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急性心筋梗塞と生命予後との関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前中は石田医師が外来を担当し、
午後は臨時で休診の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
心筋梗塞と生命予後のとの関連.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年10月25日ウェブ掲載された、
非致死性心筋梗塞の生命予後に与える影響についての論文です。

急性心筋梗塞というのは、
心臓を栄養する冠動脈という血管の血流が遮断されることにより、
その栄養する心臓の筋肉がダメージを受け、
そのままであれば壊死してしまう状態のことで、
かつては死に直結する心臓の病気の代表でした。

その多くは動脈硬化により、
冠動脈にプラークという不安定な動脈硬化巣が生じ、
それが破れて血栓が血管を塞ぐことにより、
発症すると説明されています。

心筋梗塞は20世紀以降、
急速にその治療が進歩した病気です。

その予防としては、
生活改善やコレステロールの積極的降下療法、
再発予防としては、
抗血小板剤の使用などがその有効性を確認され、
急性期治療としては、
カテーテルによる再灌流治療が積極的に行われ、
ステントによる拡張や血栓除去療法も、
長足の進歩を遂げています。

この非致死性心筋梗塞の発症は、
多くの動脈硬化性疾患などの予防や治療の臨床試験において、
総死亡のリスクや心血管疾患の死亡リスクの代用指標として、
活用されています。

これは心筋梗塞の発症は、
動脈硬化進行の1つの表れであって、
それは死亡リスクの増加と結びついているので、
心筋梗塞を予防するような治療は、
その患者の死亡リスクの低下にも結び付く筈だ、
という考え方に基づいています。

しかし、実際にはその関連性が、
明確に実証されているという訳ではありません。

今回の研究では、
これまでの144の精度の高い臨床試験に含まれている、
トータルで1211897名の患者データをまとめて解析することにより、
非致死性心筋梗塞の発症リスクと、
総死亡及び心血管疾患による死亡リスクとの関連を検証しています。

その結果、
その研究の実施時期や方法により、
かなりばらつきはありますが、
時期を分けた解析を含めて全ての解析において、
非致死性心筋梗塞の発症と、
総死亡及び心血管疾患による死亡のリスクとの間には、
明確な関連は認められませんでした。

つまり、
非致死性心筋梗塞を予防しても、
それはその患者の生命予後に、
必ずしも影響を与えるとは言えない、
という結果です。

この結果の解釈はなかなか難しいのですが、
治療の進歩により、
心筋梗塞は生命予後に直接的影響を与えるような、
そうした病気ではなくなったのでは、
という考え方も出来ますし、
そもそも心筋梗塞はその全てが動脈硬化により発症する訳ではなく、
動脈硬化の進行の典型として、
取り上げることに誤りがあるのではないか、
という考え方も可能です。

いずれにしても今後の臨床試験のデザインにおいて、
非致死性心筋梗塞の位置づけは、
考え直される必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。       
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