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岩松了「青空は後悔の証し」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも須田医師が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
青空は公開の証し.jpg
岩松了さんの新作が、
小泉今日子さんがプロデュースする、
株式会社明後日の企画公演として、
今世田谷シアタートラムで上演されています。

小泉今日子さんも舞台には毎日立ち会われているようで、
僕が観劇した時もいらっしゃいました。

昨年の「そした春になった」と似通ったスタイルで、
凄い絵空事的な設定なんですよね。
意図的に翻訳劇に近いような設定と演出で、
何か目標があってやっていることは分かるのですが、
未だ発展途上という感じもあります。

風間杜夫さんが引退した旅客機のパイロットで、
何かの病気の療養を兼ねて、
高層マンションなのか高級老人ホームなのか、
豪華で浮世離れした部屋で、
お手伝いさんの老女と暮らしているんですね。
大きな窓の向こうには、
エンパイアステートビルのような塔が、
建設途中であるのが見えます。

変でしょ。
とても日本とは思えないですよね。
でも、登場人物は日本人らしいのが得体の知れない感じです。
主人公の設定からして、
「スチュワーデス物語」なんですね。
かつて教え子だったスチュワーデスと、
再会しようとするのに出来ない、
という話になるんですね。
年を取った教官が堀ちえみさんと再会しようとするのですが、
堀ちえみさんの娘に邪魔されて出来ないのです。
ある意味非常に意地悪な設定に思えます。
まあドラマの教官は機長ではないのですが、
もともと小泉今日子さんが堀ちえみさんの役をやる予定だったので、
それも入れ込んだ設定になっているんですね。
要は最初から最後まで登場しないヒロインは、
舞台の外にいる小泉今日子さん、
というひねった設定になっている訳です。

それだけではなくて、
風間杜夫さんの息子が豊原功補さんで、
石田ひかりさんと結婚しているのですが、
すれ違いがあって、離婚してしまう、
という展開になるんですね。
小泉今日子さんがプロデュースのお芝居で、
こういう台本を書くんですよね。
岩松さんも相当ですよね。
これは単純に意地悪とは言えないのですが、
まあ普通ではないという言い方は出来ると思います。

どうやら窓の外に広がる空が、
風間さんのこれまでの人生を示している風景であるようなんですね。
その外の世界と室内とは繋がることはない筈なんですが、
途中で建築途中の塔の上に少女が出現し、
彼女が塔から飛び降りると、
風間さんの部屋の窓から中へと入り込み、
風間さんを挑発し誘惑するのです。

これをきっかけとして、
風間さんは隣の塔の建設差し止めの運動に協力するのですが、
結果として塔の工事は再開されてしまいます。
でも、隣の塔というのは、
要するに風間さんのいる部屋がある場所のことなんですね。
風間さんは自分の過去を変えようとして、
窓の向こうにある過去の世界に入り込むのですが、
それに失敗して老いた自分の現実に気付き、
愕然として終わるのです。

如何にも岩松さんらしい、
分かり難く、意地悪な世界ですが、
正直展開される人工的な世界に、
あまり馴染むことが出来ないままに終わってしまうのが、
少し残念な気はします。

個人的には「市ヶ尾の坂」のラストや、
「水の戯れ」のラストの衝撃的な美しさが、
一番の岩松さんの劇作の魅力だと思っているので、
最近の役柄も皆カタカナの、
敢えて非現実的で紙芝居的な設定の最近の作品には、
やや違和感は感じるのですが、
これもまた1つの別個の到達点に向けての、
長い試行錯誤の道程であるという気もするので、
今後も気合を入れつつ、
岩松さんの新作を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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BCGワクチンのCOVID-19後遺症への有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療や産業医活動などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
BCGの新型コロナ後遺症への有効性.jpg
Journal of Internal Mdicine誌に、
2022年5月22日ウェブ掲載された、
BCGワクチンを新型コロナウイルス感染症の後遺症に活用する、
という臨床試験の結果をまとめた論文です。

BCGワクチンというのは、
牛の結核菌由来の生ワクチンで、
結核の予防ワクチンとして開発されました。

そのまま他のワクチンのように接種すると、
皮膚が腫れあがったり水疱が出来るような副反応が強いので、
日本では独特の剣山のような器具を用いて、
複数の針を皮膚に押し当て、
判子を押すようにして注射する方法が開発され使用されています。
ただ、これは日本とその器具を輸入して使用している、
一部の国のみの接種法です。

日本では定期接種として、
1歳未満のお子さんの時期に接種が行われていますが、
こうした接種スケジュールも、
一部の結核の流行国以外では行われていません。

それはBCGを一旦打ってしまうと、
結核菌に対する身体の免疫が活性化されるので、
結核に実際に感染した際の診断が難しくなってしまうことと、
このワクチンの成人の結核の予防効果は、
充分に確認されていない、
という点がその主な理由です。

BCGワクチンは牛の結核菌を使用するという、
古い製法によるワクチンで副反応が強く、
その効果も現代の目で見るとそれほど高いものではないのです。
しかし、その後BCGを超える結核予防ワクチンが、
登場していないこともまた事実で、
そのためにやや消極的に使用されている、
というのが実際である訳です。

ところが…

BCGワクチンには、
結核予防以外に有効性があるのでは、
という見解が、
最近相次いで報告されるようになりました。

その幾つかは以前ブログでもご紹介しています。

複数の疫学研究において、
出生時にBCGワクチンを接種することにより、
子供の死亡リスクが減少する、
という報告が存在しています。
その後の解析によりこれは結核の予防効果のためではなく、
お子さんの時期の敗血症や呼吸器の感染症が、
トータルに減少したためと考えられています。

動物実験においても、
BCG接種がその後の死亡リスクを低下させ、
結核以外の細菌感染を予防するという結果が報告されています。

BCGはまた、
癌に対して非特異的免疫療法としても、
その効果が確認されています。
膀胱癌への補助的治療としてのBCGの効果は、
世界的に評価されている知見です。
更に疫学データにおいては、
出生時のBCGワクチンの接種が、
肺癌のリスクを低下させたという知見もあります。

それでは、
何故結核ワクチンのBCGが、
他の多くの感染症や癌に対して効果があるのでしょうか?

免疫には、
対象を選ばず相手を攻撃する自然免疫と、
相手に合わせて抗体を産生し、
次に同じ病原体の攻撃を受けた際には、
速やかに対応する獲得免疫という2種類があります。

これまでの研究により、
BCGは自然免疫の賦活による効果と、
獲得免疫の賦活による効果の、
両方があると想定されています。

最近になってBCGワクチンが注目されているのは、
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に対しても、
BCGワクチンには一定の予防効果があるのではないか、
という考え方があるからです。

この点については幾つかの臨床試験が施行されていて、
その一部はブログでご紹介したことがあります。

結果は若干の有効性が確認された、
というようなものもありますが、
トータルに見て新型コロナウイルス感染症の、
感染予防や重症化予防に、
BCGワクチンを推奨する、というほどの、
明確な有効性は確認されていないのが実際です。

今回の臨床研究は南アメリカの複数施設において、
新型コロナウイルス感染症に感染後の、
嗅覚障害と味覚障害の持続に与える、
BCGワクチン接種の効果を検証したものです。

新型コロナウイルス感染症の378名の患者を、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はBCGワクチンを皮内注射で施行し、
もう一方は偽の注射を施行して、
その後の経過を比較しています。

その結果、
6週間の時点での嗅覚障害の改善率は、
BCG接種群では83.1%であったのに対して、
偽注射群では68.7%となり、
同様に味覚障害の改善率も、
BCG接種群では81.2%、偽注射群では63.4%で、
いずれもBCGワクチン群で有意な改善が認められました。
BCG群では半年の時点での細胞性免疫の賦活があり、
より少ない量の抗体産生で、
新型コロナウイルスの中和が可能となるような効果が示唆されましたが、
こちらは有意な差ではありませんでした。

このように、
BCGワクチンの接種には、
細胞性免疫を賦活して、
多くのウイルス感染の予防に寄与するような効果のあることは、
ほぼ間違いがないのですが、
新型コロナウイルス感染症に限ってその有効性を見た時には、
単独でその使用を推奨するほどの、
有効性は確認されない、
という辺りが実際であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナワクチン4回目接種の有効性(イスラエルの短期データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ワクチン4回目接種の有効性.jpg
British Medical Journal誌に、
2022年5月24日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスワクチン4回目接種の有効性についての論文です。

日本でも高齢者などに対象を限定して、
4回目の新型コロナワクチン接種が予定されていますが、
ワクチン接種で先行しているイスラエルでは、
2021年年末より2022年初から、
最初は免疫不全の患者に、
それから60歳以上の高齢者や、
医療従事者など感染リスクの高い対象に限定して、
ファイザー・ビオンテック社製新型コロナワクチンの接種が、
施行されました。
3回目接種から4か月以降経過していることが条件です。

その有効性はどのようなものだったのでしょうか?

今回の検証では、
年齢が60歳以上の4回目接種の対象者で、
4回目接種を施行した27876名と、
3回目接種のみを施行した69623名の、
オミクロン株流行期の感染予防効果を比較しています。

その結果、
遺伝子検査で診断された新型コロナウイルス感染症の、
感染予防と重症化予防を併せた有効率は、
3回接種のみの場合と比較して、
4回目接種後3週間の時点では、
65.1%(95%CI:63.0から67.1)と算出されました。
ただ、その時点をピークとして有効率は低下し、
4回目接種後10週間の時点では、
22.0%(95%CI:4.9から36.1)まで低下していました。
一方で重症化予防効果については10週の時点でも、
72%を超える有効率を維持していました。

このように、
4回目接種は3回目接種と比較して、
感染予防効果については有効ではあるものの、
3回目までの接種と比較するとその維持期間は非常に短く、
3か月はもたずに低下してしまうようです。
その一方で重症化予防効果についてはより安定して持続していますが、
オミクロン株流行期の重症化率自体は非常に低いものなので、
矢張り今のワクチンを利用した4回目接種は、
重症化リスクの高い対象に限って、
施行することが妥当であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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オミクロン株とデルタ株の超過死亡比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
オミクロン株とデルタ株の超過死亡比較.jpg
JAMA誌に2022年5月20日ウェブ掲載された、
オミクロン株とデルタ株の超過死亡を比較したレターです。

2021年には重症化率が高いとされるデルタ株の感染拡大があり、
それが2021年暮れから2022年になり、
オミクロン株主体の感染にシフトしました。

一般的にはオミクロン株の感染は軽症である反面、
その感染力は非常に強く、
特に小児を含む若年者への感染拡大が特徴とされました。
一方で、いやいやオミクロン株の重症化も少なくはない、
と言う意見や、
後遺症と称されるような、
残存障害の比率は高い、というような意見もあります。

それでは、
デルタ株とオミクロン株の死亡率には、
実際にどのような違いがあるのでしょうか?

今回のデータはアメリカ、
マサチューセッツ州の疫学データを解析したもので、
デルタ株流行期とオミクロン株流行期の死亡数を、
通常の時期の死亡数と比較して、
その差を超過死亡として、
間接的にその死亡率を比較するという手法です。

その結果、
23週間のデルタ株の流行期に、
超過死亡は1975件と算出された一方、
8週間のオミクロン株の流行期の超過死亡は、
2294件と推計されました。
その比較により、
1週間当たりの超過死亡率は、
デルタ株に比較してオミクロン株の流行期には、
3.34倍(95%CI:3.14から3.54)有意に増加していたと算出されました。

これは勿論2020年の最初の新型コロナの流行時期には、
遥かに高い超過死亡が確認されているのですが、
その後の経過の中でみると、
デルタ株の流行期より、
むしろオミクロン株の流行期の方が、
新型コロナの影響で死亡する人の比率は、
数倍多い可能性があるというちょっと意外な結果です。

これがデータの取られたアメリカの一地域に限った現象であるのか、
それとも日本を含めてより大きな範囲で、
実際にはそうした傾向があるのかはまだ分かりませんが、
国内を含めてそうした検証は、
是非行われるべきではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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心血管疾患二次予防における地中海ダイエットの有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
心血管疾患二次予防における地中海ダイエットの有効性.jpg
Lancet誌に2022年5月14日掲載された、
地中海ダイエットの、
心血管疾患二次予防における有効性についての論文です。

地中海ダイエット(Mediterranean Diet)というのは、
ギリシャなど地中海地方の伝統的な食事パターンのことで、
その内容は必ずしも報告や研究で一致している訳ではありませんが、
ナッツやオリーブオイルを多く摂り、
野菜や果物、魚を多く摂り、
赤身肉な加工肉はあまり摂らない、
というような特徴は一定しています。

この地中海ダイエットに、
心血管疾患を予防する効果があり、
生命予後にも良い影響を与えるということは、
多くの精度の高い臨床試験や疫学データにおいて、
ほぼ実証されている事実です。

ただ、心血管疾患の再発予防効果について、
実証的に検証したような精度の高い臨床データは、
これまでにあまり存在していませんでした。

今回の臨床試験はスペインの単独施設において、
冠動脈疾患のある1002名を登録してくじ引きで2つの群に分けると、
一方は地中海ダイエットを栄養士が指導し、
もう一方は脂質のみを総カロリーの30%未満に制限して、
中間値で7年の経過観察を施行しています。

その結果、
低脂肪食と比較して地中海ダイエットは、
関連する因子を補正した上での心血管疾患リスクを、
0.719から0.753倍有意に低下させていました。
年間1000人当たりの発症率は、
地中海ダイエット群が28.1件に対して、
低脂肪食群が37.7件でした。

このように、
心血管疾患の再発予防効果が、
食事の脂肪は制限せずにその組成を変えることに力点を置いた、
地中海ダイエットにおいてより顕著であったことは、
大変興味深く、
今後地中海ダイエットのうちのどような成分が、
そうした健康影響に結び付いているのか、
より詳細な検証に期待したいと思います。

食事療養のトレンドは、
脂質制限から脂質を充分に摂った上でその組成に留意する、
という方向に変わって来ていることは、
間違いがないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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アスピリンの心血管疾患一次予防の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アスピリンの一次予防の有効性.jpg
JAMA誌に2022年4月26日掲載された、
アスピリンの一次予防の有効性についての提言です。

1日80から100mg程度のアスピリンを継続的に飲むことに、
心血管疾患や腺癌というタイプの癌の、
予防効果のあることは、
多くの疫学データや精度の高い臨床試験においても、
実証されている事実です。

ただ、その一方でアスピリンには出血系の合併症があり、
使用を継続することで、
消化管出血や脳出血などのリスクは増加します。

従って、アスピリンを服用することが、
その人にとって有益であるかどうかは、
その作用と有害事象とのバランスに掛かっています。

その有効性は一度そうした病気になった人の、
再発予防効果としては確立されていますが、
まだ病気にはなっていない場合の、
一次予防効果については、
どのような対象者を選ぶかによっても、
その結果は様々で統一した見解とはなっていません。

2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
糖尿病の患者さんにおけるアスピリンの一次予防効果を検証した論文では、
アスピリンを使用することにより、
心血管疾患は12%減少し、
その一方で出血系の合併症は29%増加していました。

2019年のJAMA誌に掲載された、
システマティック・レビューとメタ解析の論文では、
これまでの13の介入試験のトータル164225名のデータをまとめて解析した結果として、
アスピリンは心血管疾患のリスクを相対リスクで11%(95%CI: 0.84から0.95)、
絶対リスクで0.38%(95%CI: 0.20から0.55)、
それぞれ有意に低下させていました。
これは265人にアスピリンを使用することで、
1人の心血管疾患を予防出来る、
という確率と推計されます。

一方でアスピリンを使用することによる、
重篤な出血系合併症のリスクは、
相対リスクで1.43倍(95%CI: 1.30から1.56)、
絶対リスクで0.47%(95%CI: 0.34から0.62)、
それぞれ有意に増加していました。
これは210名にアスピリンを使用すると、
1人が出血系の合併症を発症する、
というくらいの確率と推計されます。

こうした予防効果と有害事象のバランスを、
どのように考えれば良いのでしょうか?

今回の提言は、
米国予防医学専門委員会(USPSTF)によるもので、
これまでの提言より一歩踏み込んで、
年齢が60歳以上での心血管疾患の一次予防目的のアスピリン使用開始は、
出血系合併症のリスクの方が、
その予防効果を上回るという判断から、
推奨はされないとしています。

また、40歳から59歳での同様のアスピリン使用についても、
その後の心血管疾患リスクが高い対象者に絞り、
個別に慎重に判断されるべきとしています。

アスピリンは一時万能薬のように言われたこともあり、
全ての中高年に推奨されるようなニュアンスで、
過大に評価されたこともありました。
今でも心血管疾患の二次予防(再発予防)については、
その有効性は揺らぐものではありませんが、
まだ病気にはなっていない段階での発症予防(一次予防)については、
その有効性と比較して出血系合併症のリスクは、
当初想定していたより高いものなので、
その使用は今後はより慎重に検討する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「おちょこの傘持つメリー・ポピンズ」(唐組・第68回公演) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
おちょこポスター.jpg
唐組の春公演が新宿の花園神社で上演されています。
大雨の日に出掛けました。

演目は「おちょこの傘持つメリー・ポピンズ」、
これは1976年に状況劇場で初演された長い1幕劇で、
状況劇場の作品としては、
家庭劇に近いような味わいの作品です。
舞台も傘屋から動きませんし、
内容も一夜の出来事だけを描いていて、
幻想的な場面や時間が移動するような仕掛けもありません。

キャストも傘屋のおちょこと檜垣という男、
そしてヒロインの3人がメインで展開されます。

この作品は1980年代に一度状況劇場で再演され、
その時は石橋蓮司さんが客演していました。
その芝居は実際に観ています。

今回の上演は唐組としては初めてのもので、
おちょこを久保井研さん、ヒロインを藤井由紀さん、
檜垣を稲荷卓央さんという座組でした。

ほぼ2時間の1幕劇ですが、
今回は途中1時間くらいのところで20分の休憩を入れていました。

前回の上演時には休憩はなかったと思います。
ただ、矢張りテントで1幕2時間というのはかなりきついので、
この判断は正解だったという気はします。

今回も唐戯曲の何たるかを知り尽くした、
久保井さんとメインキャストの演技と演出が的確で素晴らしく、
唐組らしい「おちょこ」になっていたと思います。

初演がどうだったのかは分からないのですが、
1980年代の再演では、
ラストは李礼仙さんが傘を持って、
テントの外の空に宙乗りするのですね。
ただ、戯曲はおちょこと瀕死の檜垣が空を飛ぶ、
というものなので、
それをヒロインの宙乗りに変えてしまうのは、
如何なものかな、という気はしました。
今回は戯曲通りにおちょこがクレーンからのワイヤーで、
宙乗りをするラストでしたから、
これは良かったと思いました。

ただ、今回の芝居では、
現実と狂気とを往還する、
ヒロインの感情のうねりがポイントなのですが、
藤井由紀さんの芝居には、
そうしたパッションは希薄なので、
正気の部分と狂気の部分がブツ切れで交互に出て来る、
というような感じがあって、
物語がスムースに流れてゆかない、
というきらいはありました。

前回の「ビニールの城」は絶品で、
「さすらいのジェニー」も素晴らしかったのですが、
藤井さんは緑魔子さんの役柄にはピタリとフィットするのですが、
李礼仙さんの、
特にパッションと狂気が前面に出たような芝居は、
基本的に合わないのかも知れません。

また、前回のおちょこは唐先生でしたから、
今回久保井さんが演じるのは妥当なラインではあるのですが、
そもそも純朴な少年に近い役柄なので、
こちらもちょっと無理があるなあ、
というようには感じました。

初演の録音などを聞くと、
基本的に地味な芝居に、
かなり強烈な音響や演技を付けて、
強引にメリハリをつけているような感じがあるのですね。

今回の上演はそれをもっと戯曲に即した形で、
自然な演技と演出でリニューアルしているのですが、
もともとヒロインの感情のうねりに、
かなり強引なところがあるので、
過剰な演出をしないと、
却って不自然に見えてしまうという感じがありました。

そういうところが唐先生の芝居は難しいのですね。

ただ、久保井さんも勿論そうしたことは分かった上で、
今回はこれまでとは別の形の「おちょこ」を、
見せてくれたのではないかと思います。

いずれにしても、
唐戯曲の神髄を緻密な手さばきで再構成してくれる、
唐組の芝居はいつも刺激的で素晴らしく、
今後も楽しみにテントには通いたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「流浪の月」(李相日監督映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
流浪の月.jpg
凪良ゆうさんによるベストセラー小説で、
本屋大賞受賞作でもある「流浪の月」が、
「悪人」などの李相日監督により映画化され今公開中です。

世間からは、
ロリコン男と監禁された被害者の少女、
というレッテルを張られた2人が、
絶望的に強く惹かれ合うという物語で、
原作は愛や恋や血縁という結びつきではない、
それでいて強く惹かれ合う2人の、
新しい関係性を描いた作品ですが、
映画版は矢張り2人の結びつきは「愛」である、
というニュアンスの強いものになっています。

これはまあ、結構好みの分かれる映画だと思います。

昔の東欧やロシアの映画に近いようなタッチなんですね。
僕が一番似ているなと思ったのはタルコフスキーで、
執拗に登場する流れる水の表現とか、
草や光の感じ、
ラス前で母親と息子が対峙するところなど、
「鏡」を強く想起させるような感じがありました。

ただ、タルコフスキーの神秘主義はないんですね。
あるのは徹底した象徴主義。
李さんの映画を全て観ている訳ではないのですが、
「悪人」と比べると「怒り」という映画は、
かなり象徴性が強くなっている表現ですよね。
今回の映画はそれが更に強くなっているという印象で、
台詞や説明は最小限度に切り詰められ、
2人の主人公の間にあるものとその心理の揺れを、
徹底して映像化することに力が注がれている作品です。

僕はタルコフスキーは大好きなので、
この映画もとても好きです。

原作を読んでから映画を観たのですが、
この作品は意図的に省略が多いので、
原作を先に読むことをお勧めします。
そうでないと、意味が分からないところが多いと思います。

たとえば、半ばくらいのところで、
急に広瀬すずさん演じる主人公が、
松坂桃李さん演じる青年の隣に住んでいるんですね。
これは原作では恋人から暴力を受けて、
職場の友人に相談して、
夜逃げ屋を頼んで密かに引っ越しをするんですね。
それでなるべく見つからない場所をと思って引っ越し先を探すのですが、
松坂さんのマンションの隣の部屋が空いているのを、
不動産屋さんで見つけてしまうと、
もうどうにも止められなくなって、
これじゃDV男にバレると理性では分かっていながら、
衝動的に部屋を借りてしまうんですね。
それで最初は松坂さんに隠れるようにして暮らしているのですが、
これも衝動的に様子を窺いたくなって、
それであの映画のベランダのシーンになるのです。

その説明を全て、
映画はバッサリ切っているんですね。
多分撮影はしていた可能性はあるのですが、
編集段階では全て切ってしまっているのです。

それから柄本明さんが、
アンティークショップの主人として出て来るのですが、
1シーンだけの出演で、
何故出演しているのか意味不明なんですね。
これは原作では松坂さんが店を閉めて、
ビルも予定通りで取り壊しになり、
主人公2人もその地を離れるというところで、
3人で話をするところがあるんですね。
その場面のために柄本明さんの役はある、
と言ってもいいくらいなのですが、
その場面をまたバッサリ切っているんですね。
多分これは撮影されたのだと思うのですね。
そうでないと柄本さんをキャスティングはしない、
というように思うからです。
でも、監督は後半を主人公2人だけの場面で、
構成したくなったのだと思うんですね。
それでその場面をカットしたのだと思うのですが、
柄本さんの場面を残さない訳にはいかないので、
前半のみを残して、
それが結果として不自然な登場となってしまったのだと思います。

そんな訳でこの映画は、
2人の主人公の10年以上の間隔を置いた2回の逃避行を、
徹底して象徴的に描くことのために、
ストーリーの流れや辻褄など多くの部分を犠牲にして成り立っている、
かなり特異な作品で、
その分観客を選ぶようなところがあるのですが、
それをしっかり吞み込んだ上でスクリーンに対峙すれば、
その象徴的な表現の純度は非常に高く、
特に中段暴行を受けた広瀬さんが松本の街を彷徨い、
子供返りして松坂さんの元を訪れると、
それが子供の時の最初の出逢いと、
同じ構図になって現れるところや、
ラストの生死の狭間を潜り抜けるような、
道行にも似た旅立ちの場面の流麗さは、
タルコフスキー作品にも引けを取らない映画表現に、
昇華していたように思います。

役者は広瀬さんの体当たり的な演技も、
最早円熟の芸に達したような松坂さんの受けのみの芝居も素晴らしく、
趣里さんも良い仕事をしていたと思います。
横浜流星さんは正直損な役回りで、
キャスティングする側の悪意のようなものを少し感じました。
この役は他の役者さんでも良かったのではないかしら、
正直そんな風に感じました。

数日で一生を駆け抜けるような、
絶望的で燃え尽きるような愛、
2人以外の全ては敵で、
ひたすら愛し合うしか術はない、
みたいな映画が僕はとても好きで、
「ドクトル・ジバゴ」がそうでしょ。
「リービング・ラスベガス」もそんな映画だったですよね。
この作品は原作はハッピーエンドで、
映画版もそれを匂わせてはいるんですが、
基本的にはこうした「燃え尽き系」の作品ですよね。

それもね、最も官能的な瞬間が、
唇に付いたケチャップを拭うだけの行為なんですよね。
それがね、何か物凄く切ないですよね。
原作にも同じ表現はあるのですが、
ハッピーエンドですし、
そんなにそのこと自体が切なくはないのですね。
でも映画は切ないよね。
この青年の心の中の最大の高揚と官能が、
その些細な瞬間にしかないというところがね、
とても悲しくて切なくて、
それでいてとても愛おしく感じるのです。

そんな訳で、
一生心に残るような映画と思う人がいる一方、
何だこりゃ、ダラダラした描写が続くだけで、
訳も分からんし眠くなったぞ、
という人も沢山いるだろう映画なので、
これは合うな、と思う方のみ映画館に足をお運びください。
多分原作は先に読まないとストーリーは良く分かりません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症に対するアンドロゲン抑制療法の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
朝から保育園の健診があり、
そこから老人ホームの診療に廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19に対するアンドロゲン抑制療法.jpg
JAMA Network Open誌に、
2022年4月19日ウェブ掲載された、
男性ホルモンを抑制することの、
新型コロナウイルス感染症への有効性についての論文です。

新型コロナウイルス感染症の治療には、
多くの薬剤が使用されていますが、
一定の有効性はあるものの、
決定打のような治療法は開発されていません。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、
人間の身体の細胞にある、
ACE2という受容体に結合することにより感染します。
その後にもう1つのステップがあり、
コロナウイルスに特徴的な表面の突起(スパイク)が、
感染細胞にあるセリンプロテアーゼ(TMPRSS2)という酵素により、
変化(プライミング)を受け、
それにより細胞内に侵入することが出来ると考えられています。

このACE2とTMPRSS2と同じように、
人間の肺の上皮細胞に発現しているのが、
男性ホルモンであるアンドロゲンの受容体です。

アンドロゲンはTMPRSS2と相互に刺激する関係にあり、
アンドロゲンによりTMPRSS2の発現は増加します。

この知見からは、
新型コロナウイルス感染症の罹患時に、
アンドロゲンを抑制することによって、
その予後が改善するという可能性が示唆されます。

そこで今回の研究ではアメリカにおいて、
18歳以上で新型コロナウイルス感染症に罹患し、
人工呼吸器は必要ないけれど、入院治療の適応と診断された男性患者を、
72時間以内にくじ引きで2つの群に分けると、
一方は通常の治療に上乗せして、
アンドロゲンを抑制するデガレリクスを使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
その予後を比較検証しています。

このデガレリクスは、
前立腺癌の治療薬として日本でも使用されている薬剤で、
ゴナドトロピンを抑制することにより、
強力にアンドロゲンを低下させる注射薬で、
今回は240㎎を皮下注射で使用しています。

試験は早期に中止されていますが、
96名の患者が解析されていて、
そのうちの62名はデガレリクス群に、
34名は偽薬群に割り付けられています。
その結果、治療開始後15日の時点で、
生命予後を含む患者の予後には、
明確な差は認められませんでした。

今回の臨床試験は大変興味深い試みでしたが、
少なくとも明確な差は両群で認められず、
現時点で推奨される治療とは言えません。
ただ、例数が少ないなど限界もあるため、
今後こうした治療の試みが、
意外に奏功するような報告が得られるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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夜勤を含む交代勤務と健康リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
シフト制勤務と生命予後.jpg
JAMA Network Open誌に、
2022年5月4日ウェブ掲載された、
夜勤を含む交代制勤務が健康に与える影響についての論文です。

夜勤と昼勤、早出、遅出などを不規則に繰り返す、
交代制勤務は、
医学的には健康面での悪影響が指摘されています。

夜勤を含む交代制勤務は、
正常なホルモンなどによる日内リズムを乱し、
睡眠障害や他の精神疾患、
認知機能低下、慢性内臓疾患などのリスクを高め、
生命予後にも悪影響を与えることが、
これまでの疫学研究などにより報告されています。
WHOの専門部会は、
発癌のリスクにもなり得るという報告もしています。

ただ、そうしたデータの多くは比較的短期間のもので、
長期の夜勤を含む交代勤務が、
その後の健康にどのような影響を与えるのかについては、
データは限られているのが実際です。

今回の研究はこうした交代勤務の職種として代表格でもある、
看護師の大規模出来学データを活用して、
夜勤を含む交代勤務の長期の影響を検証しています。

対象は46318名の女性看護師で、
24年という長期の健康観察を施行し、
70歳の時点で明確な記憶障害や身体障害がなく、
多くの慢性病にも罹患していない状態を健康な加齢として、
その頻度を比較検証しています。

その結果、
夜勤を含む交代勤務をしていない看護師に比較して、
10年以上そうした勤務をしていると、
健康な加齢の比率が21%(95%CI:0.69から0.91)有意に低下していました
それより短い勤務でもそうした傾向は認められましたが、
統計的には有意ではありませんでした。
ここで認知機能低下も健康な加齢の除外要素として検討すると、
10年以上の夜勤を含む交代勤務は、
健康な加齢の比率を27%(95%CI:0.60から0.89)、
有意に低下させていました。

このように、
短期的な影響ばかりでなく、
夜勤を含む交代勤務は、
健康長寿の阻害要因ともなっている可能性があり、
今後こうした勤務をどのように考え、
その健康への悪影響を、
どのようにして修正するべきなのか、
より深い議論が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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