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小児の年齢と新型コロナウイルス家族内感染リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
新型コロナウイルス感染症の小児感染伝播.jpg
JAMA Pediatrics誌に2021年8月16日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の、
小児への家族内感染リスクを年齢毎に比較した論文です。

新型コロナウイルス感染症は大人と比較して、
小児の感染事例が少なく、重症化も少ない、
という特徴が当初から認められていました。

欧米ではロックダウンが何度も行なわれましたが、
これは結果的に家族内以外の感染機会を減少させる、
という政策でした。

そこに一定の有効性があったのは、
家族内の小児への感染が、
それほど高い頻度では起こらなかった点も、
大きかったように思われます。

パンデミックの初期には学校は休校となりましたが、
その後のロックダウンでは、
概ね学校はそのまま通学を可能とすることが通常でした。

これも学校や保育園などでの、
子供同士の感染は稀にしか起こらない、
ということが想定されていたからです。

この見解は今でも基本的には変わっていませんが、
変異株特にデルタ株の流行以降、
日本においても明らかに小児の感染事例は増えており、
保育園などの集団感染事例も多く報告されています。

それでは、小児の年齢毎の感染リスクには、
どのような違いがあるのでしょうか?

今回の研究はカナダのオンタリオ州において、
18歳未満の新型コロナウイルス感染症の感染者が発生した家族を登録し、
そこから17歳未満の小児への家族内感染のリスクを、
その年齢毎に比較検証しています。
研究は2020年6月1日から12月31日までの間に施行されていますから、
まだ変異株が主体のものではないと思います。

トータルで6280の感染者が発生した家族が登録され、
そのうちの27.3%に当たる1717家族で家族内の二次感染が発症していました。
ここで14から17歳の小児と比較して、
9から13歳の年齢層では家族内で感染するリスクには、
有意な差はありませんでしたが、
4から8歳の感染リスクは1.40倍(95%CI:1.18から1.67)、
0から3歳の感染リスクは最も高く1.43倍(95%CI:1.17から1.75)、
有意に増加していました。

このように、
トータルな小児の家族内感染リスクは、
高いものではありませんが、
年齢で見ると0から3歳の低年齢で、
最も高いものになっていました。

現状日本で流行の主体となっているデルタ株は、
今回のデータより感染力が高いと想定され、
クリニックで経験した事例でも、
多くのケースで家族全員の感染が認められています。

今後危惧されているのは、
小さなお子さんへの感染が拡大して、
保育園や学校での集団感染に結び付く事態で、
今後慎重にその兆候を注視する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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