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甲状腺機能と腎機能との関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
甲状腺と腎機能.jpg
the Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism誌に、
2021年6月1日ウェブ掲載された、
甲状腺機能と腎機能との関連についての論文です。

慢性腎障害では甲状腺機能低下の頻度が高く、
腎機能低下の程度が高いほど、
甲状腺機能低下の発症率も高い、
という事実が知られています。

また、甲状腺機能低下症は、
心血管疾患の多くとも関連が深く、
慢性腎臓病の進行のリスク因子で、
透析患者の生命予後とも関連が深い、
というデータがあります。

このように甲状腺機能低下と腎機能低下との間には、
密接な関連があることは間違いがないのですが、
そのメカニズムについてはあまり確かなことが分かっていません。

今回の研究は、
心血管疾患と腎機能などとの関連を検証した、
疫学研究のデータを活用して、
甲状腺機能と腎血流量との関連を比較検証しているものです。

年齢18歳以上でTSHが0.4から5.5mIU/Lと、
甲状腺機能が正常範囲の789名を解析したところ、
TSHと腎血流量との間には逆相関が認められました。
つまり、甲状腺機能が低下しているほど、
腎血流量も低下しているという関連が認められたのです。
この相関は食事の塩分が通常でも、
塩分制限食でも同様に認められました。
一方で遊離甲状腺ホルモン値や、
甲状腺ホルモンの組織での利用を反映する、
脱ヨウ素酵素の遺伝子多型は、
そうした関連を示していませんでした。

このように今回の検証では、
TSHと腎血流量との間には負の関連があり、
それは甲状腺ホルモン自体やその利用率とは、
直接的な関連は認められませんでした。

甲状腺機能と腎機能とに関連のあることは事実ですが、
そのメカニズムについては、
まだ検証が必要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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