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妊娠中の高血圧の治療目標値と予後 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
妊娠高血圧の目標値.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2022年4月2日掲載された、
妊娠中の高血圧の治療目標値についての論文です。

高血圧の治療目標値は、
最近ではより低くなる傾向にあります。

ただ、幾つかの例外はあり、
そのうちの1つは妊娠中の場合です。

通常妊娠中の高血圧で積極的治療の適応となるのは、
血圧が収縮期160mmHg以上もしくは拡張期100mmHg以上の場合です。

それより低い目標値で降圧治療を施行すると、
胎児への血流量が減り、
それが通常の月齢の標準より小さな、
SGA児(在胎不当過小児)の原因になるとする知見があるからです。

ただ、そうしたことはないとする報告もあり、
まだ結論には至っていません。

そこで今回の研究はアメリカの複数施設において、
妊娠20週以前に収縮期血圧が140mmHg以上か、
拡張期血圧が90mmHg以上のどちらかかもしくは両方を、
2回以上確認した比較的軽症の高血圧症の妊婦、
トータル2408名をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は140/90未満にすることを目標として、
降圧剤を使用する積極的治療を行い、
もう一方は収縮期が160以上もしくは拡張期が105以上になるまで、
薬物治療は行わずに様子をみる通常治療を施行して、
その後の妊娠経過と胎児の予後を比較しています。
使用された降圧剤は、
αβブロッカーのラベタゾールと、
カルシウム拮抗薬のニフェジピンERです。

その結果、
早産や胎児死亡、重度の妊娠高血圧腎症、胎盤早期剥離を併せたリスクは、
通常降圧目標で37.0%に対して、
積極治療群では30.2%で、
積極的降圧治療によりそのリスクは18%(95%CI:0.74から0.92)有意に低下していました。

一方で危惧されたSGA児のリスクには、
両群で有意な差は認められませんでした。

合併症毎のリスクをみると、
重度の妊娠高血圧腎症のリスクは21%(95%CI:0.69から0.89)、
早産のリスクは13%(95%CI:0.77から0.99)、
それぞれ有意に低下していました。

このように今回の検証においては、
通常の血圧コントロールに対して、
妊娠中に140/90 未満を目指して血圧コントロールを施行すると、
母体と胎児の予後の改善に、
繋がる可能性が高いと考えられました。

今後ガイドラインなどにも、
大きな影響を与える知見であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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