唐十郎「秘密の花園」(唐組・第69回公演) [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
唐組の第69回公演として、
もう唐組としては4回目の上演となる、
「秘密の花園」が上演されています。
猿楽町の明大校舎脇にある紅テントに足を運びました。
この作品は1982年に下北沢の本多劇場のこけら落としとして初演され、
ヒロインは緑魔子さんで石橋蓮司さんは出演せず、
唐先生は戯曲のみで演出は文学座の小林勝也さんが手掛けた、
という状況劇場でも第七病棟でもない、
混成チームという感じの公演でした。
ただ、演出の小林さんは当時はアングラどっぷりで、
状況劇場への出演もあり、
前年にはパルコで「少女仮面」を手掛けていて、
これはかなり唐演出に寄せた感じの作品でしたから、
唐先生としても、安心して任せられた、
という感じであったのかも知れません。
初演は観ていて収録の画像も残されていますが、
当時の感想としては「まあまあ」という感じ。
「ふたりの女」を彷彿とさせる第七病棟風の戯曲なのですが、
それにしては場の作り込みが甘いという感じなので、
当時の観客の多くは、
やや物足りなく感じたのではないかと思います。
それが唐組時代になって1998年に改訂の巻と題されて再演され、
好評のため1999年にキャストを替えて再度上演されました。
この時は1幕は初演通りでしたが、
2幕に野口医師という悪魔的人物が追加で登場し、
後半の展開が一部改変されていました。
その後の上演は全てこの時の改訂版で、
初演版の上演はおそらくないと思います。
2016年には久保井研さんの演出で、
より繊細なタッチの上演が重ねられています。
それ以外に企画公演として、
三田佳子さんが主役を演じた舞台があり、
この時にも戯曲が書き換えられていましたが、
このヴァージョンはこの時限りであったように思います。
今回の上演は基本的にはこれまでの唐組上演版に依拠したもので、
アキヨシを今回は稲荷卓央さんが演じ、
藤井由紀さんと久保井研さんという、
唐組のゴールデントリオで、
この作品の現時点での決定版を作ろう、
という公演であったように思います。
毎回思うことですが、
1幕は本当に素晴らしいと思います。
浄瑠璃歌舞伎のような古典劇を観ているような味わいがありました。
後半はもっと強烈なメリハリが、
要所の台詞ではあった方がいいかな、
というようには感じましたが、
エピローグからラストの詩情が絶妙で、
この部分については初演を含めて、
今回が最も情感に溢れた名シーンになっていたと感じました。
多分高齢者主体の観客に配慮したのか、
嵐で本水は使用するものの、
主に舞台後方に水を出して、
防水シートばなくても観客は濡れないように工夫されていました。
それでしょうがないかな、
と思う反面、
もっと荒っぽく過激にやってよ、
という思いもありました。
今回の会場の猿楽町は、
辺りの雰囲気も悪くないし、
最後に見える舞台後方が、
色々な仕掛けが組めて、
人物も上手く消えるようになっているので、
今は一番お気に入りです。
今回もう一か所の鬼子母神は、
僕には足場的に悪すぎて、
今はやや敬遠している感じです。
ただ、明大校舎からベース音などが響いて来て、
それが興趣を削ぐ時間があるのは残念に感じました。
唐先生の芝居が格調のある古典劇にように観られる、
というのは以前はとても想像出来なかったことですし、
それで良いのか、という葛藤も一方にはあるのですが、
唐先生と長い時間を共にして来た唐組のゴールデントリオが、
幾多の過去の名作を、
再構築しつつより繊細かつ精緻に再現しているのは、
演劇好きとしてはこれ以上はない至福の時間で、
今後も上演がある限りは通い続けたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
唐組の第69回公演として、
もう唐組としては4回目の上演となる、
「秘密の花園」が上演されています。
猿楽町の明大校舎脇にある紅テントに足を運びました。
この作品は1982年に下北沢の本多劇場のこけら落としとして初演され、
ヒロインは緑魔子さんで石橋蓮司さんは出演せず、
唐先生は戯曲のみで演出は文学座の小林勝也さんが手掛けた、
という状況劇場でも第七病棟でもない、
混成チームという感じの公演でした。
ただ、演出の小林さんは当時はアングラどっぷりで、
状況劇場への出演もあり、
前年にはパルコで「少女仮面」を手掛けていて、
これはかなり唐演出に寄せた感じの作品でしたから、
唐先生としても、安心して任せられた、
という感じであったのかも知れません。
初演は観ていて収録の画像も残されていますが、
当時の感想としては「まあまあ」という感じ。
「ふたりの女」を彷彿とさせる第七病棟風の戯曲なのですが、
それにしては場の作り込みが甘いという感じなので、
当時の観客の多くは、
やや物足りなく感じたのではないかと思います。
それが唐組時代になって1998年に改訂の巻と題されて再演され、
好評のため1999年にキャストを替えて再度上演されました。
この時は1幕は初演通りでしたが、
2幕に野口医師という悪魔的人物が追加で登場し、
後半の展開が一部改変されていました。
その後の上演は全てこの時の改訂版で、
初演版の上演はおそらくないと思います。
2016年には久保井研さんの演出で、
より繊細なタッチの上演が重ねられています。
それ以外に企画公演として、
三田佳子さんが主役を演じた舞台があり、
この時にも戯曲が書き換えられていましたが、
このヴァージョンはこの時限りであったように思います。
今回の上演は基本的にはこれまでの唐組上演版に依拠したもので、
アキヨシを今回は稲荷卓央さんが演じ、
藤井由紀さんと久保井研さんという、
唐組のゴールデントリオで、
この作品の現時点での決定版を作ろう、
という公演であったように思います。
毎回思うことですが、
1幕は本当に素晴らしいと思います。
浄瑠璃歌舞伎のような古典劇を観ているような味わいがありました。
後半はもっと強烈なメリハリが、
要所の台詞ではあった方がいいかな、
というようには感じましたが、
エピローグからラストの詩情が絶妙で、
この部分については初演を含めて、
今回が最も情感に溢れた名シーンになっていたと感じました。
多分高齢者主体の観客に配慮したのか、
嵐で本水は使用するものの、
主に舞台後方に水を出して、
防水シートばなくても観客は濡れないように工夫されていました。
それでしょうがないかな、
と思う反面、
もっと荒っぽく過激にやってよ、
という思いもありました。
今回の会場の猿楽町は、
辺りの雰囲気も悪くないし、
最後に見える舞台後方が、
色々な仕掛けが組めて、
人物も上手く消えるようになっているので、
今は一番お気に入りです。
今回もう一か所の鬼子母神は、
僕には足場的に悪すぎて、
今はやや敬遠している感じです。
ただ、明大校舎からベース音などが響いて来て、
それが興趣を削ぐ時間があるのは残念に感じました。
唐先生の芝居が格調のある古典劇にように観られる、
というのは以前はとても想像出来なかったことですし、
それで良いのか、という葛藤も一方にはあるのですが、
唐先生と長い時間を共にして来た唐組のゴールデントリオが、
幾多の過去の名作を、
再構築しつつより繊細かつ精緻に再現しているのは、
演劇好きとしてはこれ以上はない至福の時間で、
今後も上演がある限りは通い続けたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。