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血小板増多とがん発症リスクとの関連(カナダの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
血小板とがん.jpg
JAMA Network Open誌に、
2021年8月12日ウェブ掲載された、
血小板増多とがんとの関連についての論文です。

複数の癌において血小板の増多が見られるというのは、
19世紀半ばに既に報告があるほど古い知見です。
癌は多くの場合炎症と関連があり、
炎症は血小板の増多と関連しますから、
これはそれほど意外ということではありません。
癌の増殖はまた凝固を亢進させますから、
これも血小板増多の原因となります。

もしこの血小板の増多が、
癌が診断されるより早期から認められる所見であるとすると、
血小板増多が隠れている癌を発見する、
手掛かりになるという可能性があります。

今回の研究は、
カナダ、オンタリオ州の住民3386716名のデータを解析することにより、
血小板増多とその後の癌リスクとの関連を比較検証しているものです。
そのうち51624名が血小板数45万以上の血小板増多を示していました。
これを血小板数が基準値内の対象者とマッチングさせて、
その後の癌の発症と比較したところ、
血小板増多が確認されてから2年以内の固形癌の発症リスクは、
血小板増多がない場合と比較して、
2.67倍(95%CI:2.56から2.79)有意に増加していました。
癌の種類毎の解析では、
卵巣癌リスクが7.11倍(95%CI:5.59から9.03)、
胃癌が5.53倍(95%CI:4.12から7.41)、
大腸癌が5.41倍(95%CI:4.80から6.10)、
肺癌が4.41倍(95%CI:4.02から4.85)、
腎臓癌が3.64倍(95%CI:2.94から4.51)、
食道癌が3.64倍(95%CI:2.46から5.40)、
それぞれ有意に増加していました。

このように、
原因不明の血小板増多は、
その後2年以内の癌リスクと強い関連があり、
特に卵巣癌や消化管の癌などの癌の可能性について、
検査を検討する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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