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新型コロナウイルス感染症に対するレムデシビルの臨床的有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスに対するレムデシベルの有効性.jpg
2020年4月10日のthe New England Journal of Medicine誌にウェブ掲載された、
抗ウイルス剤レムデシビルの有効性についての論文です。

レムデシビルはDNAの原料となる核酸の誘導体で、
ウイルスが細胞内で核酸(RNA)の合成を行う、
RNAポリメラーゼの阻害剤です。

これはアビガン(ファビピラビル)と同様のメカニズムです。

この薬はアメリカの製薬会社ギリアドサイエンシズ社の開発品で、
現行はまだ世界的に未承認薬、治験薬の扱いです。
エボラ出血熱に対しては研究的使用が行われ、
一定の有効性が確認されています。
SARSやMERSなどのコロナウイルスに関しても、
基礎実験では一定の有効性が確認されています。

新型コロナウイルス感染症に対するレムデシビルへの期待は、
この薬の新型コロナウイルスに対するEC50という、
ウイルスの感染細胞での増殖を50%抑制する濃度が、
0.77μMという低さであることが影響しています。

実験的にはここまで効果の高い薬は他にないからです。

その実際の有効性はどうなのでしょうか?

今回の臨床試験は、
世界中でレムデシビルが1回以上使用された、
アメリカ、イタリア、日本、フランス、ドイツ、オーストリア、
オランダ、スペイン、カナダの新型コロナウイルス感染症の患者、
トータル61名の患者を解析したものです。
日本からの事例は9例で、
複数の病院から1,2例ずつの患者が登録されています。

使用法は初日は200mgを静脈注射し、
2日目以降は100mgを注射して、
トータルで10日間の治療を行い、
その治療前後の症状を比較しています。

その結果、
治療開始から中央値で18日の時点までで、
最終的に分析された53名のうち68%に当たる36名に呼吸状態の改善が見られ、
15%に当たる8名はより悪化していました。

有害事象は60%に認められ、
肝機能障害、下痢、発疹、腎機能低下などが主でした。

これは比較となるコントロールはなく、
投与した事例をただ集めただけのデータなので、
これをもってレムデシビルの有効性を議論することは、
難しいように思います。

現行世界規模の厳密な方法による臨床試験が、
施行されている最中と思いますので、
この薬の真の有効性の判断には、
その結果をまだ待つ必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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