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プッチーニ「ラ・ボエーム」(2023年新国立劇場上演版) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ラ・ボエーム.jpg
新国立劇場は今年は殆どキャストの変更もなく、
比較的安定感のある舞台が続いています。

今回は大野和士芸術監督が東京フィルを指揮した、
プッチーニの人気作「ラ・ボエーム」に足を運びました。

「ラ・ボエーム」はバルバラ・フリットリのミミを、
トリノ王立歌劇場の来日の時に2回、
それからメトロポリタン・オペラの震災の時の来日で1回聴いていて、
サントリーホールのホールオペラは、
直前でエヴァ・メイがドタキャンだったのですが、
3回の公演とも聴いているので、
それ以外に新国立の舞台も聴いていますし、
結構耳慣れたオペラの1つです。

プッチーニはまあ、古典オペラの最後に位置していて、
その後の映画とミュージカルの、
橋渡しをしたような存在ですよね。
ミュージカルの構成はその多くが、
プッチーニを参考にして成立していると思いますし、
映画音楽もプッチーニがベースになっている部分が大きいのです。

数あるオペラの旋律の中でも、
プッチーニが耳慣れた感じがするのは、
それが映画音楽とミュージカルの母体であるからに他なりません。

「ラ・ボエーム」は名作ですが、
実際の上演では軽く流れてしまう傾向があって、
その繊細なニュアンスは実際の舞台では再現されにくく、
完成度はあまり高くないのが通例です。

ただ、大野芸術監督は非常に緻密な音楽作りが特徴なので、
この通俗的人気作に、
どのようなアプローチをするのかに興味がありました。

聴いた感想としては、
さすが大野芸術監督というところは随所に見られる、
非常に計算された緻密な作品になっていました。
何気ない1つ1つの歌詞の意味がクリアでしたし、
感情がどのように音に乗って、
歌との相乗効果をもたらすのかも、
視覚的にも聴覚的にも体感出来る作品に仕上がっていました。

ただ、これもいつものことですが、
大野芸術監督はあまり歌手との相性は良くないですね。
自由に歌うようなベテランとは大抵合いませんし、
技術レベルが低い歌手でも妥協をしないので、
結果的にオケと歌手とが乖離してしまうような感じになることも多いのです。
今回は、中堅どころの歌手が主体で、
割と真面目な方が多かったようで、
比較的きっちりと芸術監督の指示を守って、
フォルムの整った歌に仕上げていたと思います。
ただ、欲を言えばソプラノもテノールも、
もっと高音には特別な輝きが欲しかった、
というようには思いました。

セットや演出はクラシカルで、
それほどの面白みはないものですが、
歌をしっかり聞かせるという、
基本に忠実な点は好印象でしたし、
プッチーニの作品は幕の始まりに、
まず情景描写の音楽が入るのですが、
2幕も3幕もその情景描写の後で一度セットに動きを与えていて、
これはなかなかクレヴァーな工夫だと思いました。

総じて、こじんまりした上演ではありましたが、
通常より音楽の緻密な計算が、
しっかりと感じ取れる優れた上演で、
大野芸術監督の資質が、
充分に活かされていたように思いました。
歌手はボチボチ。
ミミとムゼッタが似すぎているのは減点ポイントでした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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スタチンの肝臓病予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンと肝臓病予防.jpg
JAMA Network Open誌に、
2023年6月26日ウェブ掲載された、
スタチンの肝臓病予防効果についての論文です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
LDLコレステロールを強力に低下させる作用を持ち、
また抗炎症作用など付随する作用も併せ持って、
心血管疾患の再発予防薬としての有効性が確立している薬です。

その一方でその線維化を抑制するような作用や抗炎症作用などは、
肝臓病の進行予防にも有用なのではないかという見解があり、
実際に複数の疫学データにおいて、
慢性肝臓病や肝臓癌の予防効果が報告されています。

たとえば、以前ブログでも紹介した、
2023年1つのメタ解析の論文では、
スタチンの使用により肝臓癌のリスクが、
48%有意に低下していました。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2023-02-15

今回のデータは遺伝情報を含む有名な大規模健康データである、
UKバイオバンクやトライネティックスなどの複数の医療データを解析したもので、
トータルの解析人数は1785491名という大規模なものです。

そのうちUKバイオバンクの205057例の解析では、
スタチンの使用者は未使用者と比較して、
肝臓病の発症リスクが15%(95%CI:0.78から0.92)、
肝臓病による死亡リスクが28%(95%CI:0.59から0.88)、
肝臓癌の発症リスクが42%(95%CI:0.35から0.96)、
それぞれ有意に低下していました。

またトライネティックスの1568794例の解析では、
スタチン使用者は未使用者と比較して、
肝臓癌の発症リスクが74%(95%CI:0.22から0.31)、
有意に低下していました。

このスタチンの肝臓病に対する有効性は、
サブ解析では男性、糖尿病患者、
特定の肝臓病に関連する遺伝子変異保有者で、
より高いものとなっていました。

このように、今回の大規模な解析においても、
スタチンの肝臓病、特に肝臓癌の予防効果は、
ほぼ確実なものと考えられ、
今後のそのメカニズムの解析などを含め、
予防介入の適応や対象者の絞り込みなど、
より具体的な検証が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ビタミンDの心血管疾患予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ビタミンDの心血管疾患予防効果.jpg
British Medical Journal誌に2023年6月28日付で掲載された、
ビタミンDのサプリメントの、
心血管疾患予防効果についての論文です。

ビタミンDはビタミンという名前は付いていますが、
体内でも合成されるステロイドホルモンの一種で、
骨の健康な成長と維持に必須であると共に、
細胞の成長や分化を調節して、
細胞の健康についても必要な成分であると考えられています。

実際にビタミンD濃度が低値であると、
骨粗鬆症や骨折のリスクが高まると共に、
心血管疾患のリスクや癌のリスク、
総死亡のリスクが増加するとする報告があります。

その一方でビタミンDをサプリメントとして使用したような、
介入試験と呼ばれる臨床試験の多くでは、
ビタミンDによる病気のリスク低下や、
生命予後の改善効果は確認されていません。

今回の研究はオーストラリアにおいて、
60から84歳の21315名の一般住民を、
本人にも試験担当者にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は月に1回60000IUのビタミンDを使用し、
もう一方は偽薬を同じように内服して、
それを5年間継続して心血管疾患予防効果を検証しています。

これまでで最も厳密な方法による、
大規模な臨床研究です。

その結果、
ビタミンD補充群で心血管疾患のリスクが、
9%(95%CI:0.81から1.01)低下する傾向を示しましたが、
有意なものではありませんでした。

これはこれまでの同種のデータとも合致しているもので、
ビタミンDの補充により、
心血管疾患のリスクは低下する傾向は見られるものの、
統計的に明確な低下が認められる、
というほど確実性のあるものではないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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女性ホルモン補充療法と認知症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は訪問診療などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
女性ホルモン補充療法と認知症リスク.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年6月28日にウェブ掲載された、
女性ホルモン補充療法と認知症リスクについての論文です。

認知症には男性より女性に多いという性差があり、
これは男性より女性が長生きであることと無関係ではありませんが、
それだけでは説明出来ない現象であると考えられています。

女性ホルモンであるエストロゲンには、
神経細胞を保護するような働きがある一方で、
神経細胞に障害を与えるような作用を持つ、
という報告もあり、その影響は複雑です。

更年期症候群においては、
その自律神経症状などを緩和する目的で、
女性ホルモン製剤がホルモン補充療法として使用されます。

このホルモン補充療法には血栓症などのリスクが、
あることは知られていますが、
臨床研究のデータにおいて、
認知症リスクを高めることを示唆する結果が報告されて、
その真偽が問題となっています。
ただ、そのデータは65歳以上の女性を対象としたもので、
実際にホルモン補充療法が開始されることの多い、
閉経前後の使用においても、
そうしたリスクが存在するのかどうかは分かっていません。

そこで今回の研究では、
国民総背番号制を敷いているデンマークにおいて、
年齢が50から60歳の女性で認知症がなく、
血栓症などのホルモン補充療法の禁忌もない全ての事例から、
その後認知症を発症した5589名と、
年齢をマッチングさせた55890名のコントロールを抽出し、
ホルモン補充療法の認知症発症に与える影響を検証しています。

その結果、
ホルモン補充療法を使用しない場合と比較して、
エストロゲンとプロゲステロン併用による治療を施行することは、
トータルな認知症のリスクを、
1.24倍(95%CI:1.17から1.33)有意に増加させていました。
これをホルモン補充療法の継続期間で見ると、
治療期間が1年以内の場合には、
認知症リスクは1.21倍(95%CI:1.09から1.35)であったのに対して、
12年以上の使用では1.74倍(95%CI:1.45から2.10)と、
よりリスクの増加が認められました。

このように、
今回の大規模な検証においても、
女性ホルモン補充療法の施行と認知症リスクとの間には、
それほど著明とは言えないものの、
一定の関連が認められました。

今後この問題はより検証される必要がありますが、
特に高齢での女性ホルモン補充療法の施行においては、
認知機能のチェックなど、
より慎重な対応が必要となりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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中年期以降の血糖コントロールと認知症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
高齢者の血糖コントロールと認知症リスク.jpg
JAMA Neurology誌に、
2023年4月17日ウェブ掲載された、
2型糖尿病の血糖コントロールと認知症リスクについての論文です。

糖尿病は認知症のリスクの1つで、
血糖コントロールが不良であることが、
認知症のリスクを高めることも、
ほぼ実証されている事実です。

ただ、それでは2型糖尿病の患者さんが、
どのくらいの血糖コントロールを維持していると、
認知症のリスクが予防可能なのか、
というような具体的な事項については、
まだあまり明確なことが分かっていません。

3大合併症と呼ばれる糖尿病性網膜症、腎症、神経症の予防には、
血糖コントロールの指標であるHbA1cを、
7.5%未満にすることが有効であることや、
心血管疾患の予防のためには、
食後血糖を含めて、
極力血糖値を正常な状態に近付けることが有効であることは、
これまでの多くの精度の高い疫学データで、
ほぼ実証されている知見ですが、
認知症の予防はそれとはまた別個に考える必要があるからです。

今回の研究はアメリカの大手健康保険会社である、
カイザー・パーマネント社の医療データを活用して、
50歳以上の2型糖尿病の患者さん、
トータル253211名の血糖コントロールの状態と、
その後の認知症の発症との関連を検証しています。
観察期間の平均は5.9年で最低でも3年以上の観察期間に、
複数回のHbA1cが測定されています。

その結果、
HbA1cの測定値の半分以上が、
9%以上10%未満であると、
半数未満である場合と比較して、
認知症を発症するリスクが1.31倍(95%CI:1.15から1.51)、
同様に10%以上であると、
認知症を発症するリスクが1.74倍(95%CI:1.62から1.86)、
それぞれ有意に増加していました。
その一方でHbA1cが8%未満においては、
認知症リスクの明確な増加は認められませんでした。

今回の検証からは、
糖尿病コントロールが明確に認知症発症リスクとなるのは、
HbA1cが9%以上の高値が持続した場合で、
特に高齢者の血糖管理においては、
HbA1cを8%未満にするという現行の指標に、
一定の妥当性があることを示唆する結果となっていました。

血糖コントロールの目標は、
一律に決定する性質のものではなく、
患者さん個々の状態や年齢、
何を目的として治療をするのかなどを総合的に検討した上で、
個別に決定する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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加齢によるタウリン欠乏の健康影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
タウリンの健康効果.jpg
Science誌に2023年6月9日付で掲載された、
タウリンの健康効果についての論文です。

最近のサプリメント関連の論文としては、
最も注目を集めている論文です。

タウリンは日本では栄養ドリンクに含まれている成分として、
一時的非常に宣伝されていました。
疲れを取る成分であるとか、
二日酔いに効く、肝臓を保護する、
というような言い方もされています。

ただ、それは一般的な指摘であって、
それほど医学的な根拠のあるものではありませんでした。

タウリンはアミノ酸のシステインが、
酵素により分解されて産生される物質で、
アミノ酸様物質のような表現もされています。
タウリンは体内でシステインから合成される一方で、
魚介類や肉などに含まれていて、
食事でも摂取されています。
イカ、タコ、鯵などの魚介、
牡蠣、アサリなどの貝類が、
タウリンを多く含む食品です。

タウリンの血液濃度が加齢と共に低下し、
それが骨格筋、目、中枢神経系などの機能異常と、
関連していることを示唆するデータは報告されていましたが、
実際にタウリンの補充により、
そうした障害が予防可能であるか、
というような点については、
これまであまり明確な知見が存在していませんでした。

今回の研究では、
主にネズミとサルを使用した動物実験において、
タウリンを比較的大量に摂取させることを継続し、
その影響を検証しています。

その結果、ネズミの実験においては、
タウリンの摂取により寿命が延長し、
骨密度の増加や筋力の増加など、
老化に伴う変化を逆転させる、
アンチエイジングの効果が確認されました。
このメカニズムは老化に伴う細胞のミトコンドリア機能不全を、
改善している可能性も示唆されました。

サルの実験においては、
寿命の延長が確認されるほどの、
長期のデータは得られていませんが、
それでも老化に関わるマーカーの低下や、
骨密度の増加、体脂肪の減少などの効果が認められました。

このように、
特にネズミの実験で得られた効果はかなり画期的なもので、
大量とは言えサプリメントでも使用されている、
人体に有害性は確認されていない物質の摂取により、
明確な寿命延長効果やアンチエイジング効果が認められています。

ただ、勿論これは動物実験で、
人間に同様の効果が確認されたものではありません。

しかし、かなり期待を持たせる結果であることは間違いがなく、
これまでにも迷走した「奇跡のサプリメント」は多くありましたから、
あまり期待を過度に膨らませることなく、
今後の研究の蓄積を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「M3GAN ミーガン」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ミーガン.jpg
最近少し話題になったAI搭載の人形を扱った、
ホラー映画を観て来ました。

これはジェイソン・ブラムとジェイムズ・ワンという、
今のホラーでは欠かせない職人肌の2人が、
タッグを組んで製作したもので、
そのため突出した魅力や作家性のある作品ではありませんが、
まずは安心して観ることの出来る娯楽作に仕上がっています。

人形が人間に襲い掛かる「人形ホラー」というのは、
昔からのホラーの定番の1つで、
それこそホフマンの砂男などまで遡り、
かつては人形に恋をする、
というようなお話が主体でしたが、
「チャイルドプレイ」以降は、
子供のおもちゃの人形が怪物化するという、
「ペットホラー」の要素を取り入れる作風が主体となりました。

この作品も基本的にはその流れの1つですが、
家族を亡くした少女の友達として、
AI搭載の少女タイプの人形が、
自我を持って周囲の大人に襲い掛かり、
最後は持ち主の少女にも反逆する、
というお話です。

メーカーのAI研究者である少女の叔母さんが、
引き取った少女のケアを、
完璧にこなせるAI人形を開発するのですが、
少女はその人形に依存して、
人間との関わりを次第に持たなくなってしまいます。
子育てをAIに任せることが、
本当に正しいことなのか、という辺りの、
今後実際にも議論となるであろう問題点を、
比較的丁寧にじっくりと描いているのが、
この作品の良心的なところで、
それが作品の展開にも説得力を持たせています。

これが作家性の強い作品であれば、
特に後半のAIの暴走がなくても、
心理的ホラーとして成立しそうな気がしますが、
これは基本的に量産型の娯楽ホラーなので、
後半はお決まりの展開となり、
ちょっとリングや呪怨を思わせるところもあり、
エイリアン2やチャイルドプレイ辺りをトリビュートした趣向もあって、
クライマックスは怪物化したAIとの対決が繰り広げられます。

そんな訳でホラーとしては安全運転の娯楽作で、
それほど突出した作品ではないのですが、
安定した職人芸を楽しむことが出来ました。
ホラー好きにはそこそこのお勧めです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
インディ・ジョーンズ.jpg
インディ・ジョーンズシリーズの新作が、
今ロードショー公開されています。

このシリーズは1作目から3作目までは、
封切り時に映画館で観ています。
個人的には1作目が最も面白く、
最初の掴みの長編を10分に圧縮したようなアクションシーンと、
当時最先端のSFXを駆使したクライマックスにもワクワクしました。
ただ、公開の時の盛り上がりで言うと、
2作目の方が明らかに上回っていて、
僕の周りでも2作目で初めてシリーズを観て、
良かったので1作目のビデオを見た、
というような人が多くいました。
ただ、個人的には「邪教との対決」というのはチープな感じで、
1作目のような超自然的クライマックスもないので、
1作目より乗れませんでした。
そして、3作目は再びナチとの対決と宝探しになり、
この作品も主人公の父親役でショーン・コネリーが登場するなど、
話題性もあり世評も高かったのですが、
正直これは明らかな1作目の焼き直しで、
しかもラストの宝探しがかなりチープだったので、
観ていてガッカリしたことを覚えています。
それで4作目の公開時には、
当時それほど映画を観ていなかったこともあり、
封切りには足を運びませんでした。

今回の作品は1969年が舞台となっていて、
老境にあるインディが、
友人の娘の依頼から旧ナチの科学者と対決し、
アルキメデスが考案したという「運命のダイヤル」を巡る、
宝探しと闘争の冒険物語に乗り出す、
といういつも通りのお話です。

前半には1930年代の若き日のインディの冒険が、
本筋の前日譚として登場し、
そこでは過去の映像と全く見分けの付かない、
AIで再現されたインディが登場します。
良く日本のテレビでもある、
映像を加工して皺を消したような気味の悪い画像とは全く別物の、
そのリアルな姿には度肝を抜かれますし、
ここまで可能なら、もう生身の役者なんて、
単なる素材としての意味しかないのかしら、
という気分にもさせられます。
ただ、良い意味で言えば、
今後はたとえばある人物の100年の生涯を、
1人の役者で問題なくリアルに表現することが可能ですし、
特殊メイクの老人のような不自然さも、
今後はなくなることになるのですから、
映像での物語の自由度は、
相当高いものになることは確かです。
この作品では3つの時代のインディが、
リアルに登場し演技しているのです。

内容はラストを除けば、
ほぼほぼ1作目の焼き直しです。
このシリーズのそれが限界なのかなあ、
という気もしますが、
スターウォーズも結局は1作目の焼き直しが続くだけ、
という言い方も出来ますから、
こうしたシリーズの宿命なのかも知れません。
ラストは「運命のダイヤル」というものの性質上、
そうでしょうね…というような展開になるのですが、
これをやるなら、インディである必要性があるのかしら、
というような思いは抜けませんでした。

そんな訳で今一つではあったのですが、
インディシリーズのお好きな方であれば、
ファンをくすぐる趣向もあり、
何よりシリーズと一緒に年を重ねた世代にとっては、
鎮魂の思いも感じられる1作にはなっていたと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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