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ビデオゲームと小児の認知機能 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ビデオゲームと脳の発達.jpg
JAMA Network Open誌に、
2022年10月24日ウェブ掲載された、
ビデオゲームが小児の脳に与える影響についての論文です。

コンピューターやスマホなどを使用して行う、
ビデオゲームやコンピューターゲームと言われるものは、
もう大多数の人にとって欠かせない娯楽や暇つぶしや、
余暇の過ごし方となっていて、
一部の人にとっては仕事や生活の糧ともなっています。

ただ、その小児や青少年への影響については、
様々な見解があって未だ一致した結論に至っていません。

かつてテレビが娯楽の新しい道具として登場した時には、
テレビを見ると馬鹿になる(実際はもっと過激な表現)と言われました。

同様にビデオゲームをやり続けていると、
攻撃的で衝動的な人間になる、
というような言われ方をすることがあります。

これは満更根拠のない言説ではなく、
実際にそうしたデータが幾つか論文化されています。
ただ、その一方でそうした傾向は認められなかった、
というような報告もあり、
議論はまだ解決には至っていないのが実際です。

その一方で小さな頃からビデオゲームに慣れ親しんでいると、
脳の刺激に対する反応は速くなり、
認知機能の発達にも良い影響を与えるのではないか、
という考え方もあります。

これは事実でしょうか?

今回の研究はアメリカのバーモント州において、
9歳から10歳の2217名を登録し、
認知機能のテストや機能性MRIによる検査を施行して、
認知機能とビデオゲームの習慣との関連を比較検証しています。

その結果、
殆どビデオゲームをしていない子供と比較して、
1週間に21時間以上ゲームをする習慣のある子供は、
行動のために一時的に情報を記憶して活用する能力である、
ワーキングメモリーと、
目的に合った行動のために他の行動欲求を抑制する、
行動の抑制の機能が、
有意に優れていることが確認されました。
機能性MRIにおいて、
そうした機能が必要なタスクを施行時の、
血流パターンに差のあることも確認されました。

これはゲームの影響の一面を見ているのみであることに、
注意が必要ですが、
成長期におけるビデオゲームの影響は、
決して一面的なものではなく、
小児の成長に良いものも悪いものも含めて、
多岐に渡る影響を与える可能性があることが明らかになったのは、
非常に意義のあることだと思います。

今後こうした研究がより詳細に行われることにより、
ビデオゲームと脳との関連が解明され、
小児のバランスの取れた成長のためには、
どのようにゲームと関わることがベストであるのか、
検証が深められることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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