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左室機能低下事例における心臓カテーテル治療の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
カテーテル治療の心不全に対する効果.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2022年10月13日掲載された、
心機能が低下した事例における、
心臓カテーテル治療の有効性を検証した論文です。

心臓を栄養する血管である冠動脈に、
動脈硬化性の変化による血行障害が起こり、
血管が高度に狭窄したり閉塞すると、
心臓の筋肉は虚血状態となり、
胸の痛みなどの症状が起こって、
不安定狭心症や急性心筋梗塞と呼ばれる状態になります。

その急性期にカテーテル治療やバイパス手術によって、
血行を再建すると、
心筋の虚血も改善することが多く、
そのため早期に治療を施行することが推奨されています。

しかし、慢性の虚血により、
左室機能が高度に低下しているような場合、
通常の薬物療法に加えて心臓カテーテル治療をすることで、
果たして患者さんの予後の改善に結び付くのか、
という点についてはまだあまり明確なことが分かっていません。

今回の研究はイギリスの複数施設において、
駆出率という指標で35%以下という、
高度の左室機能の低下があり、
急性心筋梗塞の急性期ではなく、
心臓カテーテル治療の適応となるような病変を持つ、
トータル700名の患者をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は心臓カテーテル検査を施行し、
もう一方はスタチンや抗血小板剤、ACE阻害剤などの、
ガイドラインに則った薬物治療のみを施行して、
1年以上の経過観察を施行しています。

その結果、中間値で41か月の経過観察期間において、
薬物治療にカテーテル治療を上乗せしても、
患者さんの全ての原因による死亡と心不全による入院のリスクに、
有意な改善は認められませんでした。
また左室機能の指標である駆出率についても、
両群で差は認められませんでした。
患者さんのQOLについては1年以内では、
カテーテル治療併用群で改善傾向が認められましたが、
2年後の検証ではその違いは有意ではなくなっていました。

このように、
心機能が高度に低下した慢性心不全の患者さんにおいて、
適応となる病変に対して、
心臓カテーテル治療を施行しても、
患者さんの生命予後や心機能の明確な改善は認められませんでした。

心機能が高度に低下した患者さんのカテーテル治療の適応については、
今後より慎重な検証が必要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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