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抗体カクテル療法の新型コロナウイルス家族内感染予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
抗体カクテル療法の家族内感染予防効果.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年8月4日ウェブ掲載された、
日本でも最近臨床導入された、
抗体カクテル療法の新しい使用法についての論文です。

抗体カクテル療法というのは、
カシリビマブとイムデビマブという、
新型コロナウイルスの2種類の中和抗体を、
注射薬として使用するもので、
これまでの外来患者に対する臨床試験において、
総死亡や入院のリスクを約70%低下させ、
ウイルス量を速やかに減らし、
症状持続期間を短縮させる効果が確認されています。

現行日本においては、
国の管理のもとに応急的な使用が行なわれ、
入院患者に限ってその使用が許可されています。
(8 月13日から宿泊療養にも適応拡大となったようです)

ただ、そもそも抗体カクテル療法は、
病気の初期に使用してこそ意味のあるもので、
感染の拡大や重症化の予防がその目的ですから、
今の日本の使用方法は、
あまりこの薬の特徴に適合したものとは思えません。

感染の蔓延地域においては、
重症化して初めて入院になることが多いので、
その時点ではもう、
抗体カクテル療法は手遅れの可能性が高いからです。
今後宿泊療養者にどのように使用されるのか、
その経緯を注視する必要がありそうです。

今回の臨床試験はアメリカとルーマニア、モルドバの複数施設において、
新型コロナウイルス感染症の患者と、
接触してから96時間以内の家族1505名を登録し、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は抗体カクテルを1回の皮下注射で投与し、
もう一方は偽薬を同じように投与して、
28日の時点までの予防効果を比較検証しています。

つまり、実際に感染した患者さんに使用するのではなく、
家族などの濃厚接触者に使用して、
家族内感染予防効果を検証しているのです。

抗体カクテルは静脈注射の用量と同じで、
2種類の抗体がそれぞれ600mgですが、
それを静脈注射ではなく皮下注射で投与している点がポイントです。
これであれば、非常に簡単に使用が可能であるからです。

その結果、
抗体カクテルを使用した753名のうち、
有症状の感染を来たしたのは1.5%に当たる11名で、
偽薬を使用した752名のうち有症状感染者は、
7.8%に当たる59名でした。
抗体カクテル療法の家族内有症状感染予防効果は、
81.4%と算出されました。

RT-PCR検査のみが陽性化した、
無症状感染を含めると、
そのトータルな家族内感染予防効果は66.4%でした。

そして、抗体カクテル療法を受けて有症状感染を来した患者では、
ウイルス量は少なく、
症状の持続期間は有意に短縮していました。

正直もう少し強い予防効果が、
期待されるところではあります。
そもそも今回の対象者では、
偽薬での感染率もかなり低く、
感染力自体がそれほど高いとは思えないからです。
ただ、ここまで明確な家族内感染の予防効果が、
確認された薬剤が他にないことも確かで、
今後この抗体カクテル療法が、
最も有効に活用されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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