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新型コロナウイルス感染症と心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
新型コロナウイルス感染症と心血管疾患リスク.jpg
Lancet誌に2021年7月29日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症と心血管疾患との、
関連についての論文です。

新型コロナウイルス感染症は、
当初は重症肺炎を来す病気という認識でしたが、
その後全身の血管に炎症や血栓を来すような、
血管の病気という認識に変わりました。

急性心筋梗塞や脳梗塞(虚血性梗塞)は、
この感染症の重症化のリスク因子であると共に、
この感染症の予後を左右する、
重要な合併症でもあるのです。

今回の検証はスウェーデンにおいて、
86742名の新型コロナウイルス感染症の患者を、
感染前後とそれ以外の時期との比較で検証した方法と、
348481名の感染していないコントロールと比較した方法とで、
感染から4週間程度の期間における、
心筋梗塞と脳梗塞の発症リスクを比較検証しているものです。
検証期間はまた、感染症状出現当日を含む場合と、
含まない場合とに分けて解析を行なっています。

その全ての検証において、
新型コロナウイルス発症から特に2週間の間で、
心筋梗塞と脳梗塞の両者の発症リスクは有意に増加していました。

複雑になるので1解析パターンのみ示しますが、
コントロール群との比較で発症当日を含んだ場合、
急性心筋梗塞の発症リスクは6.61倍(95%CI:3.56から12.20)、
脳梗塞の発症リスクは6.74倍(95%CI:3.71から12.20)、
感染発症後2週間で有意に増加していました。

このように、
新型コロナウイルス感染症発症から4週間くらいの時期は、
心筋梗塞や脳梗塞の新規発症が明確に増加しており、
それが感染症自体の予後にも大きな影響を与えています。

従って、その治療には感染そのもののコントロールと共に、
併発する心筋梗塞や脳梗塞への対応も、
同時に行なってゆく必要があるのです。

この感染症の厄介さは、
こうしたところにもあるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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