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新型コロナウイルス感染のマスクやソーシャルディスタンスによる予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナに対するソーシャルディスタンスやマスクの効果.jpg
Lancet誌に2020年6月1日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染予防のための、
ソーシャルディスタンスやマスクなどの予防効果を検証した論文です。

新型コロナウイルス感染症(SARS-CoV2)の感染が、
東京ではまだ予断を許せない状況が続いています。
治療薬にも決定打がなく、
ワクチンがまだ開発されていない現状では、
人間同士の距離を取る、マスクやフェイスシールドをする、
などの原始的な方法しか、
感染予防の手段がないのが現実です。

それでは、
実際にソーシャルディスタンスやマスクなどには、
どの程度の予防効果があるのでしょうか?

ソーシャルディスタンス(physical distancing)については、
良く言われる1メートルの距離というのが、
元になっているのが1940年代の古いデータで、
コロナウイルスの飛沫は8メートル飛ぶという実験データもあるので、
無意味ではないか、というような意見もあります。

マスクについては、
感染者が周囲に広げることは予防出来ても、
健康な人がマスクをして感染が予防出来るかどうかは、
証明されていない、というような見解もありました。

今回の研究では、
これまでの臨床研究のデータのうち、
新型コロナウイルスと、
SARSの原因ウイルスなどの他のベータコロナウイルスのデータを抽出して、
ソーシャルディスタンスやマスク、ゴーグルなどの感染予防効果を、
これまでのデータをまとめて解析する、
システマティック・レビューとメタ解析という手法で、
科学的に検証しています。

その結果、
まずソーシャルディスタンス
(論文の表現ではphysical distancing)の効果は、
1メートル以上の距離を取ることにより、
それより距離を縮めた場合と比較して、
ベータコロナウイルス感染のリスクは、
82%(95%CI: 0.09から0.38)有意に低下していました。
この感染予防効果は、
その距離をより長くすることにより高くなっていました。

マスクやレスピレーター(これは防毒マスクのようなイメージです)の予防効果は、
トータルでは85%(95%CI:0.07から0.34)で、
N95マスクやそれに準じるサージカルマスクの有効性が高く、
医療現場での予防効果は、
一般社会での予防効果より勝っていました。

目を防御するゴーグルなどの予防効果は78%(95%CI:0.12から0.39)で、
ゴーグルなどの目の周辺の防御が、
マスクとは独立して有効性を持っていることが示されました。

このように、
比較的新しいデータの解析によっても、
ソーシャルディスタンスやマスク、ゴーグルの、
感染予防としての有効性は明確に示されていて、
それが100%ではなく、
気をつけていても感染は起こりうる、
という点には注意が必要ですが、
今後より良い予防策や治療法が開発されるまでは、
現状の予防法が最善のものであることは、
間違いがないと言って良いように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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