SSブログ

糖尿病治療薬の血糖降下作用の差 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
糖尿病の治療薬の血糖低下作用比較.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2022年9月22日掲載された、
糖尿病治療薬の血糖降下作用を比較した論文です。

2型糖尿病における血糖コントロールの基準は、
高齢者以外では、
現状HbA1cという指標において、
7.0%未満に維持することが、
世界的な多くのガイドラインにおいて推奨されています。

これはまだ議論のあるところで、
以前はより低いレベル、
正常な血糖値に限りなく近づけることが推奨されていたのですが、
そうした目標を設定することで、
むしろ生命予後を含めた予後に悪影響が生じる可能性が浮上し、
現状は今使用されている治療薬においては、
より高い目標が設定されるようになったのです。

2型糖尿病の血糖コントロールにおいて、
世界的に第一選択薬として認められているのが、
経口治療薬のメトホルミンです。

そして、メトホルミンを1日2000㎎程度に増量して、
HbA1cが7.0%未満の目標に達しない時には、
もう1つ別の糖尿病治療薬を併用して、
目標を目指すことが、
これもガイドラインで推奨されています。

ただ、その場合複数の治療薬において、
どの薬が最も有効性が高いのか、
というような点については、
あまり複数の薬を直接比較したような臨床データが、
存在していませんでした。

今回の研究はアメリカの複数施設において、
メトホルミンを1日500㎎以上で継続していて、
HbA1cが6.8から8.5%で、
病歴10年未満の2型糖尿病患者、
トータル5047名をくじ引きで4つの群に分けると、
持続型インスリンのグラルギン、
SU剤のグリメピリド(商品名アマリールなど)、
DPP4阻害剤のシタグリプチン(商品名ジャヌビアなど)、
GLP-1アナログのリラグルチド(商品名ビクトーザなど)の4剤に割り付け、
平均で5年の経過観察を施行しています。

その結果HbA1cが観察期間終了時に7.0%以上と、
コントロール基準を満たしていなかった比率は、
年間100人当たりグラルギン使用群では26.5件、
リラグルチド群では26.1件、
と両群では有意な差はなく、
グリメピリド群は30.4件、
シタグリプチン群は38.1件と、
この2剤は有意にコントロールの達成率が低くなっていました。
これをHbA1cが7.5%を超える基準で検証しても、
結果は変わりませんでした。

重症低血糖の発症リスクについては、
グリメピリド群が2.2%と高く、
グラルギン群では1.3%、
リラグルチド群で1.0%、
シタグリプチン群で0.7%となっていました。
SU剤が低血糖のリスクが高いという、
これまでの知見と一致する結果です。

今回のデータにおいては、
まずメトホルミン治療を継続した場合の、
平均のHbA1c値は7.5%で、
充分な有効性は得られていないということが分かります。
そこで今回もう1種類の治療薬を追加して、
5年の観察を行っても、71%の患者では、
HbA1cが7.0%未満に達しないか維持されていませんでした。
これを登録時点でHbA1cが6.8から7.2%という、
コントロールが比較的良い患者に限定して検討しても、
60%の患者は基準に達していませんでした。

このように、
メトホルミン治療に併用して、
もう1種類の薬剤を追加してコントロールを行っても、
その有効性は必ずしも満足のゆくものではなく、
今後糖尿病の患者さんの予後の改善を目標とした時に、
どのような薬剤を組み合わせて、
どのような効果を期待するべきか、
より科学的で実証的な検証が必要だと思われます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0)