SSブログ

「竜とそばかすの姫」(細田守監督新作) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。
ただ、昨日も夜の12時まで仕事でしたし、
今日も昨日のRT-PCR検査の結果を大量に連絡しないといけないし、
もう何かちょっとなあ、という感じではあります。

先週のゲノム解析の結果が帰って来ると、
全てデルタ株の感染でした。
まあ、そういうことなのね、という感じです。

皆さんも感染対策にはくれぐれもご注意下さい。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
竜とそばかすの姫.jpg
細田守監督の最新作が、
今鳴り物入りで公開されています。
ただ、映画館は僕の行った時はガラガラで、
数人しかお客さんはいませんでした。
これは前作の「未来のミライ」の時もそうでしたね。

細田監督の作品は、
「サマーウォーズ」と「おおかみこどもの雨と雪」は、
とても面白かったし感銘を受けました。
前作の「未来のミライ」は、
金持ちの子供の生活を延々と見せられるという、
どうしてこんなものを作ったのかしら、
と監督に問い質したくなるような、
巻頭数分で頭を抱えるような作品でした。

そんな訳で正直今回もあまり期待はしていませんでした。

予告編を見ると「サマーウォーズ」の焼き直しの感じで、
今更仮想世界もないよね、という気もしました。

でも、今回は個人的にはとても良かったですね。

鑑賞後の気分は「おおかみこどもの雨と雪」を観た時と、
結構似た感じの余韻がありました。

これね、相当頭を絞り、お金も掛けて、
丁寧に作られた映画ですよね。
基本ラインとして、ディズニー・ピクサーのアニメ映画のパターンというか、
感動のツボを意識して作られた映画ですね。
女性の自立みたいなものを核にして、
家族の喪失と再生とをファンタジーとして描く趣向とか、
「正義の味方の王子様」的キャラが、
実は悪党で、狂暴な悪党の方が善玉というのも、
最近の流行を意識しているのだと思います。

世界中が参加する仮想空間で、
日本語の歌が大ヒットというのも変な話なのですが、
これも英語圏での公開なら、
全部英語に吹き替えるつもりだと思うんですね。
基本的に世界中で理解される映画にしようという意図があって、
キャラクターも練られているのだと思うのですね。
日本人の感じる個性というか、
性格の傾向のようなものが、
あまり深堀されていないのも、
意図的なものだと思います。

ただ、その中で、
主人公の少女が死んだ母親の心を理解出来ないでいて、
自分自身が何かを犠牲にしようとした時に、
初めてそれを理解するという肝の部分を、
台詞なしで表現していますよね。
ここは作り手としては、
分からない人には分からなくてもいい、
というような微妙な表現を取っているんですね。
この点に今回の作品で僕は一番感銘を受けました。

妻を失い、しっかりと子供に向き合うことが出来ない、
対象的な2人の父親が出て来るでしょ。
実はこの2人は鏡の表裏のような関係なんですね。
現実の世界と仮想現実の世界との対比があって、
それと同時に仮想現実から結ばれた、
現実の2つの家族の対比があるんですね。

主人公が血を流すことによって、
2人の父親が共に救われるというのが、
この作品の最も奥にあるテーマで、
細田監督が相当の覚悟を持って、
この作品を作り上げたということが分かります。

DVを安易に取り上げて何の解決も示していない、
というような批判が多くあるんですね。
でも、それはちょっと違うと個人的には思います。
これはね、主人公のお父さんが堕ちたかも知れない、
ダークサイドを描いているんですよ。
それを主人公が救うという話なんです。
だから、あれであの家族は救われたんです。
それをリアルなDVの話として捉えると、
非現実的、ということになるのですが、
そうではないのだと思います。

色々と完成されていない部分のある映画だとは思うんですね。
監督が本当に作りたいものを作るという目標と、
世界で売れる映画にするという2つの目標を、
両立させようとしたところにほころびがあるのですね。
でも、この意欲は凄いと思いますし、
新しい映画を作ろうという執念のようなものを感じました。

いずれにしても、
細田監督にして初めて成し遂げられた、
これまでの全てのアニメ映画を乗り越えようとした、
全体映画的な発想の大作で、
ディテールには「おやおや」というところもあるのですが、
トータルにはとても感動的な力作だったと思います。

好き嫌いはありますが、
個人的にはとてもお勧めです。
映像も美しくて見応えがあります。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0)