「ハッピー・デス・デイ」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は祝日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
これは2019年に日本ではロードショー公開された、
タイムループスリラーで、
主人公の大学生の女の子は、
誕生日の度に不気味なお面を着けた殺人鬼に殺され、
死ぬとまたその日の朝に戻るという、
時間のループを繰り返します。
そのループは、犯人が見付かり、
死ぬまでは終わることはないのです。
これは公開時には見落としていて、
今回ブルーレイで続編と共に観ることが出来ました。
最初はちょっと不気味で怖いのですが、
途中からはコメディ調になります。
面白いのは主人公の女の子が、
かなり不真面目でデタラメで、
あまり同情出来ないような性格で登場することで、
それが死と転生を繰り返す中で、
ポジティブで他人を思いやる「良い子」になってゆきます。
殺人鬼に対しても最初は逃げ回るだけですが、
後半は最近のSFやホラーでは定番の、
「戦う女」になってゆきます。
台本はかなり練り上げられていて、
非常に情報量が多いのですが、
伏線はかなり綺麗に回収されますし、
犯人の正体もそれなりに納得のゆくものです。
ただ、何故そもそもタイムループが起こったのか、
と言う点や、
意味あり気な停電は何?
というような謎が観た後に残ります。
この作品には「ハッピー・デス・デイ2U」という続編があり、
元々は2年の間をおいて公開されたものですが、
日本では2019年に連続公開されました。
1作目の謎が解ける構成になっていて、
内容はより複雑化され、
ある意味1作目より充実しています。
ただ、SFコメディというニュアンスが強くなって、
ホラーの要素はかなり後退しています。
なので、殺人鬼は出て来ますが、
その正体も含めて脇筋的な扱いで、
怖いというような要素は殆どなくなっています。
同じ日を永遠に繰り返すというタイムループテーマは、
SFとしては古典的な設定の1つで、
小説でも作例は多くありますし、
映画でも複数の作品があります。
これは殺人のようなことなしに繰り返すのであれば、
むしろほのぼの系のストーリーになり、
感動作にもなるようなテーマです。
人生は勿論1回きりであるのですが、
それが複数回可能という設定を入れることにより、
想像の幅は格段に広がるからです。
ただ、ここに「殺されたり自殺すると時間が戻る」
という条件が付くと、
繰り返す生はファンタジーになりますが、
死はリアルな恐怖であり現実なので、
物語は一気に不吉な意味合いを帯び、
看過出来ない不気味さがそこに漂うことになるのです。
結局は同じことなのですが、
「生を繰り返す」物語はポジティブに思える一方、
「死を繰り返す」物語には、
タブーに触れる疚しさと、
生理的な不快感が伴うのです。
小説ではグリムウッドの「リプレイ」は感動作ですが、
ほぼ同じ設定の乾くるみさんの「リピート」が、
一転ブラックで不気味になるのは、
その辺りにも原因がありそうです。
この作品にも少しそうした部分があり、
特に続編では意図的に自殺を繰り返すというパートがあるので、
その部分に関しては、
「これはやり過ぎではないか」と、
個人的には不快な気分を少し味わいました。
そんな訳で娯楽と言うには、
やや危うい部分のある作品ではあるのですが、
引用上等で多くの過去作品を下敷きとしながら、
如何にも現代の器用さで、
緻密に組み上げられたジャンルを飛び越えた物語は見応えがあり、
こうして家に籠もっている時の時間潰しには、
結構向いている1本(続編を含め2本)ではないかと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は祝日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
これは2019年に日本ではロードショー公開された、
タイムループスリラーで、
主人公の大学生の女の子は、
誕生日の度に不気味なお面を着けた殺人鬼に殺され、
死ぬとまたその日の朝に戻るという、
時間のループを繰り返します。
そのループは、犯人が見付かり、
死ぬまでは終わることはないのです。
これは公開時には見落としていて、
今回ブルーレイで続編と共に観ることが出来ました。
最初はちょっと不気味で怖いのですが、
途中からはコメディ調になります。
面白いのは主人公の女の子が、
かなり不真面目でデタラメで、
あまり同情出来ないような性格で登場することで、
それが死と転生を繰り返す中で、
ポジティブで他人を思いやる「良い子」になってゆきます。
殺人鬼に対しても最初は逃げ回るだけですが、
後半は最近のSFやホラーでは定番の、
「戦う女」になってゆきます。
台本はかなり練り上げられていて、
非常に情報量が多いのですが、
伏線はかなり綺麗に回収されますし、
犯人の正体もそれなりに納得のゆくものです。
ただ、何故そもそもタイムループが起こったのか、
と言う点や、
意味あり気な停電は何?
というような謎が観た後に残ります。
この作品には「ハッピー・デス・デイ2U」という続編があり、
元々は2年の間をおいて公開されたものですが、
日本では2019年に連続公開されました。
1作目の謎が解ける構成になっていて、
内容はより複雑化され、
ある意味1作目より充実しています。
ただ、SFコメディというニュアンスが強くなって、
ホラーの要素はかなり後退しています。
なので、殺人鬼は出て来ますが、
その正体も含めて脇筋的な扱いで、
怖いというような要素は殆どなくなっています。
同じ日を永遠に繰り返すというタイムループテーマは、
SFとしては古典的な設定の1つで、
小説でも作例は多くありますし、
映画でも複数の作品があります。
これは殺人のようなことなしに繰り返すのであれば、
むしろほのぼの系のストーリーになり、
感動作にもなるようなテーマです。
人生は勿論1回きりであるのですが、
それが複数回可能という設定を入れることにより、
想像の幅は格段に広がるからです。
ただ、ここに「殺されたり自殺すると時間が戻る」
という条件が付くと、
繰り返す生はファンタジーになりますが、
死はリアルな恐怖であり現実なので、
物語は一気に不吉な意味合いを帯び、
看過出来ない不気味さがそこに漂うことになるのです。
結局は同じことなのですが、
「生を繰り返す」物語はポジティブに思える一方、
「死を繰り返す」物語には、
タブーに触れる疚しさと、
生理的な不快感が伴うのです。
小説ではグリムウッドの「リプレイ」は感動作ですが、
ほぼ同じ設定の乾くるみさんの「リピート」が、
一転ブラックで不気味になるのは、
その辺りにも原因がありそうです。
この作品にも少しそうした部分があり、
特に続編では意図的に自殺を繰り返すというパートがあるので、
その部分に関しては、
「これはやり過ぎではないか」と、
個人的には不快な気分を少し味わいました。
そんな訳で娯楽と言うには、
やや危うい部分のある作品ではあるのですが、
引用上等で多くの過去作品を下敷きとしながら、
如何にも現代の器用さで、
緻密に組み上げられたジャンルを飛び越えた物語は見応えがあり、
こうして家に籠もっている時の時間潰しには、
結構向いている1本(続編を含め2本)ではないかと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。