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新型コロナワクチン4回目接種に必要性と抗原原罪説 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
朝から小学校の健診があって、
それから老人ホームの診療に廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
免疫原罪説.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2022年4月13日ウェブ掲載された解説記事ですが、
今後の新型コロナワクチン接種のあり方についての論説です。

日本では今新型コロナワクチンの3回目接種が施行され、
4回目接種についても実施の方向で動いているようです。

ただ、その有効性については、
まだあまり明確なことが分かっていません。

上記記事と同じ紙面に掲載された、
イスラエルでの4回目接種の有効性データでは、
3回目接種から4か月以上の間隔を置いて、
60歳以上の年齢層に接種した結果として、
接種後14日から30日の有症状感染の予防効果が52%、
入院の予防効果が61%、
重症感染の予防効果が72%、
感染による死亡の抑制効果が76%となっていました。

一定の有効性は確認されるものの、
当初2回接種後の有症状感染予防効果が95%を超えていたことを思えば、
感染そのものを抑止する効果はあまり期待は出来ず、
死亡を含めた重症化予防においてのみ、
一定の有効性が確認されるという結果です。

従って、今後4回目接種を施行するとすれば、
力点は感染そのものの抑制ということではなく、
重症化の抑止効果を期待する点にある、
ということが出来ます。

つまり、全ての住民が追加接種をするのではなく、
重症化リスクの高い、持病のある方や高齢者に限って、
接種をすることが効率的だという結論になる訳です。

そして、追加接種を先行的に実施にしている多くの国においても、
現状はそうした対象を絞った接種が、
施行されているようです。

それでは、
何故回数を重ねる毎に、
ワクチンの有効性は減弱しているのでしょうか?

現在使用されているワクチンは、
2019年に中国で流行した時点のウイルス抗原を、
基本的に使用して作られています。

従って、抗原に変異が蓄積され、
当初の抗原とは異なる性質を持つようになっているので、
そのために有効性が低下している、
という考え方が可能です。

もう1つ最近言及されることが多いのが、
「抗原原罪説(original antigenic sin)」と呼ばれる考え方です。

これはある抗原の刺激を繰り返し受け、
それに対する免疫応答を繰り返していると、
抗原が変異した時に、
それに対する免疫応答が弱くなる、
という現象のことです。

これは厳密には人間では確認されている現象ではなく、
猿での実験の結果ですが、
現行の中国株に対するワクチンを接種していると、
オミクロン株に対する免疫応答が、
ワクチン未接種の場合より弱くなったという結果が報告されています。

つまり、あまり同じワクチンによる免疫刺激を繰り返していると、
免疫細胞がロックをされたような状態になり、
変異株に対して臨機応変に対応する力を、
失ってしまうのではないか、という理屈です。

仮にこれが事実であるとすれば、
現行のワクチンで4回目接種をするのは得策ではなく、
現在流行している変異株に合わせたワクチンに、
早急に切り替えるべきだ、ということになる訳です。

いずれにしても新型コロナ感染症の流行も2年を過ぎ、
その対策とその目的については、
今まさに切り替えの時期に至っていることは、
間違いのないことのようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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