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新型コロナワクチン接種後の急性心筋炎(18歳以上のアメリカ疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は月曜日ですが、
クリニックは臨時の休診となります。

受診予定の方はご注意下さい。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ワクチン接種後の心筋炎の頻度.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年10月4日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスワクチン接種後の、
急性心筋炎の発症についてのレターです。

新型コロナウイルス感染症予防のための、
ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社の、
2種類のmRNAワクチンが、
その有効性において高い効果を上げていることは間違いがありません。

その安全性についても、
概ね満足のゆくデータが得られています。

ただ、幾つか気になる報告もあり、
その中で一番注目されているものの1つが、
ワクチン接種後の急性心筋炎の発症リスクの増加です。

これは報告の事例の多くが、
10代の男性であることに特徴があり、
その年齢層での疫学データにおいては、
他の年齢層よりも明確に高い発症率を示しています。

ただ、成人での発症事例も報告はあり、
その頻度についてはまだ議論のあるところです。

今回の検証はアメリカの大手健康保険会社である、
カイザー・パーマネント社の医療データを活用して、
1回以上ファイザー・ビオンテック社もしくはモデルナ社の、
mRNAワクチンを接種した、
年齢18歳以上のトータル2392924名のデータを解析した大規模なものです。

その結果、
トータルで15名の急性心筋炎の事例がワクチン後に報告されていて、
そのうちの13例は2回接種後の発症でした。
その発症率は1回接種後では、
100万接種当たり0.8件で、
2回接種後では100万接種当たり5.8件でした。
これは接種後10日以内の発症事例で、
その全ては男性、年齢の中間値は25歳です。
発症者に重症の事例はありませんでした。
これをワクチン未接種者の発症率と比較すると、
初回接種後ではリスクの上昇は認められませんでしたが、
2回目接種後では2.7倍(95%CI:1.4 から4.8)の増加が認められました。

このように、
18歳以上でも急性心筋炎の事例は認められるのですが、
その多くは矢張り20代くらいまでの若年成人で、
男性にほぼ限定されています。

そのトータルな発症率は低く、
ワクチン接種の有効性を上回るものではありませんが、
特に2回目接種後5日以内くらいの胸部痛については、
その可能性を疑って慎重に診察する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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