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抗血小板療法の新型コロナウイルス感染症に対する有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19への抗凝固療法の有効性.jpg
JAMA誌に2022年3月22日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症への、
抗血小板療法の有効性を検証した論文です。

新型コロナウイルス感染症では、
全身に血栓傾向が出現して血小板機能も亢進し、
それが多彩な全身の臓器の合併症と、
関連しているという知見があります。

このことからは、
凝固や血小板機能を抑制するような治療が、
感染の予後を改善するという可能性が示唆されます。

しかし、以前ご紹介したことのあるRECOVERYという臨床試験では、
通常治療に抗血小板作用のあるアスピリンを追加しても、
病状の有意な改善は認められませんでした。

ただ、この試験では軽症の事例が大多数であったため、
血栓系の合併症もそれほど多くはなく、
そのために明確な効果が確認出来なかった可能性があります。

そこで今回の臨床試験では、
新型コロナウイルス感染症で集中治療室で治療を受け、
人工呼吸器や人工心肺などの機器を使用している、
重症の事例を対象として、
通常治療群(529名)、アスピリン使用群(565名)、
アスピリンではない抗血小板剤であるP2Y12阻害剤(クロピドグレルなど)の使用群(455名)、
の3群に分けて、その予後を比較検証しています。
効果の判定は開始後21日までに、
人工呼吸器などの臓器機能を補助する機器を、
使わずに済んだ日数としています。

その結果、まずアスピリン群とP2Y12阻害剤との間には有意な差はなく、
その2種の薬剤を併せた群と通常治療群との比較でも、
生命維持の機器を使わずに済んだ日数には、
有意な差は認められませんでした。

つまり、効果は確認出来なかった、という結果です。

ただ、入院中の死亡率でみると、
抗血小板使用群でやや改善が認められ、
一定の有効性は示唆されました。

その一方で抗血小板剤を使用することにより、
明確に出血系合併症のリスクは増加してました。

このように、
現状抗血小板剤の使用が、
新型コロナウイルス感染症の予後に有効という、
明確な根拠は現時点ではなく、
その使用は個々の患者の病態によって、
慎重に判断されるべき事項であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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