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COVID-19後遺症の長期予後(ドイツの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
保育園の健診や老人ホームの診療で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナ後遺症の解析ドイツ.jpg
British Medical Journal誌に、
2022年10月13日掲載された、
所謂「コロナ後遺症」の長期予後についての疫学データです。

新型コロナウイルス感染症の罹患後に、
だるさや微熱などの症状が長期間持続することや、
肺疾患や生活習慣病などの全身疾患が、
新たに生じることも多いことは、
国内外を問わずこれまでに多くの報告があります。

主にヨーロッパでは、COVID-19罹患後症候群という概念で、
初発から12週間以上持続する症状を定義していましたが、
以前ご紹介したアメリカの研究では、
より広く発症から21日以上持続する体調不良を、
シンプルに後遺症と表現していました。
それ以外にロングCOVID(Long COVID)、
というような表現も使用されています。
要するに、まだ統一された概念ではないようです。
今回のイギリスの論文では、
ロングCOVIDという表現がされています。

日本でも罹患後症状、後遺症、後遺障害と、
多くの表現が使用されていて、あまり一貫性のない状態です。
保険病名としては、
COVID-19後遺症という記載も認められています。
一般向けには「コロナ後遺症」という、
やや曖昧で不正確な表現が使用されています。

いずれにしても、
概ね罹患後3ヶ月を過ぎても、
体調が罹患前と比べて悪い場合に、
そうした表現がされることが多いようです。

後遺症外来と称するものも複数開かれていて、
慢性疲労に使用されるような漢方薬やビタミン剤、
一部のアミノ酸製剤やその誘導体などが使用されているようですが、
明確にその効果が立証されているようなものは現時点ではありません。

今回の研究はドイツにおいて、
年齢が18から65歳で、
2020年10月から2021年3月に掛けて、
新型コロナウイルス感染症と診断された、
トータル50457名を対象とし、
そのうちの24%に当たる12053名がアンケート調査に協力して、
平均で8.5か月の経過観察が施行されています。

その結果、
診断から6か月以降12か月までの間においても、
全身倦怠感に関わる症状が37.2%(95%CI:36.4から38.1)、
集中力低下など認知神経機能に関わる症状が31.3%(95%CI:30.5から32.2)に認められ、
その多くが当人の回復の障害となり、
就労などの社会復帰を妨げていました。
また息切れなどの胸部症状、不安や抑うつ状態、頭痛やめまい、疼痛などの症状も、
同様に持続して回復の障害となっていました。
この後遺障害を生活レベルに中等症以上の影響を与え、
健康状態や仕事の能力を以前の8割以下に低下させるものとすると、
そのトータルな比率は感染者の28.5%(95%CI:27.7から29.3)に及び、
これは新型コロナウイルス感染症に罹患した成人の、
少なくとも6.5%に生じると推定されました。
味覚嗅覚障害もしばしば6か月を超えて持続していましたが、
他の後遺症とは独立して認められていました。

このように、
今回の大規模な検証においても、
多くの感染者が治癒後も持続的な倦怠感などの症状に苦しめられていて、
それが社会生活にも少なからず影響を与えている実態が確認されました。

今後こうした事例をどのように治療し、
かつ社会的な救済に繋げてゆくのか、
早急な検討が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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