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急性虫垂炎と気温との関係 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

ちょっとバタバタしておりまして、
少し更新をお休みしていました。

また再開しますのでよろしくお願いします。

今日はお休みですが医療の話題です。

今日はこちら。
盲腸と季節.jpg
JAMA Network Open誌に、
2022年10月3日ウェブ掲載された、
急性虫垂炎(盲腸)の季節性変動についての論文です。

急性虫垂炎は俗に「盲腸」と呼ばれ、
急な腹痛の原因として非常に一般的な病気です。

虫垂は大腸から飛び出した小さな袋のような部分で、
構造的に細菌感染が起こり易く、
重症化すると穿孔して腹膜炎を起こすこともあります。

その症状は典型的には右下腹部の痛みと、
発熱、下痢などですが、
初期には腹痛はより上の部位に感じられ、
早期診断は難しい面があります。

以前は手術で虫垂を切除することが一般的な治療でしたが、
穿孔などを起こしていない軽症であれば、
抗菌剤の使用によって保存的な治療で様子をみることも、
広く行われるようになっています。

この急性虫垂炎には季節性の変動があることは、
以前から知られていました。

2014年の海外データでは、
南半球でも北半球でも夏に多いという報告があります。
日本においても1993年に同様に夏に多いという報告があり、
2018年の岩手県の疫学データでも、
手術の事例は11から12月に比較して7から9月に有意に多かった、
と報告されています。

ただ、それが気温の影響であるのか、
それ以外に原因があるのか、という点については、
これまであまり明確なデータが存在していませんでした。

今回の研究はアメリカにおいて、
2001年から2017年の健康保険のデータを、
その地域の気温と比較検証したもので、
急性虫垂炎のリスクが想定される、
のべ450723744名を対象として、
急性虫垂炎患者だけでも689917名を登録した大規模なものです。

解析の結果、
気温が10.56℃以下では、
急性虫垂炎の発症率は気温が5.56℃上昇する毎に、
1.3%(95%CI:1.01から1.02)増加していましたが、
気温が10.56℃を超えると、
急性虫垂炎の発症率は気温が5.56℃上昇する毎に、
2.9%(95%CI:1.03から1.03)と、
より高い上昇率を示していました。

また予測されたその日の平均気温より、
気温が5.56℃を超えて上昇すると、
急性虫垂炎の発症率は、
3.3%(95%CI:1.0から5.7)有意に増加していました。

このように、
急性虫垂炎は気温が高いほど発症しやすい傾向があり、
特に気温の上昇により影響を受けることが、
今回のデータから明らかになりました。

その原因は現時点では不明ですが、
気温が上昇した日の腹痛は、
通常より急性虫垂炎の可能性を、
より高く見積もる必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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