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屋内大規模ライブイベントにおける感染対策の効果(フランスの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コンサートの感染対策の有効性.jpg
the Lancet Infectious Diseases誌に、
2021年11月26日ウェブ掲載された、
室内の大規模イベント会場における、
感染対策の有効性について検証した論文です。

新型コロナウイルス感染症の流行期には、
コンサートなどの大規模イベントが軒並み中止されました。

これは特に流行初期において、
ナイトクラブやコンサート、コーラス会場など、
密閉した会場で群衆が大声を出すような場所で、
集団感染が発生したことがそのきっかけになっています。

その後感染が収束傾向になると、
会場の換気や参加者のマスク着用、
事前の抗原検査やワクチン接種などが、
感染対策として施行されつつ、
イベントは再開されるようになりました。

それでは、
現在施行されている感染対策によって、
どの程度感染予防は可能なのでしょうか?

今回の検証はフランスにおいて、
屋内大規模イベントの参加者と非参加者とで、
一定期間の感染リスクを比較検証しているものです。

2021年5月29日にパリのベルシー・アリーナという、
日本の東京ドームのような(ウィキペディアにある表現です)、
大規模屋内施設でフランスのロックバンドのコンサートが開催されました。
会場は充分な換気が施行され、
来場者はマスク着用と3日以内の抗原検査で陰性であることが求められました。

そこでくじ引きで決められた参加者4451名と、
非参加者2227名を登録して、
コンサート後1週間の時点で唾液のRT-PCR検査を施行。
その陽性率を比較しているものです。
両群ともワクチン接種者は半数程度で、
2回接種済みは7%程度でした。

その結果、
コンサートの参加者3917名(最終解析人数)中、
0.20%に当たる8名と、
非参加者1947名中0.15%に当たる3名が、
1週間後のRT-PCR検査で陽性と判定されました。
この両群には有意な差はなく、
一定の感染対策をしていれば、
コンサートに参加しても感染リスクは増加しない、
という結果が得られました。

この結果は現状の感染対策に、
一定の科学的根拠を与えるものですが、
比較的感染が落ち着いていた時期で、
感染者も少なかったことから限界のある結果です。
これが感染力の強い変異株の、
流行拡大期であれば、
また違った結果になった可能性は充分にあるからです。

いずれにしても、
今後もこうした検証を重ねることにより、
科学的裏付けのある、
必要かつ十分な感染対策が、
施行されることに期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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