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新型コロナウイルスの死者はインフルエンザと同じくらい、は本当か? [科学検証]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診です。
何もなければ積み残した仕事などして過ごす予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
インフルエンザとコロナウイルスの死亡率.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2020年5月14日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症による死亡数と、
季節性インフルエンザによる死亡数との差についての解説記事です。

アメリカでは2020年5月初めまでに、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のために、
65000人の死者が報告されています。
しかし、実はアメリカのCDCが発表している統計によると、
毎年の季節性インフルエンザによる死亡数も、
年による変動はありますが、
ほぼ同数の年もあるとされています。

それでは、
毎年同じように流行している季節性インフルエンザと、
新型コロナウイルスは、
同程度の重さの病気なのでしょうか?

確かにメディアなどでそうした発言をされている著明な方もいます。

「新型コロナウイルスと言っても、
季節性インフルエンザと同じくらいの患者しか死んでいない。
みんな怖がり過ぎているんだ」
というのです。

これは本当でしょうか?

新型コロナウイルスのパンデミックにおいては、
特に流行が爆発したニューヨーク州で、
深刻な医療崩壊が起こり、
公園の仮設の病院において、
人工呼吸器を並べて重傷者の診療を行っている、
というような報道がありました。

仮に季節性インフルエンザにおいても、
同じくらいの重傷者が出ているのだとすれば、
毎年医療崩壊が起こっていないとおかしい、
ということになります。

そんなことはないですよね。

一体何が間違っているのでしょうか?

新型コロナウイルスの死亡数というのは、
実際に報告された患者数を集計したものです。

その一方で季節性インフルエンザの死亡数というのは、
報告された死亡数のみではなく、
そこから全国の死亡数を推計して計算して出している数値なのです。

2013年から2019年のインフルエンザ流行期において、
年間の季節性インフルエンザによるアメリカ全土の死亡数は、
23000名から61000名の間の数字が年毎に報告されています。
しかし、実際に個別に報告された死亡数は3448名から15620名です。
要するに23000名から61000名という数値は、
3448名から15620名をサンプルとして考えた時に、
全国ではそのくらいの人数が死亡している筈だ、
という推測の数値にしか過ぎないのです。
これが2017年から2018年のシーズンでは、
推計された死亡数が61000名となっていて、
このシーズンのインフルエンザの流行はかなり深刻であった訳ですが、
それでも新型コロナウイルスに匹敵する、
というような数字ではないのです。

2020年の4月21日までの1週間で、
新型コロナウイルス感染症で死亡した人は、
15455名と報告されています。
同様の週毎の季節性インフルエンザによる死亡数は、
2013年から2020年の間では、
351名から1626名と報告されています。
つまり、季節性インフルエンザの死亡数の、
同じ期間で9.5から44.1倍、
平均で20.5倍の死亡が、
新型コロナウイルス感染症では起こっている、
というのが実数であることが分かります。

厳密に言えば、
インフルエンザによる死亡数も、
新型コロナウイルスの死亡数も、
いずれも少なからず漏れているケースが想定されますが、
いずれにしてもアメリカにおいて、
新型コロナウイルスのパンデミックの深刻さは、
季節性インフルエンザの10倍以上ではある、
というのが実際と考えて良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(付記)
数字の記載に一部誤りがあり修正しました。
(2020年6月22日午後10時修正)
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