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スマホアプリを用いた腰痛セルフマネージメントの効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
腰痛に対するウェアラブル端末医療.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年8月2日ウェブ掲載された、
スマートフォンなどを用いたセルフケアの、
腰痛に対する有効性を検証した論文です。

背中や腰の痛みは非常に一般的な症状で、
ぎっくり腰では動けなくなって、
日常生活にも大きな影響があります。

その中には確かに、椎間板ヘルニアなどの腰椎疾患や、
圧迫骨折や骨腫瘍など、
専門的な検査や治療が必要とされる病気もありますが、
多くは筋肉の疲労やストレスなど、
様々な一般的要因が集まったもので、
特定の病気という性質のものではありません。

その治療にも定まったものはなく、
リラクゼーションや運動、規則正しい生活など、
一般的な生活習慣の改善が、
有用であるという複数のデータが存在しています。

ただ、医療機関において、
そうした生活指導を継続して経過をみることは、
慌ただしい通常の外来診療においては非常に困難で、
結果として湿布や痛み止めで経過をみるだけ、
という状態になりがちです。

最近スマホなどの進歩により、
自分で自分の健康や状態を管理する、
セルフマネージメントの考え方が広まり、
スマホアプリとウェアラブル端末(腕時計など)を連携して、
健康管理や生活改善をサポートするシステムが、
複数開発され利用されています。

全ての病気にこうした方法が向くという訳ではありませんが、
原因不明の腰痛などは、
セルフマネジメントの効果が期待出来る分野であることは、
間違いがありません。

そこで今回の研究ではデンマークとノルウェーにおいて、
プライマリケアでの腰痛の患者さんを登録し、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は通常の指導をクリニックにて行うのみとし、
もう一方はそれに加えて、
ウェアラブル端末とスマホを用いた、
セルフマネージメントシステムを導入して、
3か月の経過観察を行なっています。

腰痛については、
RMDQ(もしくはRDQ)スコアという指標を用いて、
その日常生活への障害の程度を数値化しています。
その日本語版がこちらです。
腰痛スコア.jpg
この24の質問の「はい」の数を合計したものがスコアで、
それが高いほど腰痛の程度が重い、
というように判断されるのです。

セルフマネージメントの仕組みはこちら。
セルフマネージメントの仕組み.jpg
コンピューターに入力された問診などの情報から、
その人にとっての適切な生活改善プログラムが作成され、
それがスマホに表示されます。
その達成率はウェアラブル端末の情報なども利用して評価され、
フィードバックされると言う仕組みです。

次にこちらをご覧ください。
ウェアラブル1.jpg
1日の歩数や決められた運動量など表示されています。

それでは次はこちらを。
ウェアラブル2.jpg
期間ごとの達成率がこのように表示されています。

対象者は全体で461名で、
こうした運動などのセルフマネージメントプログラムを活用して、
3か月のトライアルを行なったところ、
通常指導のみの場合と比較して、
RMDQスコアは0.79点(95%CI:0.06から1.51)有意に改善していて、
少なくとも4点改善した比率は、
通常指導が39%であった一方、
プログラム使用群では52%でした。

このように、
それほど顕著とは言えないと思いますが、
セルフマネージメントプログラムは、
通常の診察室のみでの指導と比較して、
一定の有効性が確認されました。

勿論こうしたアプローチは、
全ての健康状態で同様に可能なものではありませんが、
今後分野によってはこうしたITの使用が、
健康管理の主流となることは間違いがなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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