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新型コロナウイルス感染症に有効な予防薬はあるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの予防薬.jpg
British Medical Journal誌に2021年4月26日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の予防薬についてのメタ解析の論文です。

新型コロナウイルス感染症の治療は、
現状有用性が明確なのは、
重症の事例におけるステロイド治療のみで、
抗ウイルス剤のレムデシビルが、
こちらも重症の事例のみで若干の有効性が期待される、
という程度です。

つまり、軽症から中等症の事例で、
明確な効果のある薬剤は確認されていません。

また、現状の日本のように、
市中感染が拡大しているような状況では、
濃厚接触者や、
濃厚接触とまではいかなくても、
感染のリスクが高い対象者に、
予防的に使用するような薬が、
感染防御と社会活動を両立させるためには、
非常に必要性が高いのですが、
ワクチン以外の予防薬も、
現状では明確に有効性の確認されたものはありません。

今回の研究は、
これまでの精度の高い介入研究のみをまとめて解析した、
システマティックレビューとネットワークメタ解析で、
最新の手法を用いて、
新型コロナウイルス感染症の予防薬の候補を、
比較検証しているものです。

その結果、
9つの介入試験がネットワークメタ解析の対象となり、
そのうちの6つの試験はヒドロキシクロロキンを対象としたもので、
1つはイベルメクチンとカラギーナン点鼻の併用、
2つはイベルメクチン単独の予防効果を検証したものでした。

ヒドロキシクロロキンはマラリア治療薬ですが、
新型コロナウイルスに対する抗ウイルス作用があるとされ、
治療と予防の双方で臨床試験が行われています。
イベルメクチンはマクロライド系抗菌薬の一種で、
寄生虫症の治療薬として使用されている薬剤ですが、
基礎実験において多くの抗ウイルス作用を持つことから、
こちらも予防薬として期待されているものです。
カラギーナンというのはゲル状の多糖類で、
食品添加物ですが、
そのウイルス吸着作用を期待して、
スプレーとして鼻の粘膜に噴霧して、
感染を予防するという期待から、
イベルメクチンと併用された介入試験が存在しています。

解析の結果、
ヒドロキシクロロキンの使用は、
明確に新型コロナウイルス感染症を予防したり、
入院や死亡のリスクを減少させるような効果は、
確認されませんでした。
(あるとしても僅かな有効性か、もしくはないか、という表現です)
その有効性はほぼないと判断される一方で、
消化器症状などの有害事象で治療が継続されないケースは、
その有用性を明らかに上回っていました。
イベルメクチンについては比較的小規模のデータしかなく、
その範囲では明確な効果は確認されませんでした。

最近吸入ステロイドで軽症事例の予後が改善された、
という報告はあり、
そちらは少し期待したい部分はありますが、
その有効性と有害事象とのバランスから考えて、
ヒドロキシクロロキンとイベルメクチンの現状での予防効果は、
精度の高い臨床試験においては確認されていない、
というように理解して大きな問題はなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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