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降圧剤の服用タイミングと予後との関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療となります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
降圧剤の服用タイミングとその効果.jpg
Lancet誌に2022年10月11日掲載された、
降圧剤の飲む時間と予後との関連についての論文です。

現在多くの高血圧の薬は1日1回の飲み薬です。

添付文書でも1日1回と書かれているだけで、
朝でも昼でも夜でも、
基本的には問題はないということになっています。

製薬会社の説明では、
その半減期は長く効果は安定しているので、
1日のうちどの時間に飲んでも、
同じ時間に継続して服用すれば、
血圧コントロールは安定するとされています。

しかし…

その一方で夜間の血圧をコントロールすることが、
昼間の血圧より重要であるという意見も根強くあります。
そして、そうした意見の専門家は、
1日1回のタイプの降圧剤は、
朝飲むより夜に飲んだ方が、
夜の血圧を低下させるので有効性が高い、
という言い方をされています。

実際にそれを示唆するデータも存在しています。
血圧を上昇される大きな要因の1つである、
レニン・アンジオテンシン系という一連のホルモン系は、
昼より夜寝ている時間帯に、
より活性化しているというデータがあります。
また、一部の降圧剤において、
朝より夜に飲んだ方が、
心血管疾患のリスク低下に結びついた、
というようなデータもあります。

以前ブログでも紹介したことのある、
2019年のEuropean Heart Journal誌に掲載されたスペインの臨床試験の論文では、
降圧剤を夜寝る前に服用することにより、
昼間に服用した場合と比較して、
心血管疾患による死亡などのリスクが、
45%有意に低下していました。

これは非常にインパクトのある結果ですが、
ただ飲む時間を変えるだけで、
ここまでの違いがあることに、
「本当にそんなことがありうるのか」と、
ちょっと奇異な感じを覚えることも事実です。

今回の研究はイギリスで施行された臨床試験で、
18歳以上の高血圧患者トータル21104名をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は服用している全ての降圧剤を朝の6時から10時に、
もう一方は寝る前の20時から24時の間に内服して、
中央値で5.2年の経過観察を施行しています。
2019年論文とほぼ同様の内容を、
再検証したと言って良い研究デザインになっています。

その結果、
心血管疾患による死亡と心筋梗塞、脳卒中を併せたリスクには、
両群で有意な差が認められませんでした。

このように今回の研究では、
2019年論文と同等の規模の同様の検証において、
2019年の臨床データとは異なり、
降圧剤の服用時間による明確な予後の差は認められませんでした。

この問題はまだ結論が出たとは言えないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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