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東京都梯子を外す [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

今日は休みですが仕事の話題です。

8月14日にこんなニュースがありました。
職場や会食での感染 周囲への濃厚接触者調査は行わず 東京都 2021年8月14日 11時18分

新型コロナウイルスの急激な感染拡大で保健所の業務がひっ迫しているため、東京都は、保健所が行う感染者の濃厚接触者などの調査の縮小を決めたことが関係者への取材で分かりました。各保健所は患者の健康管理により重点を置くとしています。

急激な感染拡大に伴い、入院調整が難航して自宅待機の患者が増え続けていて多くの保健所ではその対応に追われるなど、業務がひっ迫しています。 この状況を受けて、東京都は、各保健所では患者の病状や重症化リスクを把握して、速やかに適切な医療につなげることに重点を置き、濃厚接触者や感染経路を調べる積極的疫学調査は「優先度を考慮して効果的かつ効率的に行う」とした文書を今月10日付けで都内の保健所宛てに出していたことが分かりました。 都の関係者によりますと、積極的疫学調査の対象は、感染者と同居する家族のほか、学校、医療機関、それに高齢者施設などにとどめ、職場や会食などで感染した場合には、周囲への調査は行わないということです。 積極的疫学調査は、感染の可能性がある人に自宅で待機してもらうなど、大きなクラスターを作らない対策に役立てられてきましたが、感染の拡大に伴う業務のひっ迫で埼玉県も縮小を決めています。 こうした対応について東京の中央区保健所の吉川秀夫健康推進課長は「自宅療養で呼吸困難を訴える患者への対応で手一杯で、やむをえない判断だと思う」と話していました。

これは実際東京都からの文書が、
医師会経由で8月10日より前に出ていたと思います。

ただ、それよりかなり前の時期から、
職場などの濃厚接触者の調査や認定については、
現実的にはあまり行なわれていなかったのですね。

たとえば今年の3月くらいの時期だったと思いますが、
僕が産業医をしている会社で感染者が出たのですが、
隣の席で一緒に働いていた社員でも、
保健所から聞き取りや連絡がある、ということはなく、
1時間を超えるような会議が、
密閉度の高い会議室であって、
幾らマスクはしていたと言っても、
感染リスクは高いと想定される状況でも、
保健所からの検査の指示はありませんでした。

一方で同時期に近隣の小学校で、
学童の感染者が確認された時には、
同学年の生徒全員と教職員全員に、
濃厚接触者としてRT-PCR検査が公費で施行されました。

この時点で既に、
保健所は濃厚接触者の検査を、
学校などにかなり絞り込んでいる、
ということが分かります。

これは実際問題として、
保健所の能力のキャパを超えている、
ということが最大の理由で、
それに加えてこれだけ感染が市中に拡大してしまうと、
濃厚接触者をトレースして感染者を特定しても、
それだけでは感染自体の抑止には繋がらない、
という科学的知見にもよっています。

その代わりに職場には、
産業医や医療機関と提携して、
積極的に濃厚接触者を独自に認定し、
その検査を行なうことが同時に求められています。

これまでは、無症状の濃厚接触者の認定は、
敢くまで保健所がするということになっていたのですね。
勝手に医療機関が公費で検査することは許されてはいなかったのです。
クリニックに「感染者と接触したので心配」と受診される方がいて、
僕がこれは濃厚接触者だと判断しても、
保健所がその認定をするまでは、
公費での検査をすることは出来なかったのですね。

それが今回掌返しとなったのです。

保健所は一切濃厚接触者の職場などでの認定をしないので、
それは職場や産業医、市囲の医療機関で勝手にやってくれ、
ということなのです。

これはやむを得ない変更ではあると思うのですが、
その段取りはあまりに乱暴だと思います。

実際には数ヶ月前から、
そうした状況はあったにも関わらず、
あまり明確な方針転換の説明はなく、
今回はただのファックス1枚で、
関係各所に唐突に連絡がされているからです。

芸能人やセレブとされる方が、
最近とても沢山感染されていますよね。

これ、以前であれば、
「職場に濃厚接触者と認定された人はいませんでした」
というような報道があるのですが、
今は全くそうした報道はありません。

これは要するに保健所は今は、
職場の濃厚接触者について、
何ら調査はしていない、という意味なのですね。

でも、実際には職場や職場の産業医には、
その認定の義務はあるので、
積極的に認定をして、
遺伝子検査を行なわなければいけない筈です。

それがどの程度行なわれていて、
どのような結果になっているのかについては、
テレビ局などは報告する義務があるように思いますが、
そうしたことは行なわれている形跡はありません。

仕方のないこととは言え、
こうした濃厚接触者の認定が、
現場に任されてしまうと、
熱心に検査をする職場もあれば、
殆ど手を付けない現場もある、
ということになり、
殆どそれによる感染のコントロールは見込めない、
ということになります。

家族内感染の抑止については、
こちらも早期の隔離が困難な状況で、
家族個人に任されているという状況です。

つまりは、これまで行なわれていた、
感染拡大抑止のための対策が、
今は全て機能していないのが実際なのです。

今後この状況をどう改善すれば良いのか、
名案などすぐ浮かぶ訳もありませんが、
少しずつ感染が収束に向かうことを信じつつ、
検査と診療を個人的には地道に続けるしかないのかな、
というように思っています。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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