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新型コロナウイルス感染症と下痢症状 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスと下痢.jpg
これはGut誌の2020年3月5日にウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症と下痢症状についてのレターです。

1例報告で今更という感じはあるのですが、
新型コロナウイルス感染症で見逃し易い症状について、
確認の意味で記録しておきます。

新型コロナウイルス感染症の症状は、
発熱や全身倦怠感、咳などが代表的で、
重症化では概ね肺炎を来します。

従って、どうしても肺炎を疑わせるような、
咳や呼吸困難などの症状に対しては、
誰でも新型コロナウイルス感染症を疑うのですが、
たとえば下痢とだるさのみの症状であると、
簡単に「感染性胃腸炎」というような判断になり、
新型コロナの可能性がスルーされてしまう。
ということが起こり得ます。

担当科も肺炎は呼吸器内科で、
下痢は消化器内科ということになりますから、
その点でも間違いが生じやすいのです。

紹介されている事例は22歳の男性で、
4日続く下痢と微熱を主訴に医療機関を受診しました。
軽度の呼吸器症状も認められたため、
胸部CTが撮影され、
新型コロナウイルスに特徴的な肺炎像が認められました。
画像がこちらです。
コロナウイルス下痢肺炎画像.jpg
軽度の所見ですが、
両側性にすりガラス様の陰影が複数認められています。

このように初期症状が下痢のみという新型コロナウイルス感染は、
しばしば認められるので注意が必要です。

中国の院内感染の事例の報告では、
当初下痢のみの患者が新型コロナウイルス感染を疑われず、
それが院内感染の発端となりました。
国内の院内感染の事例でも、
消化器内科の入院患者が発端になったケースがあると、
話を聞いたことがあります。

昨日の論文にもあったように、
便で感染が持続し長期間続くことが、
今回の新型コロナウイルスの1つの特徴で、
これはSARSにはなくMRESには見られた特徴です。
下痢の頻度はSARSが10.6%であったのに対して、
MERSは30%に達していました。

ポイントは今回の新型コロナウイルスが、
上気道と下気道、および腸管の3種類の部位で、
独立して増殖するという性質があることで、
下気道感染以外は軽症に推移する一方で、
周辺への感染は長期間成立する可能性が高い、
という点に注意が必要なのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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