以内に、
RT-PCR検査が陽性となりましたが、
その全てが無症候性のまま推移しました。

結果としてRT-PCR検査が陽性になりながら、
その後全く症状が出ることなく、
RT-PCR検査が2回続けて陰性になった90名を解析すると、
最初の検査陽性から陰性2回までの期間、
すなわち感染していた期間は、
中央値で9日、3から21日の幅に分布していました。
15日以内に90%は治癒した、
ということになります。
治癒までの期間は、
年齢と共に長くなる傾向を示していました。

このデータはほぼこれまでの知見と一致するものですが、
無症候性感染者の経過を追ったデータとしては、
おそらく最も大規模なもので、
日本発の知見として意義のあるものだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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