SSブログ

長期の食習慣が認知症リスクに与える影響(スウェーデンの大規模疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
食生活と認知症リスク.jpg
Neurology誌に2022年10月12日掲載された、
認知症の発症に食生活が与える影響についての論文です。

認知症の発症には生活習慣が関与しており、
その予防のために食事が重要であるという考え方があります。
実際地中海ダイエットと呼ばれる、
魚とナッツやオリーブオイルを多く摂り、
赤身肉やバター、マーガリンなどの動物性脂肪を控える食事で、
認知症リスクが低下したとする臨床データが報告されていますが、
その研究の精度はそれほど高いものではありません。

今回の研究はスウェーデンにおいて、
一般住民28025人に詳細な食事のアンケートを施行し、
その食事パターンを分析して、
その後中間値で19.8年という長期の経過観察を行い、
認知症リスクと食事パターンとの関連を検証しているものです。
これまでの同種の研究の中でも、
単独の研究としては対象者数も多く観察期間も長期で、
食事内容の分析も詳細であるという特徴があります。

食事パターンは、
スウェーデンにおいて健康な食事パターンとして、
推奨されているものと、
地中海ダイエットの食事パターンを、
どのくらい遵守しているのかを指標として分析されています。。

スウェーデンで推奨されているダイエットは、
食物繊維を多く摂り、砂糖を減らし、
魚や果物、野菜を多く摂り、
赤身肉や加工肉を減らすというもので、
地中海ダイエットもそこまでについては、
ほぼほぼ同一なのですが、
それに加えて赤ワインを飲み、
バターやマーガリンを減らし、
ナッツやオリーブオイルを沢山摂る、
という特徴を持っています。

観察の結果、
国で推奨されている食事パータンを遵守していても、
地中海ダイエットの食事パターンを遵守していても、
遵守していない場合と比較して、
トータルな認知症の発症リスクも、
認知症による死亡リスクも、
個々の認知症の発症リスクも、
いずれも有意な差は認められませんでした。
一部の事例では脳のアミロイドβ蛋白の蓄積が検査されていますが、
その蓄積の程度と食事パターンとの間にも、
明確な関連は認められませんでした。

このように、
今回の検証においては、
健康に良いとされる食事パターンを遵守していても、
認知症の明確な予防には結びついていませんでした。

これをもってこうした食事に意味がない、
というようには言えませんし、
心血管疾患などの予防においては、
明確な予防効果が確認されている点は強調するべきですが、
こと認知症の予防という点に限定すると、
食事に多くを期待することは、
現状は難しいと考えた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0)