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コーヒーによる味覚の変化 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コーヒーと味覚の変化.jpg
Foods誌に2020年4月14日にウェブ掲載された、
コーヒーを飲むことで、
その後の味覚に与える影響を検証した論文です。

人間の味覚には幾つかの種類がありますが、
甘みと苦味というのは、
味蕾の同じ種類の細胞で調節されていて、
受容体の構造自体は違いますが、
多くの似通った性質を持ち、
相互にも影響し合っていることが知られています。

苦いものを食べた後では、
甘味を強く感じるというのは、
皆さんも経験のあるところだと思います。

コーヒーなどに含まれるカフェインは、
キニーネなどと共に、苦味受容体に結合する、
代表的な苦味物質の1つです。

ただ、コーヒーによる味覚の変化が、
カフェインによるものかそうでないか、
というような点については、
あまり明確なことが分かっていませんでした。

今回の研究ではデンマークにおいて、
155名の健康なボランティアに、
甘味、苦味、酸味、塩味についての味覚感受性の検査を行い、
それからエスプレッソコーヒーを口に満たし、
すぐに水で洗い流して、
その後にもう一度味覚感受性の検査を行って、
その違いを検証しています。
101名はカフェイン入りのコーヒーを、
55名はデカフェのコーヒーを使用しています。
味覚と同時に嗅覚の感受性検査も行っています。
味覚と嗅覚は相互に強く影響される感覚であるからです。

その結果、
コーヒーの摂取により数分以内には、
甘味感受性が高まり、
苦味感受性が低下する、
という変化が認められました。
要するに甘味を強く感じ、苦味を弱く感じるようになったのです。
嗅覚感受性には違いは認められず、
この変化は純粋に味覚受容体の変化によるものと考えられました。

興味深いことにカフェインを含まないデカフェのコーヒーでも、
この味覚感受性の変化は同じように認められました。

普段コーヒーを飲む習慣のあるなしで、
甘味感受性の変化には違いはありませんでしたが、
苦味感受性の抑制は、
コーヒーを飲む習慣のない人で、
より顕著に認められました。

このように、
コーヒーには甘味感受性を増して苦味感受性を低下させるような、
急性の効果があるのですが、
その変化は従来言われていたようなカフェイン由来ではなく、
コーヒーの別の成分にその原因がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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