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新型コロナウイルスDNAワクチンの有効性(インドの臨床試験) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
新型コロナに対するDNAワクチンの有効性.jpg
The Lancet誌に2022年4月2日ウェブ掲載された、
新型コロナのインド製DNAワクチンの有効性についての臨床試験の論文です。

新型コロナワクチンとしては、
ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社の、
mRNAワクチンが日本を始め欧米の多くの国で使用されていますが、
同じ遺伝利用のワクチンとして、
以前から開発が進められているのがDNAワクチンです。

mRNAワクチンは遺伝子としてRNAを利用していますが、
その代わりにDNAを利用するのがDNAワクチンです。
そのウイルス遺伝子の断片が人間の免疫細胞などに取り込まれて、
抗原が作られ免疫反応が起こるという仕組みについては、
両者のワクチンとも共通しています。
しかし、RNAは蛋白を合成すればそれで役割を終えるので、
その寿命は短く身体の遺伝子に影響を与える、
という危険はないのですが、
DNAはRNAより安定しているので、
それが身体の正常な細胞に取り込まれて、
遺伝子を改変し、
予期せぬ結果に繋がる可能性は否定出来ません。
その一方でDNAは安定しているので、
その感染予防としての有効性も、
RNAワクチンより高いという可能性もあります。

今回のワクチンはインドのジェネリックメーカーである、
カディラ・ヘルスケア(Cadila Healthcare)が開発したもので、
おそらく世界で初めて臨床的に使用された、
新型コロナのDNAワクチンです。

今回の論文ではインドの複数施設で行われた、
第三相の臨床試験の中間解析結果が報告されています。
12歳以上の27703名をくじ引きで2つの群に分け、
本人にも担当者にも分からないように、
一方はDNAワクチンを3回接種し、
もう一方は偽ワクチンを接種して、
3回目接種後28日以降の有症状の感染事例の比較から、
ワクチンの有効率を算出しています。

その結果ワクチンの有効率は、
66.6%(95%CI:47.6から80.7)でした。

この数値はいずれも95%を超えていた、
mRNAワクチンの臨床試験の有効率と比較すると、
かなり見劣りのするものです。

今回の臨床試験においては、
ワクチンに固有の有害事象は認められていませんが、
より安全性は高いと想定されるmRNAワクチンと比較して、
その有効性も見劣りがするのですから、
現状ではDNAワクチンが、
新型コロナワクチンの主流となる可能性は、
あまり高くはないとそう考えて、
大きな間違いはなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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