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健康な生活習慣と認知症リスクとの関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ライフスタイルと認知症.jpg
British Medical Journal誌に、
2022年4月13日ウェブ掲載された、
健康な生活習慣と認知症との関連についての論文です。

バランスの良い食生活や運動習慣、禁煙などの、
健康的な生活習慣が、
多くの生活習慣病のリスクを減らし、
健康寿命を延長させることについては、
これまでに多くの疫学データや臨床研究が存在しています。

認知症についても、
アルツハイマー型認知症のリスクを、
60%低下させるというデータも報告されています。

ただ、ここで1つの疑問があります。

認知症は年齢と共に増加します。
健康な生活習慣で寿命が延長しても、
認知症のリスクは減少するのでしょうか?
寿命が延長することによって、
むしろ認知症は増加するという可能性もあるのではないでしょうか?

今回の研究ではアメリカで施行された、
高齢者の疫学研究のデータを活用して、
この疑問の検証を行っています。

65歳以上の2449名の男女を長期間観察し、
健康的な5つの健康習慣と、
認知症リスクとの関連を比較検証しています。

この場合の健康的な生活習慣というのは、
地中海ダイエットやDASH食に準じた食事、
適度な運動習慣、節酒、禁煙、
読書、美術鑑賞、ゲームなどの知的活動習慣の5つです。

観察の結果、
65歳の女性で4つ以上の健康な生活習慣を維持している人の平均余命は、
24.2年(95%CI:22.8から25.5)で、
1つ以下の生活習慣しか維持していない場合の平均余命より3.1年長くなっていました。
21.1年(95%CI:19.5から22.4)

この平均余命のうち、
4つ以上の健康習慣を維持している女性は、
10.8%に当たる2.6年間アルツハイマー型認知症に罹患すると推定されますが、
それが1つ以下の生活習慣しか維持していないと、
19.3%に当たる4.1年に延長していました。

65歳の女性が認知症に罹患することなく送れる平均余命は、
4つ以上の生活習慣を維持している場合には、
21.5年(95%CI:20.0から22.7)ですが、
1つ以下の生活習慣しか維持していない場合には、
17.0年(95%CI:15.5 から18.3)に減少していました。

同様に男性においても…

65歳の男性で4つ以上の健康な生活習慣を維持している人の平均余命は、
23.1年(95%CI:21.4から25.6)で、
1つ以下の生活習慣しか維持していない場合の平均余命より5.7年長くなっていました。
17.4年(95%CI:15.8から20.1)

この平均余命のうち、
4つ以上の健康習慣を維持している男性は、
6.1%に当たる1.4年間アルツハイマー型認知症に罹患すると推定されますが、
それが1つ以下の生活習慣しか維持していないと、
12.0%に当たる2.1年に延長していました。

65歳の男性が認知症に罹患することなく送れる平均余命は、
4つ以上の生活習慣を維持している場合には、
21.7年(95%CI:19.7から24.9)ですが、
1つ以下の生活習慣しか維持していない場合には、
15.3年(95%CI:13.4 から19.1)に減少していました。

このように、健康に良い生活習慣を多く維持していると、
平均余命が長くなるのみならず、
その間に認知症に罹患するリスクを抑制され、
結果として認知症なく送れる寿命が延長するということになります。

認知症予防に、
こうした生活習慣に勝る方法はなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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