新型コロナウイルス感染症に対する抗HIV薬の効果 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
これはthe New England Journal of Medicine誌に、
2020年3月18日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスに対する抗HIV薬の有効性を検証した、
中国の臨床試験の結果です。
これはおそらくくじ引きで患者を振り分けし、
コントロール群をおいた新型コロナウイルス感染症の臨床試験としては、
最も迅速に施行され公開されたものです。
ただ、予後が不明でリスクが高いため、
偽薬を使って、治療者にも治療内容が伏せられている、
というような方法ではありません。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染に対しては、
まだスタンダードな治療は確立していません。
ただ、比較的初期から試されているのが、
HIV感染症に用いる薬である抗ウイルス剤、
ロピナビル・リトナビル(商品名カレトラ)の使用です。
ロピナビルというのは、
HIVプロテアーゼ活性阻害剤で、
RNAウイルスであるHIVの、
感染細胞内でRNAが複製される過程を阻害する薬です。
リトナビルはそのロピナビルの血液濃度を高める働きがあり、
そのため2種類の薬剤を合剤にして使用しているのです。
そのメカニズムはこちらをご覧下さい。
これはJAMA誌のレビューにあった、
コロナウイルス感染のメカニズムと、
各種薬剤の作用点を一覧にした、
とても良く出来た図表です。
ただ、とても細かくて全図では読めないので、
一部を拡大していますが、
これでもあまり読めないかも知れません。
画像の上は細胞の外で、
下青い部分が細胞の中です。
上から新型コロナウイルスがやって来て、
ACE2にスパイクが結合。
TMPRS2のを働きを借りて細胞の中に入ります。
細胞膜が融合する部分をブロックするのが、
クロロキンやアルビドールで、
入り込んだウイルスはRNAを複製して増殖するのですが、
その時にポリペプチドを分解する過程を阻害しているのが、
今回のロピナビルです。
その下流には、RNA合成酵素があり、
それを阻害するのがレムデシビルやファビピラビル(アビガン)といった、
DNAポリメラーゼ阻害剤です。
さて、今回の臨床試験は中国において、
新型コロナウイルス肺炎の患者さん199名をくじ引きで2つに分け、
一方は通常の治療(この時点では呼吸管理と抗菌剤などです)を行い、
もう一方はそれに加えてロピナビル・リトナビルを、
400mg・100mgで1日2回14日間の使用を行います。
その結果、
両群での臨床症状には明確な差は認められませんでした。
ロピナビル・リトナビルは無効という結果です。
この薬は下痢や嘔吐などの消化器症状が強く、
日本での事例報告でも、
肺炎像の改善が見られた、という報告がある一方、
数日で使用を中止した、
という報告も複数認められています。
今でもロピナビル・リトナビルは新型コロナウイルス感染症の、
治療薬候補の1つではあり、
臨床試験も行われていますが、
その期待はどうも以前より低くなっているのが現状であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
これはthe New England Journal of Medicine誌に、
2020年3月18日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスに対する抗HIV薬の有効性を検証した、
中国の臨床試験の結果です。
これはおそらくくじ引きで患者を振り分けし、
コントロール群をおいた新型コロナウイルス感染症の臨床試験としては、
最も迅速に施行され公開されたものです。
ただ、予後が不明でリスクが高いため、
偽薬を使って、治療者にも治療内容が伏せられている、
というような方法ではありません。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染に対しては、
まだスタンダードな治療は確立していません。
ただ、比較的初期から試されているのが、
HIV感染症に用いる薬である抗ウイルス剤、
ロピナビル・リトナビル(商品名カレトラ)の使用です。
ロピナビルというのは、
HIVプロテアーゼ活性阻害剤で、
RNAウイルスであるHIVの、
感染細胞内でRNAが複製される過程を阻害する薬です。
リトナビルはそのロピナビルの血液濃度を高める働きがあり、
そのため2種類の薬剤を合剤にして使用しているのです。
そのメカニズムはこちらをご覧下さい。
これはJAMA誌のレビューにあった、
コロナウイルス感染のメカニズムと、
各種薬剤の作用点を一覧にした、
とても良く出来た図表です。
ただ、とても細かくて全図では読めないので、
一部を拡大していますが、
これでもあまり読めないかも知れません。
画像の上は細胞の外で、
下青い部分が細胞の中です。
上から新型コロナウイルスがやって来て、
ACE2にスパイクが結合。
TMPRS2のを働きを借りて細胞の中に入ります。
細胞膜が融合する部分をブロックするのが、
クロロキンやアルビドールで、
入り込んだウイルスはRNAを複製して増殖するのですが、
その時にポリペプチドを分解する過程を阻害しているのが、
今回のロピナビルです。
その下流には、RNA合成酵素があり、
それを阻害するのがレムデシビルやファビピラビル(アビガン)といった、
DNAポリメラーゼ阻害剤です。
さて、今回の臨床試験は中国において、
新型コロナウイルス肺炎の患者さん199名をくじ引きで2つに分け、
一方は通常の治療(この時点では呼吸管理と抗菌剤などです)を行い、
もう一方はそれに加えてロピナビル・リトナビルを、
400mg・100mgで1日2回14日間の使用を行います。
その結果、
両群での臨床症状には明確な差は認められませんでした。
ロピナビル・リトナビルは無効という結果です。
この薬は下痢や嘔吐などの消化器症状が強く、
日本での事例報告でも、
肺炎像の改善が見られた、という報告がある一方、
数日で使用を中止した、
という報告も複数認められています。
今でもロピナビル・リトナビルは新型コロナウイルス感染症の、
治療薬候補の1つではあり、
臨床試験も行われていますが、
その期待はどうも以前より低くなっているのが現状であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。